この記事はわりとコンピュータ専門家向きです。ただし、IT企業経営者やコンサルタントの方であれば、わかりにくい点があっても読んで頂くとよろしいかもしれません。
この記事の著者はネットワークの専門家ではありません。開発者・経営者・システム運用者としての観点から述べているものであり、ネットワークの専門的内容には誤りが含まれている可能性があることをご了承ください。
さて先述の記事のようにIPv6がダメというだけでは意味がありません。では、IPv4枯渇対策としてどのような方法が考えられるのかを列挙してみましょう。
* IPv4ヘッダのオプション導入 (難易度: いまさら遅い)
前の記事にも書きましたが、アドレス枯渇対策としては、IPv6のような互換性のないプロトコルではなく、IPv4ヘッダのオプションとして拡張アドレスを導入するという方法でアドレス空間を拡張する手法をとるべきでした。
IPv4ヘッダのオプションであれば、途中経由するルータが未対応であっても、そのまま通してもらうことができます。発信元と発信先の最終目的地部分だけが拡張アドレスに対応していれば良いのです。
10.1.1.1.256のように記述されたアドレスの場合、10.1.1.1までは通常のIPv4アドレスと同じように送信され、10.1.1.1のルータが256番のコンピュータへ送信を行います。この場合、末端のコンピュータが本形式に非対応であればアドレス変換を行ってもいいでしょうし、そうでなければそのままの形式で送ることができます。
この方法であれば上位互換性がありますので、OS、ブラウザやルータが新しいものに置き換わっていけば自然と対応が広がっていきます。ネットワークも末端部分だけを置き換えれば良いので、非常に容易に対応ができます。
P2P通信を使うようなSkypeなどのソフトウェアから徐々に有用性が認知されて広がっていったことでしょう。
いまさら普及が間に合わないので、枯渇対策としては時既に遅しですが、この方法であれば上位互換性を持ったままアドレス空間を十分に広げることができたので非常に残念です。
* プロバイダでのユーザ向けNATの導入 (難易度: 低)
ユーザの接続に関しては、NAT(ネットワークアドレス変換)を利用することで、TCPやUDPのポート番号を使ってアドレス空間を拡張することができます。
大規模NATではポート番号が足りなくなるという説がありますが、宛先アドレスごとに65536個のポートがあることを考えると、実際にはすぐに足りなくなることは考えにくいでしょう。
ただし、大規模NATを行うためのルータへの投資額はそれなりに大きなものになりそうです。
外から内への通信に関しては、NATを超えた通信を行う仕様の標準化さえ行われれば問題ないでしょう。またサーバ側に多少負荷はかかりますが、サーバを経由して通信することには何ら問題はありません。
この方法は、実際に行われていくだろうと考えられます。
* サーバへのNATの導入 (難易度: 低)
では、サーバにはNATが導入できないのでしょうか?
サーバへのNATの導入には、いくつかの問題があります。例えば、メール送信に使うSMTPはポート番号が固定されていますので、現状ではNATを利用することはできません。
ウェブ閲覧に使うHTTPであれば、ポート番号を自由に変更することができますが、URLが「http://example.com:4000」のようにダサい感じになってしまいます。これは顧客を直接相手にするサイトにとってはユーザの安心感や信頼度を下げてしまう大問題です。そのため、使われるとしてもアドレスバーに表示されないサーバ(画像やコンテンツの配信サーバ等)への適用になるでしょう。
他のプロトコルに関しても、多少ダサくなったり、多少設定が面倒だったりする以外は、何とかなるのではないかと思います。またトラフィックの大多数を占めているHTTP/HTTPSが何とかなるだけで、大きく状況はマシになると考えられます。
サーバネットワークにNATを導入している事例はまだ少ないと考えられるので、対応したネットワークスイッチが存在しないか、存在しても高価で設定が難しいかもしれません(調べてないけど)。ヤマハなどのルータには本方式を実現できる機能がありますが、速度的にはスイッチよりもだいぶ劣ると思われます。そのため現時点では実現可能性に難があります。
* サーバNATのためのSRVレコードへの対応 (難易度: 中)
サーバNATは、サーバ側におけるIPアドレス節約の王道ですが、先に述べたようにURLがダサくなってしまうことが難点です。これではメインのウェブサーバをNAT内に置くことができません。
ブラウザがhttp://example.comのような通常のアドレスを見たときに、ポート番号まで合わせてDNSで取得するように実装を変更されれば、サーバNATも普通に利用できるようになります。
このためにはブラウザがHTTPでアクセスするときにもDNSのSRVレコードに対応するようになればOKですが、これにはだいぶ時間がかかりそうです。
またHTTP以外の他のプロトコルに関してもNAT対応の標準化を急ぐべきでしょう。全てのプロトコルのNAT対応が完了すれば、実質的にIPアドレスは数万倍となり、当面は枯渇問題をしのぐことができます。
* SNI(Server Name Indication)の導入 (難易度: 低)
HTTPでは、サーバ側が一つのIPアドレスであっても複数のURLを割り当てることにより複数のサーバがあるかのように振る舞うことができます。これをVirtual Hostと言います。
これを利用することによりサーバやIPアドレスを集約して、アドレスを節約することできます。しかし、それには障壁がありVirtual HostではHTTPSが使えないのです。HTTPSでは、一つのサーバ名ごとに必ず一つのIPアドレスが必要となっていました。
それを解決するのがServer Name Indicationです。SNIが実装されると、HTTPSでもVirtual Hostを利用することができます。それによってIPアドレスが多少節約できる場合があると考えられます。但し、あくまでVirtual Hostにしか有効ではないので、アドレス枯渇の救世主とはならないように思われます。
SNIは実装が進められていますが、Windows XPのInternet Explorerには実装されない見通しなのが残念です。
* IPアドレス保有を有料にする (難易度: 高)
IPv4アドレスの枯渇には政治的な側面もあります。
IPv4アドレスの分配は市場メカニズムではなく、管理団体により恣意的に行われています。
たとえば、昔にIPv4アドレスを取得した団体ほど審査は緩く、容易に(ムダに)多数のアドレスを取得することができました。そのためアメリカには膨大な数(数千万)のIPアドレスを保有する組織がいくつもあります。
また自分でIPアドレスを保有申請できるプロバイダは容易にIPアドレスを取得出来るのにたいして、プロバイダを介して保有申請しなければいけないエンドユーザは、たった32~256個程度のIPアドレスを取得するにも毎月多額の接続料を支払わなければなりません。
アドレス枯渇のトレンドが明確になってからも、IPアドレス自体に課金することは行われていません。そのためIPアドレス取得が容易な組織にとってはIPアドレスを節約するインセンティブはありませんでした。
それどころか、IPアドレスを多量に消費すれば、もっとIPアドレスを所有する申請ができるのですから、IPアドレスを浪費するインセンティブがあることになります。
このような間違ったインセンティブと不公平な分配がIPアドレス枯渇を加速させた一因となっていることは間違いありません。
枯渇が心配された早期の段階でIPアドレス取得を有料にするべきでしたし、今からでも遅くはないのでIPアドレス保有を有料にするべきでしょう。しかしながら、それは政治的に難しいのかもしれません。
* まとめ
以上のように、IPアドレス枯渇対策には色々な手があります。もう枯渇が差し迫った今となっては、姑息的な打ち手しかないのが残念です。
またIPアドレスが米国において実際に逼迫するまでは、これらの実装は進まないと考えられるので、そうなると米国よりも先にIPアドレスが枯渇する諸国にとっては苦難の時期となることも考えられます。
日本としてはこうした手段がスムースに実装されるように努力しなければなりませんね。
2011年3月29日火曜日
2011年3月26日土曜日
レッツノート CF-J10で大失敗
私はレッツノートの熱烈な愛好者でした。これまでにCF-Rシリーズを3台買って使ってきました。
しかし今回新しくCF-J10を買って大失敗しました。
これは全く使い物にならないので、ヤフオクで売るかなんとかしようと思います。ビジネスでお金が一番大事な時期に痛い失敗をしてしまいました。実機を見ずに買ったのが失敗でした。
使い物にならない理由は縦幅が短いことです。これまでのCF-Rシリーズに比べて、パームレストの縦幅が1.5cm短くなっているために、キーボード下段のキーがまともに打てない状態になっているのです。指を異常にまげないと打てないのでは、使っていたら健康を悪くしてしまいますし、生産性も非常に下がるでしょう。それでは全く使い物になりません。
また画面の縦幅も3cmも短くなっており、コーディングをするには文字が小さすぎて不便です。見た感じもいかにもサブノートという感じで、仕事で使えるマシンという感じではありません。
他にも筐体がすべてプラスチックで異常に安っぽくなっており、とても30万円の商品とは思えません。これではDELLやHPの6万円のノートと同じレベルです。本当にがっかりしました。外で使うのが恥ずかしいレベルです。
問題は、1kgを切る重さのノートPCは他に選択肢がほとんどないことです。私は、常にPCを持ち歩くライフスタイルが当たり前だと思っているのですが、軽いノートPCの選択肢がないようでは、PCの市場はどんどんスマートフォンやタブレットに奪われてしまうのではないでしょうか?
私は、PCというものが人間の知性や創作性を引き出す素晴らしい道具だと思っています。PCを本当に活用するためには、つねに持ち歩いていなければ意味がありません。そのためには、もっと1kg以下のノートPCが登場すべきです。
スマートフォンや携帯電話のように知的創作活動ができない製品ばかりが世の中にあふれるのは良いことでしょうか?
追記: もしこれまでRシリーズを使っていた人が、つぎもレッツノートを買うとしたらJではなくNを買うほうが良さそうです。店頭でみたところ、これまでのレッツノートの遺伝子をJよりも濃く受け継いでいるようです。Jの安物っぽさとは無縁でした。Rに比べて300gも重くなってしまうのが難点ですが。
しかし今回新しくCF-J10を買って大失敗しました。
これは全く使い物にならないので、ヤフオクで売るかなんとかしようと思います。ビジネスでお金が一番大事な時期に痛い失敗をしてしまいました。実機を見ずに買ったのが失敗でした。
使い物にならない理由は縦幅が短いことです。これまでのCF-Rシリーズに比べて、パームレストの縦幅が1.5cm短くなっているために、キーボード下段のキーがまともに打てない状態になっているのです。指を異常にまげないと打てないのでは、使っていたら健康を悪くしてしまいますし、生産性も非常に下がるでしょう。それでは全く使い物になりません。
また画面の縦幅も3cmも短くなっており、コーディングをするには文字が小さすぎて不便です。見た感じもいかにもサブノートという感じで、仕事で使えるマシンという感じではありません。
他にも筐体がすべてプラスチックで異常に安っぽくなっており、とても30万円の商品とは思えません。これではDELLやHPの6万円のノートと同じレベルです。本当にがっかりしました。外で使うのが恥ずかしいレベルです。
問題は、1kgを切る重さのノートPCは他に選択肢がほとんどないことです。私は、常にPCを持ち歩くライフスタイルが当たり前だと思っているのですが、軽いノートPCの選択肢がないようでは、PCの市場はどんどんスマートフォンやタブレットに奪われてしまうのではないでしょうか?
私は、PCというものが人間の知性や創作性を引き出す素晴らしい道具だと思っています。PCを本当に活用するためには、つねに持ち歩いていなければ意味がありません。そのためには、もっと1kg以下のノートPCが登場すべきです。
スマートフォンや携帯電話のように知的創作活動ができない製品ばかりが世の中にあふれるのは良いことでしょうか?
追記: もしこれまでRシリーズを使っていた人が、つぎもレッツノートを買うとしたらJではなくNを買うほうが良さそうです。店頭でみたところ、これまでのレッツノートの遺伝子をJよりも濃く受け継いでいるようです。Jの安物っぽさとは無縁でした。Rに比べて300gも重くなってしまうのが難点ですが。
2011年2月28日月曜日
Yahoo! Japanの検索エンジンがなぜGoogleになったか
先日、Yahoo! Japanの検索エンジンがGoogleに切り替えられました。このことは「検索エンジンがGoogleの独占になる」などといった話題にはなりましたので、ご記憶の方も多いかと思います。[1]
そもそも、なぜYahoo!は検索エンジンを切り替えようと考えたのでしょうか?
元々Yahoo!もGoogleと似たような検索エンジンを自社で作成して運用していましたし、わざわざ自社製品を捨ててライバルの検索エンジンを採用する必要性があったのでしょうか。そこまでせねばいけない動機は何だったのでしょうか。
弊社の運用しているあるショッピングサイトのデータを見ていたところ、面白い事実が判明しました。
Yahoo!の検索エンジン切替の前後で、きわめて興味深いデータがでていたのです。
検索エンジンがGoogleに切り替えられたことで、弊社サイトへのYahoo!経由でのページビューは半分以上減少しました。しかし、それにもかかわらずYahoo!経由での購入者数と売上は変わっていないのです。
すなわちYahoo!経由でのコンバージョンが大幅に改善されたことになります。
これは、Googleの検索エンジンが、ユーザに、よりよい検索結果を提示しているということを意味します。本当に興味のある人にだけ弊社のサイトを案内していることになります。ムダな、興味のないサイトへのアクセスが半分に減ったのですから、ユーザに取ってみれば大きな改善を意味します。
Yahoo! Japanとしては検索エンジンを他社製に乗り換えてでも、結果を改善しなければ、ユーザに離れられてしまうと考えたのではないでしょうか。
なかなか分かりにくい検索エンジンの質の差ですが、サイトの運用者から見ると、このように明白に大差がついていることがわかるものですね。面白い結果だと思いましたので、皆さんにお伝えする次第です。それでは、また。
そもそも、なぜYahoo!は検索エンジンを切り替えようと考えたのでしょうか?
元々Yahoo!もGoogleと似たような検索エンジンを自社で作成して運用していましたし、わざわざ自社製品を捨ててライバルの検索エンジンを採用する必要性があったのでしょうか。そこまでせねばいけない動機は何だったのでしょうか。
弊社の運用しているあるショッピングサイトのデータを見ていたところ、面白い事実が判明しました。
Yahoo!の検索エンジン切替の前後で、きわめて興味深いデータがでていたのです。
検索エンジンがGoogleに切り替えられたことで、弊社サイトへのYahoo!経由でのページビューは半分以上減少しました。しかし、それにもかかわらずYahoo!経由での購入者数と売上は変わっていないのです。
すなわちYahoo!経由でのコンバージョンが大幅に改善されたことになります。
これは、Googleの検索エンジンが、ユーザに、よりよい検索結果を提示しているということを意味します。本当に興味のある人にだけ弊社のサイトを案内していることになります。ムダな、興味のないサイトへのアクセスが半分に減ったのですから、ユーザに取ってみれば大きな改善を意味します。
Yahoo! Japanとしては検索エンジンを他社製に乗り換えてでも、結果を改善しなければ、ユーザに離れられてしまうと考えたのではないでしょうか。
なかなか分かりにくい検索エンジンの質の差ですが、サイトの運用者から見ると、このように明白に大差がついていることがわかるものですね。面白い結果だと思いましたので、皆さんにお伝えする次第です。それでは、また。
参考文献:
- Yahoo! JAPAN、Googleの検索エンジンと検索連動型広告の採用を発表 - Internet Watch 2010/7/27
2011年2月27日日曜日
IPv6はなぜダメなのか
IPv4アドレス枯渇対策として喧伝されているものに、IPv6があります。
私はIPv6が普及して使われるようになる可能性はこの期に及んでもまだ半々くらいと考えています。なぜならIPv6というプロトコルへの移行はきわめて難しく非経済的だからです。
IPv6は既存のネットワークと全く互換性がなく、移行のためにはハードウェアを買い換えたりソフトウェアをアップデートするだけでは足りず、新たなネットワーク設定を作成して運用するという膨大なコストが必要になるからです。
IPv4アドレスが大いに不足したとしても、依然としてIPv6を導入するインセンティブは働きません。なぜならIPv6を導入しても、IPv6だけではIPv4サイトに接続することはできず、接続のためには必ず一つのIPv4アドレスを必要とするからです。もしIPv4アドレスが一つでも入手できるのであれば、IPv6を導入する意味はありません。[1]
ユーザがIPv4にとどまりつづけるならば、サーバ側もわざわざコストをかけてIPv6へ移行することはしないでしょう。先日はIPv6デーというイベントが開催され、Googleなどの大手サイトが当日だけIPv6で接続可能にするという実験が行われました。ことここに至っても、たった一日だけしかIPv6を有効に出来ないことからも、IPv6のニーズのなさとコストの高さを印象づけるイベントとなりました。
そのような状態では、IPv4アドレスが入手できないインターネット事業者が、苦肉の策でIPv6でビジネスをしたとしても、ユーザが集まらずビジネスはうまく行かないでしょう。
このような全く互換性のないプロトコルを推進するのではなく、IPv4のオプションの形で拡張アドレスを定義して、末端のルータによってアドレス変換を行うような形で実装するべきでした。そうすれば少ない非互換性でアドレス枯渇問題に対応することができたのに!
IPv6の極めて高い非互換性を考えると、単純に「非互換」と言っても、非互換性の程度には大きな幅があるのだな、と考えさせられます。
IPv6の普及が遅々として進まず、批判が上がっていることを無視しても、強引にIPv6を推進しようとしているインターネット団体の人々はIPv4枯渇の戦犯と言ってもいいでしょう。
なぜIETF等の聡明な人々が「全てのインターネットのネットワークがIPv6に置き換えられる」という非現実的な期待を抱いたのか、私には理解できません。インターネットの構成員にたいして命令を強制することのできる人は、世界のどこにもいないのですから。
参考文献:
私はIPv6が普及して使われるようになる可能性はこの期に及んでもまだ半々くらいと考えています。なぜならIPv6というプロトコルへの移行はきわめて難しく非経済的だからです。
IPv6は既存のネットワークと全く互換性がなく、移行のためにはハードウェアを買い換えたりソフトウェアをアップデートするだけでは足りず、新たなネットワーク設定を作成して運用するという膨大なコストが必要になるからです。
IPv4アドレスが大いに不足したとしても、依然としてIPv6を導入するインセンティブは働きません。なぜならIPv6を導入しても、IPv6だけではIPv4サイトに接続することはできず、接続のためには必ず一つのIPv4アドレスを必要とするからです。もしIPv4アドレスが一つでも入手できるのであれば、IPv6を導入する意味はありません。[1]
ユーザがIPv4にとどまりつづけるならば、サーバ側もわざわざコストをかけてIPv6へ移行することはしないでしょう。先日はIPv6デーというイベントが開催され、Googleなどの大手サイトが当日だけIPv6で接続可能にするという実験が行われました。ことここに至っても、たった一日だけしかIPv6を有効に出来ないことからも、IPv6のニーズのなさとコストの高さを印象づけるイベントとなりました。
そのような状態では、IPv4アドレスが入手できないインターネット事業者が、苦肉の策でIPv6でビジネスをしたとしても、ユーザが集まらずビジネスはうまく行かないでしょう。
このような全く互換性のないプロトコルを推進するのではなく、IPv4のオプションの形で拡張アドレスを定義して、末端のルータによってアドレス変換を行うような形で実装するべきでした。そうすれば少ない非互換性でアドレス枯渇問題に対応することができたのに!
IPv6の極めて高い非互換性を考えると、単純に「非互換」と言っても、非互換性の程度には大きな幅があるのだな、と考えさせられます。
IPv6の普及が遅々として進まず、批判が上がっていることを無視しても、強引にIPv6を推進しようとしているインターネット団体の人々はIPv4枯渇の戦犯と言ってもいいでしょう。
なぜIETF等の聡明な人々が「全てのインターネットのネットワークがIPv6に置き換えられる」という非現実的な期待を抱いたのか、私には理解できません。インターネットの構成員にたいして命令を強制することのできる人は、世界のどこにもいないのですから。
参考文献:
2011年2月6日日曜日
IPv4アドレス枯渇の経営への影響
ちまたではIPv4アドレスがついに枯渇すると話題になっています。本稿では、エンジニアではない事業家に向けてIPv4枯渇問題を説明します。
本稿の筆者もネットワークの専門家ではないので、間違った記述や偏見にもとづいた記述があるかもしれないことをお断りしておきます。ただしネットワークの専門家による記事は、末端の事業家やエンジニアには何の役にも立たないことが通例ですので、そうした記事とあわせてお読み頂ければと思います。
* IPv4枯渇問題とは何か
我々はインターネットを利用するときにIPアドレスという電話番号のような番号を利用しています。利用者はIPアドレスを一切意識しないで利用しているかもしれませんが、実際は、全ての機器にIPアドレスが割り振られています。
インターネットは、IPアドレスに完全に依存して作られており、IPアドレスが無ければ、通信は不可能です。
そのIPアドレスが現在足りなくなりつつあります。2011年中には新規割当の在庫は底をつくと予想されています。
いわば電話番号の桁数が足りなくなって新規の利用者が加入できなくなりそうだ、という状況なのです。
* IPv4アドレス枯渇したらどうなるのか
現在、IPアドレスの桁数を増やしたIPv6アドレスという新しい形式が準備されつつあります。新しい形式に乗り換えることができれば、とてつもない桁数のIPアドレスが提供されるので、枯渇の心配はなくなります。
しかし、残念なことにIPv6アドレスを利用するためには、既存の全世界にある全ての機器や通信網を置き換える必要性があり、切替には長い時間と大きな費用がかかるのです。
IPv4アドレスが枯渇したら順調にIPv6に切り替わると言う論者もいますが、その切替には最短でも数年以上かかると考えられています。そのあいだ、我々は限られたIPv4アドレスを何とかやりくりして事業を続けていくしかありません。
IPv6がうまく普及するかどうか私にはわかりませんが、差し迫ったIPv4枯渇問題に対してIPv6は全く無力なのです。
* 一般企業やユーザへの影響
インターネットにおいて専ら利用者に止まる企業は、当面IPv4アドレス枯渇の影響を気にする必要はありません。
なぜかと言うと、ユーザがインターネットを利用するとき、通常はファイアウォールやルータなどの内側からアクセスしています。その内側では、内線番号にあたるプライベートIPアドレスを利用してますので、IPv4アドレス枯渇の影響を受けません。
外側のIPv4アドレス(グローバルアドレス)は複数の企業やユーザ間で共有することができますし、そうした有効活用に必要な方策はインターネットプロバイダが講じることになるでしょう。この技術をネットワークアドレス変換(NAT)と呼びます。
例えば、電話番号が一つしかない会社であっても、外線発信は同時に何人もできる場合が多いでしょう。そのようにIPアドレスも発信側であれば電話番号はあまり重要ではないのです。
現在は電話番号(グローバルアドレス)が一つの利用団体ごとに一つ以上割り当てられていますが、それを複数の利用者や企業で共通のものを利用するということです。乱暴な話だと思われるかもしれませんが、外部に交換手となるサーバがあれば、理論的にはうまく通信をさばくことは可能です。
そのため、ユーザはインターネットを利用するときにIPv4アドレス枯渇の影響をあまり気にすることなく利用することができると思われます。多少影響があるとしても、接続速度が若干低下したり、接続料金が若干あがる程度でしょう。(ただし今後大幅に発展する途上国においてはユーザのIPv4アドレスも大幅に不足する恐れがあります)
IP電話(VoIP)や仮想専用線(VPN)などを利用していたり、自社でメールサーバを運用しているなど受信側の機能がある場合には、なんらかの影響が出る恐れがあります。対策にはコストがかかるかもしれませんが、IPv4アドレス枯渇によって事業に大きな影響が及ぶことはないでしょう。
* インターネットインフラ事業者への影響
インターネット接続やインターネットサーバなどを提供しているインフラ事業者には枯渇の影響があります。が、その程度は業種、業態、規模、社歴などにより様々であると考えられます。
ユーザにインターネット接続を提供する消費者向けインターネット接続事業者(いわゆるプロバイダ)は先ほど述べたようにアドレス変換(NAT等)によって、少ないIPv4アドレスを多数のユーザに提供することができます。そのためビジネスへの影響は限定的と考えられます。
消費者向けプロバイダにおいても、技術的にはコストのかかる多くの難しい問題を解決していかなければなりませんが、それによってビジネスの成長がストップすることは考えにくいのです。
IPv4アドレス枯渇により最も深刻な影響を受けると考えられるのがホスティング事業者です。ホスティングとは、インターネット上でビジネスをするためのサーバ機器を多量に運用して、それをインターネット事業者へ貸し出す事業です。
サーバ機器を動かすには、通常、一台につき一つのIPアドレスが必要になります。
大規模なホスティング事業者においては、数千台、数万台のサーバを運用しており、その一台ごとにIPアドレスが必要となります。もしIPv4アドレスが枯渇すれば、事業拡大ができなくなってしまいます。
既存のホスティング事業者がどのような解決策を講じているのか、まだあまり明らかになってはいませんが、これから先、IPv4アドレスの不足がビジネス上の制約になることは避けられないと思われます。
またサーバ向けのインターネット接続事業においても、同様にIPアドレスの数がビジネス上きわめて重要ですので、事業拡大に深刻な影響が生じます。
プロバイダも含め、インターネットインフラ事業領域においては今後の新規開業が難しくなると予想されます。新規開業に必要なIPアドレスの割当が受けられず、もし他社から購入するとすれば大幅な費用がかかり、既存の事業者との競争上不利になるためです。
そのためインターネットインフラ事業領域においては競争が低下し、値段が高止まりすることが予想されます。
ホスティングやデータセンター向け接続などの事業領域においては、新規開業ができなくなり、既存の事業者も事業拡大が困難になり、サーバ設置の価格は高騰する恐れがあります。
* その他のインターネット事業者への影響
IPアドレスが足りなくなることは、インターネットの発展にとって大きな阻害要因となる可能性があります。
楽天やmixiのようなインターネット事業者にとってもIPアドレスの確保は重大な問題です。彼らも数千台以上のサーバ機器を抱えているからです。ただ既存事業者は恐らく当面必要なIPv4アドレスを十分に確保しているはずで、今後有効活用の方策などを講じれば、ビジネスに深刻な影響がでることはないでしょう。
問題は、これからスタートする新しい企業や、資金の余裕がなくIPアドレスを十分に確保できない事業者です。
インターネットで事業を行うには、基本的にサーバ機器が必要となり、IPアドレスを確保する必要があります。
彼らはIPアドレスの割当を受けることができず、高いお金で購入する必要がでてくることが考えられます。そうなった場合、新規事業のコストは大きく跳ね上がり競争上きわめて不利な状況に置かれます。
こうなるとインターネット事業領域では新しい発展や改革が起こりにくくなることが考えられます。インターネット領域でのイノベーションが起こりにくくなることは、世界経済やベンチャーキャピタルなどの産業にとって大きなマイナスをもたらします。
* ではどうすればいいのか
皆様の会社がインターネットを利用者としてのみ使っているのであれば、大きな心配は不要です。あと数年して状況が明確になってから、インターネット関係の業者に相談して、対策を検討すれば良いでしょう。(現時点で相談してもはっきりした答えは得られないと思います)
インターネットインフラ事業者の方々は、そもそもこんな素人のページを読まないでしょうし、私が申し上げるようなことは何もありません。
インターネット上で事業を展開している事業家の方々は、これから来るIPv4アドレス枯渇時代に備えて、十分な検討と対策を行うべきです。
現時点では情報が交錯しており、まだ確固とした対策を決められるわけではありません。慌てて、業者やコンサルタントなどの口車に乗って高額の対策を打ったりしないほうが良いでしょう。
もし近い将来にIPアドレスが不足したりサーバを増設したりする予定があるのであれば、前倒しにIPアドレスを確保すべきです。遠い将来の分のIPアドレスを確保すべきかどうかはまだわかりません。予算があれば検討しても良いでしょう。その確保は信頼できる接続業者等に依頼すべきです。
また将来におけるIPアドレスの枯渇対策や有効活用の方策などについて、エンジニアに情報収集と検討を始めるよう指示すべきです。ただし現時点では時期尚早ですので、具体的な計画までは決めないほうが良いでしょう。
* なぜ問題が深刻化しているのか
なぜIPv4枯渇問題はここまで深刻化しているのでしょうか。
これまで日本でも電話番号の桁数が足りなくなって桁が増えるようなことが何度もありましたが、それによって電話が止まったり、多くの会社の事業計画に影響を及ぼすようなことはありませんでした。
石油も枯渇すると何十年前から言われ続けていますが、まだいまのところ、すぐに枯渇するという状況ではないようです。地上波デジタルテレビへの移行も、大きな混乱を伴いつつも何とかやれています。
なぜインターネットだけが深刻な危機に直面しているのでしょうか。
インターネットは一つの企業や組織によって運用されているわけではなく、多数の機関や事業者の集合体であり、そのうち誰一人としてIPアドレス枯渇に責任を負っている人がいないのです。
インターネットの技術面を指揮するIETFなどの団体は、現在の事態にあまり危機感を抱いていないようです。本来であればIPv4枯渇対策技術を緊急に策定する必要があるはずですが、あまりそうした技術の話を聞くことはありません。不思議です。
本来であればIPアドレスを提供することに責任があるはずのJPNIC(アドレス割当団体)内のIPv4枯渇対策タスクフォースに至っては、彼らが熱烈に推進するIPv6を普及する絶好の機会として、IPv4枯渇を歓迎するようなプレスリリースを発表するという倒錯ぶりです。
インターネットに大きな影響力を持つ既存の事業者(とくに米国の事業者)は、既に膨大なIPアドレスを確保していることも考えられます。その場合、彼らにとってはIPアドレスが枯渇するほうが得になります。
また個々の接続事業者は、通例、自社の持っているIPアドレスの活用状況や在庫状況を明らかにしておらず、どれくらい事業拡張・事業継続の見込みがあるのかを公開していません。
そのため末端のインターネット企業やエンジニアにとっては、今後どのように事態が展開するのか全く予想が付かないのが正直なところです。弊社でも、利用している接続事業者に今後の対応について問い合わせていますが、営業担当者からは何の情報も持っていないとの回答がありました。
このような状況下で、情報が錯綜して、誰も正しい判断を下せない状態になっているようです。
とくにインターネットを主導する諸団体の人々は、IPv6という一つの新技術に固執し、それが枯渇に当面間に合わないことが分かった後になっても他の技術をないがしろにして危機を招いた責任があると言えます。
これから先、新技術や新対策が急ピッチで用意され、枯渇が各社の事業に深刻な影響を及ぼすことは回避される可能性も十分あります。いずれにせよ、対策には大きなコストがかかるでしょうが、それが決算書を大きく毀損することにはならない可能性もあります。
その一方で、IPv4が完全に枯渇し、IPアドレスの価格が暴騰し、インターネットの新規起業のコストがかなり増大する可能性も考えられます。
ただしそれで起業成功例が減るかは疑問です。そもそも起業家とは、どんな逆境も乗り越えて困難に打ち勝って成功するものです。たかだか技術的にIPアドレスが足りないという問題が、本当に起業を殺すことにはならないでしょう。
万が一、最悪の事態になれば、インターネットがIPv4とIPv6の二つの世界に分断され、お互いが通信できない極めて混乱した事態になることも考えられます。しかし、そうした事態は当面は起こらないでしょうし、日本で起こるとは考えにくいです。
IPv6への全面移行が完了したのちには、IPv6移行コストを負担できない小企業、個人、大学研究室などのサーバが停止し、インターネットから幾らかの古い情報が消える可能性もあります。それも遠い未来の話です。
以上、現時点でのIPv4アドレス枯渇問題の解説でした。
状況は移り変わりますので、常に最新の情報を参照しながら行動されることをおすすめします。
本稿の筆者もネットワークの専門家ではないので、間違った記述や偏見にもとづいた記述があるかもしれないことをお断りしておきます。ただしネットワークの専門家による記事は、末端の事業家やエンジニアには何の役にも立たないことが通例ですので、そうした記事とあわせてお読み頂ければと思います。
* IPv4枯渇問題とは何か
我々はインターネットを利用するときにIPアドレスという電話番号のような番号を利用しています。利用者はIPアドレスを一切意識しないで利用しているかもしれませんが、実際は、全ての機器にIPアドレスが割り振られています。
インターネットは、IPアドレスに完全に依存して作られており、IPアドレスが無ければ、通信は不可能です。
そのIPアドレスが現在足りなくなりつつあります。2011年中には新規割当の在庫は底をつくと予想されています。
いわば電話番号の桁数が足りなくなって新規の利用者が加入できなくなりそうだ、という状況なのです。
* IPv4アドレス枯渇したらどうなるのか
現在、IPアドレスの桁数を増やしたIPv6アドレスという新しい形式が準備されつつあります。新しい形式に乗り換えることができれば、とてつもない桁数のIPアドレスが提供されるので、枯渇の心配はなくなります。
しかし、残念なことにIPv6アドレスを利用するためには、既存の全世界にある全ての機器や通信網を置き換える必要性があり、切替には長い時間と大きな費用がかかるのです。
IPv4アドレスが枯渇したら順調にIPv6に切り替わると言う論者もいますが、その切替には最短でも数年以上かかると考えられています。そのあいだ、我々は限られたIPv4アドレスを何とかやりくりして事業を続けていくしかありません。
IPv6がうまく普及するかどうか私にはわかりませんが、差し迫ったIPv4枯渇問題に対してIPv6は全く無力なのです。
* 一般企業やユーザへの影響
インターネットにおいて専ら利用者に止まる企業は、当面IPv4アドレス枯渇の影響を気にする必要はありません。
なぜかと言うと、ユーザがインターネットを利用するとき、通常はファイアウォールやルータなどの内側からアクセスしています。その内側では、内線番号にあたるプライベートIPアドレスを利用してますので、IPv4アドレス枯渇の影響を受けません。
外側のIPv4アドレス(グローバルアドレス)は複数の企業やユーザ間で共有することができますし、そうした有効活用に必要な方策はインターネットプロバイダが講じることになるでしょう。この技術をネットワークアドレス変換(NAT)と呼びます。
例えば、電話番号が一つしかない会社であっても、外線発信は同時に何人もできる場合が多いでしょう。そのようにIPアドレスも発信側であれば電話番号はあまり重要ではないのです。
現在は電話番号(グローバルアドレス)が一つの利用団体ごとに一つ以上割り当てられていますが、それを複数の利用者や企業で共通のものを利用するということです。乱暴な話だと思われるかもしれませんが、外部に交換手となるサーバがあれば、理論的にはうまく通信をさばくことは可能です。
そのため、ユーザはインターネットを利用するときにIPv4アドレス枯渇の影響をあまり気にすることなく利用することができると思われます。多少影響があるとしても、接続速度が若干低下したり、接続料金が若干あがる程度でしょう。(ただし今後大幅に発展する途上国においてはユーザのIPv4アドレスも大幅に不足する恐れがあります)
IP電話(VoIP)や仮想専用線(VPN)などを利用していたり、自社でメールサーバを運用しているなど受信側の機能がある場合には、なんらかの影響が出る恐れがあります。対策にはコストがかかるかもしれませんが、IPv4アドレス枯渇によって事業に大きな影響が及ぶことはないでしょう。
* インターネットインフラ事業者への影響
インターネット接続やインターネットサーバなどを提供しているインフラ事業者には枯渇の影響があります。が、その程度は業種、業態、規模、社歴などにより様々であると考えられます。
ユーザにインターネット接続を提供する消費者向けインターネット接続事業者(いわゆるプロバイダ)は先ほど述べたようにアドレス変換(NAT等)によって、少ないIPv4アドレスを多数のユーザに提供することができます。そのためビジネスへの影響は限定的と考えられます。
消費者向けプロバイダにおいても、技術的にはコストのかかる多くの難しい問題を解決していかなければなりませんが、それによってビジネスの成長がストップすることは考えにくいのです。
IPv4アドレス枯渇により最も深刻な影響を受けると考えられるのがホスティング事業者です。ホスティングとは、インターネット上でビジネスをするためのサーバ機器を多量に運用して、それをインターネット事業者へ貸し出す事業です。
サーバ機器を動かすには、通常、一台につき一つのIPアドレスが必要になります。
大規模なホスティング事業者においては、数千台、数万台のサーバを運用しており、その一台ごとにIPアドレスが必要となります。もしIPv4アドレスが枯渇すれば、事業拡大ができなくなってしまいます。
既存のホスティング事業者がどのような解決策を講じているのか、まだあまり明らかになってはいませんが、これから先、IPv4アドレスの不足がビジネス上の制約になることは避けられないと思われます。
またサーバ向けのインターネット接続事業においても、同様にIPアドレスの数がビジネス上きわめて重要ですので、事業拡大に深刻な影響が生じます。
プロバイダも含め、インターネットインフラ事業領域においては今後の新規開業が難しくなると予想されます。新規開業に必要なIPアドレスの割当が受けられず、もし他社から購入するとすれば大幅な費用がかかり、既存の事業者との競争上不利になるためです。
そのためインターネットインフラ事業領域においては競争が低下し、値段が高止まりすることが予想されます。
ホスティングやデータセンター向け接続などの事業領域においては、新規開業ができなくなり、既存の事業者も事業拡大が困難になり、サーバ設置の価格は高騰する恐れがあります。
* その他のインターネット事業者への影響
IPアドレスが足りなくなることは、インターネットの発展にとって大きな阻害要因となる可能性があります。
楽天やmixiのようなインターネット事業者にとってもIPアドレスの確保は重大な問題です。彼らも数千台以上のサーバ機器を抱えているからです。ただ既存事業者は恐らく当面必要なIPv4アドレスを十分に確保しているはずで、今後有効活用の方策などを講じれば、ビジネスに深刻な影響がでることはないでしょう。
問題は、これからスタートする新しい企業や、資金の余裕がなくIPアドレスを十分に確保できない事業者です。
インターネットで事業を行うには、基本的にサーバ機器が必要となり、IPアドレスを確保する必要があります。
彼らはIPアドレスの割当を受けることができず、高いお金で購入する必要がでてくることが考えられます。そうなった場合、新規事業のコストは大きく跳ね上がり競争上きわめて不利な状況に置かれます。
こうなるとインターネット事業領域では新しい発展や改革が起こりにくくなることが考えられます。インターネット領域でのイノベーションが起こりにくくなることは、世界経済やベンチャーキャピタルなどの産業にとって大きなマイナスをもたらします。
* ではどうすればいいのか
皆様の会社がインターネットを利用者としてのみ使っているのであれば、大きな心配は不要です。あと数年して状況が明確になってから、インターネット関係の業者に相談して、対策を検討すれば良いでしょう。(現時点で相談してもはっきりした答えは得られないと思います)
インターネットインフラ事業者の方々は、そもそもこんな素人のページを読まないでしょうし、私が申し上げるようなことは何もありません。
インターネット上で事業を展開している事業家の方々は、これから来るIPv4アドレス枯渇時代に備えて、十分な検討と対策を行うべきです。
現時点では情報が交錯しており、まだ確固とした対策を決められるわけではありません。慌てて、業者やコンサルタントなどの口車に乗って高額の対策を打ったりしないほうが良いでしょう。
もし近い将来にIPアドレスが不足したりサーバを増設したりする予定があるのであれば、前倒しにIPアドレスを確保すべきです。遠い将来の分のIPアドレスを確保すべきかどうかはまだわかりません。予算があれば検討しても良いでしょう。その確保は信頼できる接続業者等に依頼すべきです。
また将来におけるIPアドレスの枯渇対策や有効活用の方策などについて、エンジニアに情報収集と検討を始めるよう指示すべきです。ただし現時点では時期尚早ですので、具体的な計画までは決めないほうが良いでしょう。
* なぜ問題が深刻化しているのか
なぜIPv4枯渇問題はここまで深刻化しているのでしょうか。
これまで日本でも電話番号の桁数が足りなくなって桁が増えるようなことが何度もありましたが、それによって電話が止まったり、多くの会社の事業計画に影響を及ぼすようなことはありませんでした。
石油も枯渇すると何十年前から言われ続けていますが、まだいまのところ、すぐに枯渇するという状況ではないようです。地上波デジタルテレビへの移行も、大きな混乱を伴いつつも何とかやれています。
なぜインターネットだけが深刻な危機に直面しているのでしょうか。
インターネットは一つの企業や組織によって運用されているわけではなく、多数の機関や事業者の集合体であり、そのうち誰一人としてIPアドレス枯渇に責任を負っている人がいないのです。
インターネットの技術面を指揮するIETFなどの団体は、現在の事態にあまり危機感を抱いていないようです。本来であればIPv4枯渇対策技術を緊急に策定する必要があるはずですが、あまりそうした技術の話を聞くことはありません。不思議です。
本来であればIPアドレスを提供することに責任があるはずのJPNIC(アドレス割当団体)内のIPv4枯渇対策タスクフォースに至っては、彼らが熱烈に推進するIPv6を普及する絶好の機会として、IPv4枯渇を歓迎するようなプレスリリースを発表するという倒錯ぶりです。
インターネットに大きな影響力を持つ既存の事業者(とくに米国の事業者)は、既に膨大なIPアドレスを確保していることも考えられます。その場合、彼らにとってはIPアドレスが枯渇するほうが得になります。
また個々の接続事業者は、通例、自社の持っているIPアドレスの活用状況や在庫状況を明らかにしておらず、どれくらい事業拡張・事業継続の見込みがあるのかを公開していません。
そのため末端のインターネット企業やエンジニアにとっては、今後どのように事態が展開するのか全く予想が付かないのが正直なところです。弊社でも、利用している接続事業者に今後の対応について問い合わせていますが、営業担当者からは何の情報も持っていないとの回答がありました。
このような状況下で、情報が錯綜して、誰も正しい判断を下せない状態になっているようです。
とくにインターネットを主導する諸団体の人々は、IPv6という一つの新技術に固執し、それが枯渇に当面間に合わないことが分かった後になっても他の技術をないがしろにして危機を招いた責任があると言えます。
これから先、新技術や新対策が急ピッチで用意され、枯渇が各社の事業に深刻な影響を及ぼすことは回避される可能性も十分あります。いずれにせよ、対策には大きなコストがかかるでしょうが、それが決算書を大きく毀損することにはならない可能性もあります。
その一方で、IPv4が完全に枯渇し、IPアドレスの価格が暴騰し、インターネットの新規起業のコストがかなり増大する可能性も考えられます。
ただしそれで起業成功例が減るかは疑問です。そもそも起業家とは、どんな逆境も乗り越えて困難に打ち勝って成功するものです。たかだか技術的にIPアドレスが足りないという問題が、本当に起業を殺すことにはならないでしょう。
万が一、最悪の事態になれば、インターネットがIPv4とIPv6の二つの世界に分断され、お互いが通信できない極めて混乱した事態になることも考えられます。しかし、そうした事態は当面は起こらないでしょうし、日本で起こるとは考えにくいです。
IPv6への全面移行が完了したのちには、IPv6移行コストを負担できない小企業、個人、大学研究室などのサーバが停止し、インターネットから幾らかの古い情報が消える可能性もあります。それも遠い未来の話です。
以上、現時点でのIPv4アドレス枯渇問題の解説でした。
状況は移り変わりますので、常に最新の情報を参照しながら行動されることをおすすめします。
2010年12月18日土曜日
ライフサイクルイノベーション
「キャズム」の著者、ジェフリー・ムーアの「ライフサイクルイノベーション」を読みました。いろいろと重要な示唆があるのですが、書籍としてはどうも読みにくく退屈な本でした。ウェブで検索すれば要約をまとめている方々がいますので、そういうのを読めば良いかもしれません。経営者としては読むべき本だとは思うんですが・・・・
本書の主旨は、事業や事業領域にはライフサイクルがあり、そのライフサイクルに適した各種のイノベーションを行うことと、成熟した事業領域から資源を引き抜き、本質的かつ成長する「コア」に資源を集中投入する、ということです。
本書ででてくるいくつかのテーマを以下にまとめます。
初期市場・成長市場における製品リーダーシップイノベーション:
本書の主旨は、事業や事業領域にはライフサイクルがあり、そのライフサイクルに適した各種のイノベーションを行うことと、成熟した事業領域から資源を引き抜き、本質的かつ成長する「コア」に資源を集中投入する、ということです。
本書ででてくるいくつかのテーマを以下にまとめます。
- イノベーションは、市場の成熟度合いによって、いろいろなパターンがある。
- 成長が期待でき、かつ、他社と差別化して競合優位を得るための本質的な部分である「コア」と、自社として特化していない部分、または成長への期待がもてない「コンテキスト」にわけて、コアに資源を集中する。
- 事業の領域には、重要かつ実行の難しい「ミッション・クリティカル」領域と、実行の容易な「非ミッション・クリティカル」領域がある。コンテキスト領域は、なるべく単純化して非ミッションクリティカルに持ち込む。
- イノベーションとは集中特化であり、数多くの方向の揃っていないイノベーションを行うと、中立化して意味が無くなってしまう。
- 事業スタイルには、反復プロセスを重視して比較的低コストで大量販売を行う「ボリューム・オペレーション」と、個別の顧客に密接した営業を行い個別のプロセスで複雑かつ高額の販売を行う「コンプレックス・システム」型がある。この二つのスタイルは、主流となる型が交互に入れ替わっていく。
初期市場・成長市場における製品リーダーシップイノベーション:
- 破壊的イノベーション: 新規製品による新規市場創造
- アプリケーション・イノベーション: 既存技術の新しい分野への応用による市場創造
- 製品イノベーション: 既存市場に前例がない機能を投入して差別化
- プラットフォーム・イノベーション: 下位にある既存テクノロジーの複雑さを隠蔽する
- 製品ライン拡張イノベーション: 既存製品を一部変更してサブカテゴリーを作る
- 機能強化イノベーション: 既存製品に斬新な機能を追加して価値を増やす
- マーケティング・イノベーション: 購買プロセスでの潜在的顧客とのやりとりで差別化する
- 顧客エクスペリエンス・イノベーション: 製品そのものではなく、利用プロセス全体の体験を向上する
- バリュー・エンジニアリング・イノベーション: 製品の外部属性は保ったまま、仕様や設計や調達を変えてコストを下げる
- インテグレーション・イノベーション: 多様な構成要素を一つにまとめて、顧客の維持管理コストを下げる
- プロセス・イノベーション: 製品ではなく、その製造・提供プロセスからムダを省く
- バリュー・マイグレーション・イノベーション: バリューチェーン内のコモディティ化した要素から離れて、より利益率が高い領域へシフトする
- 自立再生イノベーション: 自社内の資源を使って新規成長市場に乗り出す
- 企業買収再生イノベーション: 外部企業を買収して新規成長市場に乗り出す
- 収穫と撤退
2010年12月5日日曜日
医薬品販売規制パブリックコメント
首相官邸IT戦略本部による『「一般用医薬品のインターネット販売及びテレビ電話等を活用した医薬品販売」に関するパブリックコメントの募集』に応募しましたので、パブリックコメントの内容をこちらに掲載します。
インターネットによる一般医薬品販売の規制については、こちらの記事などをご参照頂ければと思います。
インターネットによる一般医薬品の販売が厚生労働省の省令により禁止され、ケンコーコムなど既に事業を行っていた事業者が撤退せざるを得ないという異例の事態が生じたものです。それに対して、ケンコーコムは訴訟を提起し、ヤフーや楽天などの事業者はeビジネス推進連合会という業界団体を組織して、厚生労働省の動きに対抗しています。
私の意見としてはパブリックコメントに書いたとおり、理論的にも実際的にも対面販売よりもインターネット販売のほうが安全性が劣るという理由がなく、規制は不当であるというものです。
インターネットによる一般医薬品販売の規制は極めて不当な物です。厚生労働省の省令として、正当な理由もなく、一つの業界が完全に潰されたという異例の事態です。私には、対面販売によって安全性が確保されるという理由の一つも見いだすことができません。
法規制にも、どういった経緯により誰がどのように意思決定したのかという透明性、法規制を必要とする現状や将来に関するデータと予測、法規制によってどのように目的を達成するのかという論理とシナリオ、そういったことを説明する責任があるのではないでしょうか。
厚生労働省が新薬を認可するときには製薬会社にとほうもなく詳細なデータを要求しているはずですが、自分が何かをやるときは一つの根拠もなくてよいのですから、役人というのは良い商売ですね。
以下、パブリックコメント本文です。少し論点が整理不足気味で申し訳ありません。
(1)賛成する。
(2)理由1: 対面での医薬品販売時にくらべてインターネット販売が安全性で劣るという主張には根拠がない。
対面における一般用医薬品の購入時に薬剤師から説明や質問を受けることは実質的に行われていない。薬剤師は店頭には限られた人数しかおらず、通常の販売時に質問を受けたり説明を行うべく待機している状態ではない。実際に薬店薬局で調査してみればわかることだが、第一類医薬品であっても、単に薬剤師がレジを打って販売するだけという店も多い。
説明や質問が行われているとしても、購入時にレジで行われるのみであり、時間的に限られた中で、十分な質問や応答を行うことができない。顧客が質問や疑問を持っているとしても、限られた時間内であるので十分な質疑を尽くせることは期待できない。客の並んだレジでどのようにどの程度の説明を行うというのか。
かといって、処方箋医薬品の交付のようにカウンターなどで座って数分の説明時間をかけるとするのは経済的にも顧客の利便性の面からもあり得ない話である。問診を望む客は薬局ではなく診療所へ行くだろう。顧客は利便性と迅速性をもとめて一般用医薬品を買うのである。
すなわち対面販売では十分な説明が行われて安全性が確保されるというのは虚構である。
もし対面での医薬品販売時にくらべてインターネット販売が安全性で劣るという主張により規制を行うのであれば、実際の販売の実態を無作為に調査して、通常の利用シナリオにおいて、インターネット販売では情報提供等が有意に劣っており、かつ、その情報提供の不十分さにより実際の健康被害につながり、かつ、その予想される被害の大きさと頻度が許容できるリスクを超えている、という調査結果がなければならない。その証拠がなく規制をすることは不当である。
そもそも今回の規制において厚生労働省は、インターネット販売において具体的に実際の対面販売とどのように異なることによりどのような危険が予期されるのか、その根拠を提示していない。パブリックコメントで規制緩和の理由を聞く前に、まず厚生労働省が規制の根拠を提示すべきである。
理由2: インターネットでの医薬品販売では、対面販売に比べて優れた情報提供を行い、より高い安全性と顧客の利便性を確保することができる。
A.顧客に十分な情報提供を行い、選択肢を与えることにより、顧客自身が商品の購入判断を行うことが、最も安全性を高めるのに適した方法である。
現在の薬局薬店では、薬をレジの後ろの棚に隠すなどしており、顧客に情報や選択肢を与えない方針をとっている。それは顧客の情報へのアクセスを阻み、安全性を阻害する行為である。
薬剤師による対面の情報提供といっても、薬剤師は顧客の個別の健康情報を把握しているわけでもなく、顧客個別の健康情報を把握するのに十分な時間も権限も手段もない。患者に検査や診断などを行うことができる医師とは異なり、薬剤師は単に薬の一般的性質やリスクを説明できるに過ぎず、注意書きを超えた本質的な安全性向上策が講じられるわけではない。全ての顧客に対して個別の健康情報を聴取するというのは現実的に不可能である。
それどころか、薬局薬店の薬剤師は売っている個々の製品がどのような成分を含有しているかすら把握していない場合がある。
それに対して、顧客本人は自らの既往症、体質、服用している薬などについて、薬店薬局の薬剤師よりも多くの情報を持っている。そのため、薬剤に関する十分な情報が提供されれば、薬剤師よりも的確な判断を行うことができる。
B.インターネット販売では、詳細な添付文書を掲載し、禁忌条件などのチェックリストを作成してチェック必須とすることができる。
インターネットでは、その性質上、顧客に豊富な選択肢と詳細な情報を提供することができる。箱に記載された小さな成分表や注意書きとは異なる、安全性や効能に関する詳細な添付文書を掲載することができる。
また顧客も時間的制約などにとらわれることなく、購入前に詳細な文書を閲覧して、ゆっくりと比較・考慮・検討することができる。
それにより、上記Aの理由により、顧客により高い安全性と利便性を提供できる。
また薬によっては、服用禁忌条件のチェックリストなどを作成し、全ての項目にチェックした場合のみ販売できるようにすることができる。
さらにインターネットであれば、特定の薬に限らず、医薬品のカテゴリや疾病や健康などに関する詳細な情報提供を行うページを作成することも可能である。インターネット医薬品販売サイトにおいて、薬剤師が広く認められた学術的知見に基づき、情報提供のページを作成することが許可されるとすれば、安全な医薬品選びなどを助けることができる。
C.インターネット販売であれば、薬剤師に時間をかけて詳細な質問を送り、それにたいして十分な回答を受けることができる。
一般の薬局薬店とは異なり、インターネット販売店であれば薬剤師は顧客への情報提供に専念することが容易である。メールによって質問を受けるのであれば、顧客、薬剤師ともに時間を有効に活用して余裕を持って詳細な質問と回答を行うことができる。
以上の理由から、医薬品のインターネット販売を規制する省令には一切の根拠がなく、安全性を低下させ、薬局薬店の利益を保護するための極めて不当な規制であると言える。ただちに廃止するべきである。
(3)理由1で述べたとおり、インターネット販売が薬局薬店での販売よりも安全性が劣ることはないので、特別に安全を確保することは不要である。
それどころか薬局薬店での対面販売においても有害無益な規制を緩和すべきであると考える。高度な教育を受けた薬剤師を店でレジ打ちさせることは多大なムダである。
もしインターネット販売を、店頭よりも安全な販売手段として優位に位置づけるのであれば、理由2に述べた施策を全ての店舗が行うことにより、店頭よりも安全な販売手段となる。その場合は、第一類医薬品の販売を含む、全ての一般用医薬品の販売を可能とするべきである。また将来的には、処方された医薬品を通販で購入・受け取りできるようにすべきである。
また安全確保策は必ずしも個々の店舗で行う必要はなく、政府や業界団体によって一般用医薬品のデータベースや薬剤師へのメールや電話での相談窓口などを整備しておけば、全体のコストを抑えることが出来る。
インターネットによる一般医薬品の販売が厚生労働省の省令により禁止され、ケンコーコムなど既に事業を行っていた事業者が撤退せざるを得ないという異例の事態が生じたものです。それに対して、ケンコーコムは訴訟を提起し、ヤフーや楽天などの事業者はeビジネス推進連合会という業界団体を組織して、厚生労働省の動きに対抗しています。
私の意見としてはパブリックコメントに書いたとおり、理論的にも実際的にも対面販売よりもインターネット販売のほうが安全性が劣るという理由がなく、規制は不当であるというものです。
インターネットによる一般医薬品販売の規制は極めて不当な物です。厚生労働省の省令として、正当な理由もなく、一つの業界が完全に潰されたという異例の事態です。私には、対面販売によって安全性が確保されるという理由の一つも見いだすことができません。
法規制にも、どういった経緯により誰がどのように意思決定したのかという透明性、法規制を必要とする現状や将来に関するデータと予測、法規制によってどのように目的を達成するのかという論理とシナリオ、そういったことを説明する責任があるのではないでしょうか。
厚生労働省が新薬を認可するときには製薬会社にとほうもなく詳細なデータを要求しているはずですが、自分が何かをやるときは一つの根拠もなくてよいのですから、役人というのは良い商売ですね。
以下、パブリックコメント本文です。少し論点が整理不足気味で申し訳ありません。
(1) 一般用医薬品のインターネット販売及びテレビ電話等を活用した医薬品販売の規制緩和への賛否
(2) 賛否の理由
(3) 一般用医薬品のインターネット販売及びテレビ電話等を活用した医薬品販売を行った場合でも、安全が確保される仕組みがないか。また、もしあるとすればその具体的アイデア
(1)賛成する。
(2)理由1: 対面での医薬品販売時にくらべてインターネット販売が安全性で劣るという主張には根拠がない。
対面における一般用医薬品の購入時に薬剤師から説明や質問を受けることは実質的に行われていない。薬剤師は店頭には限られた人数しかおらず、通常の販売時に質問を受けたり説明を行うべく待機している状態ではない。実際に薬店薬局で調査してみればわかることだが、第一類医薬品であっても、単に薬剤師がレジを打って販売するだけという店も多い。
説明や質問が行われているとしても、購入時にレジで行われるのみであり、時間的に限られた中で、十分な質問や応答を行うことができない。顧客が質問や疑問を持っているとしても、限られた時間内であるので十分な質疑を尽くせることは期待できない。客の並んだレジでどのようにどの程度の説明を行うというのか。
かといって、処方箋医薬品の交付のようにカウンターなどで座って数分の説明時間をかけるとするのは経済的にも顧客の利便性の面からもあり得ない話である。問診を望む客は薬局ではなく診療所へ行くだろう。顧客は利便性と迅速性をもとめて一般用医薬品を買うのである。
すなわち対面販売では十分な説明が行われて安全性が確保されるというのは虚構である。
もし対面での医薬品販売時にくらべてインターネット販売が安全性で劣るという主張により規制を行うのであれば、実際の販売の実態を無作為に調査して、通常の利用シナリオにおいて、インターネット販売では情報提供等が有意に劣っており、かつ、その情報提供の不十分さにより実際の健康被害につながり、かつ、その予想される被害の大きさと頻度が許容できるリスクを超えている、という調査結果がなければならない。その証拠がなく規制をすることは不当である。
そもそも今回の規制において厚生労働省は、インターネット販売において具体的に実際の対面販売とどのように異なることによりどのような危険が予期されるのか、その根拠を提示していない。パブリックコメントで規制緩和の理由を聞く前に、まず厚生労働省が規制の根拠を提示すべきである。
理由2: インターネットでの医薬品販売では、対面販売に比べて優れた情報提供を行い、より高い安全性と顧客の利便性を確保することができる。
A.顧客に十分な情報提供を行い、選択肢を与えることにより、顧客自身が商品の購入判断を行うことが、最も安全性を高めるのに適した方法である。
現在の薬局薬店では、薬をレジの後ろの棚に隠すなどしており、顧客に情報や選択肢を与えない方針をとっている。それは顧客の情報へのアクセスを阻み、安全性を阻害する行為である。
薬剤師による対面の情報提供といっても、薬剤師は顧客の個別の健康情報を把握しているわけでもなく、顧客個別の健康情報を把握するのに十分な時間も権限も手段もない。患者に検査や診断などを行うことができる医師とは異なり、薬剤師は単に薬の一般的性質やリスクを説明できるに過ぎず、注意書きを超えた本質的な安全性向上策が講じられるわけではない。全ての顧客に対して個別の健康情報を聴取するというのは現実的に不可能である。
それどころか、薬局薬店の薬剤師は売っている個々の製品がどのような成分を含有しているかすら把握していない場合がある。
それに対して、顧客本人は自らの既往症、体質、服用している薬などについて、薬店薬局の薬剤師よりも多くの情報を持っている。そのため、薬剤に関する十分な情報が提供されれば、薬剤師よりも的確な判断を行うことができる。
B.インターネット販売では、詳細な添付文書を掲載し、禁忌条件などのチェックリストを作成してチェック必須とすることができる。
インターネットでは、その性質上、顧客に豊富な選択肢と詳細な情報を提供することができる。箱に記載された小さな成分表や注意書きとは異なる、安全性や効能に関する詳細な添付文書を掲載することができる。
また顧客も時間的制約などにとらわれることなく、購入前に詳細な文書を閲覧して、ゆっくりと比較・考慮・検討することができる。
それにより、上記Aの理由により、顧客により高い安全性と利便性を提供できる。
また薬によっては、服用禁忌条件のチェックリストなどを作成し、全ての項目にチェックした場合のみ販売できるようにすることができる。
さらにインターネットであれば、特定の薬に限らず、医薬品のカテゴリや疾病や健康などに関する詳細な情報提供を行うページを作成することも可能である。インターネット医薬品販売サイトにおいて、薬剤師が広く認められた学術的知見に基づき、情報提供のページを作成することが許可されるとすれば、安全な医薬品選びなどを助けることができる。
C.インターネット販売であれば、薬剤師に時間をかけて詳細な質問を送り、それにたいして十分な回答を受けることができる。
一般の薬局薬店とは異なり、インターネット販売店であれば薬剤師は顧客への情報提供に専念することが容易である。メールによって質問を受けるのであれば、顧客、薬剤師ともに時間を有効に活用して余裕を持って詳細な質問と回答を行うことができる。
以上の理由から、医薬品のインターネット販売を規制する省令には一切の根拠がなく、安全性を低下させ、薬局薬店の利益を保護するための極めて不当な規制であると言える。ただちに廃止するべきである。
(3)理由1で述べたとおり、インターネット販売が薬局薬店での販売よりも安全性が劣ることはないので、特別に安全を確保することは不要である。
それどころか薬局薬店での対面販売においても有害無益な規制を緩和すべきであると考える。高度な教育を受けた薬剤師を店でレジ打ちさせることは多大なムダである。
もしインターネット販売を、店頭よりも安全な販売手段として優位に位置づけるのであれば、理由2に述べた施策を全ての店舗が行うことにより、店頭よりも安全な販売手段となる。その場合は、第一類医薬品の販売を含む、全ての一般用医薬品の販売を可能とするべきである。また将来的には、処方された医薬品を通販で購入・受け取りできるようにすべきである。
また安全確保策は必ずしも個々の店舗で行う必要はなく、政府や業界団体によって一般用医薬品のデータベースや薬剤師へのメールや電話での相談窓口などを整備しておけば、全体のコストを抑えることが出来る。
登録:
投稿 (Atom)