2013年3月30日土曜日

リーダーシップと起業

僕にとって「起業して一番よかったこと」は、リーダーシップが身についたことです。

リーダーシップとは、他人に命令したり指示を出したりすることではなく、何事にも主体性を持って、能動的に働きかける考え方を持つということです。

日本人というのは、とかく何か不満があっても行動に移さず、他人のせいにするという考え方が染みついているものです。政府が悪い、会社が悪い、上司が悪い、部下が悪い、しまいには買ってくれない顧客が悪いとまで・・・

起業家・経営者にとって、世の中は「コントロールできること」と「コントロールできないこと」の二種類です。

コントロールできることは、すべて自分の責任です。それをどのようにコントロールして成果を出すかが求められます。

コントロールできないことを見れば、どうやればコントロールできるようになるか、他に代替案がないかを考えますし、どうやってもコントロールできないことであれば黙って諦めます。

結果として、世の中に対して愚痴を言うことはなくなり、不満があれば能動的に行動して解決するという方向性になります。

「世の中なんて一個人の力では変えられるわけがないんですよ」みたいなことを言う人もいますけど、そんなもんでもないですよ。僕がはじめたWinny事件支援活動では、最高裁で無罪を勝ち取ることができました。ネット医薬品販売訴訟や、一票の格差訴訟なども世の中を動かしています。

この、困ったことがあれば自力で解決する、という姿勢は人生をハッピーにしてくれますので、起業で得たもののなかで一番良いものですね。

人間にとって最もストレスとなることの一つは、無力感にさいなまれることです。それが解消されるだけで、人生はかなりマシなものになるのではないでしょうか。

また、何事もコントロールしたり、「もし自分がコントロールできるとしたらどうするだろう?」と考えることで、考える力や、問題解決する力がどんどんついてきます。

これはとても良いことでした。

逆に、他人のせいにする癖が抜けない人は、起業すると大変悲惨なことになりますので、起業しないほうがいいでしょう。真顔で「部下が動かないから困る」とか「顧客が理解がないから買ってくれない」とかいうことを言う社長がいますので・・・


この本は実はリーダーシップについての本です。人事・教育担当者や若者におすすめ。

2013年3月27日水曜日

なぜAmazon Web Servicesを使うべきなのか


弊社では、ぼちぼちとAmazon Web Services (AWS)を試用してきておりますが、色々使ってきてみて思うのは、AWSは素晴らしいシステムであり、特別な用途を除けば原則としてこれからのシステムはAWSで構築するのが良いのかなと思いますね。

AWSが優れている理由は、とにかく運用やソフトウェア開発を楽にする機能が豊富に揃っており、運用までをフルサポートしてくれる垂直統合環境であり、APIやソフトウェア、ドキュメントの品質や使いやすさが極めて優れていることです。そのため、システム開発運用のコストが大幅に下がり、システム運用の品質を上げることができます。


まずAmazon EC2 (仮想マシンホスティング)から説明すると、一つにはAmazon LinuxというEC2専用のLinuxがあることは大きなメリットです。

Amazon EC2のインスタンスに最適化されていますので、簡単に安定利用できるだけでなく、OSアップデートもyum updateするだけで安心して行うことができます。そのため、サーバーが陳腐化してシステム移行が必要になることがありません。これにより、システム移行工数(数人日~数人月)が削減できるのは大変なメリットです。より大きいサーバーに変えることも一瞬でできます。

EC2の有用性はEBSという外部ストレージのサービスを使うと、さらに強化されます。インスタンスのスナップショットによるフルバックアップを1クリックで取ることができますし、スナップショットをひな形にして新しいサーバーを立ち上げることも簡単にできます。(自動で定期的にフルバックアップを取得する機能がないのは不可解ですが....)

Amazon Route53は、DNSのホスティングというニッチな領域ですが、非常に便利なサービスです。AWSの持つ信頼性や、グローバルな拠点を活かして、世界中の顧客に高速なDNS解決を提供できます。もう、わざわざ脆弱性だらけのBINDなどをDNS権威サーバとして使う必要はゼロでしょう。

Amazon S3は、システム開発を圧倒的に簡単にするという点で大きな価値があります。これまでは一つのサーバーの容量を超える多数のファイルを格納するためには、極めて高額なストレージ製品を使うか、独自で分散ファイルシステムを構築しなければ行けませんでした。それがS3では、圧倒的に簡単に運用を行うことができます。

Amazon S3とGlacierを利用すれば、ログやバックアップなども簡単かつ安価に保存していくことができます。

DynamoDBのような分散データベース環境は、素人が運用するのは極めて困難ですので、それが管理まで任せられるというのも大きなメリットだと思います。ただし現時点では、1クリックでバックアップを取るような機能がついていませんので、その点では運用性がまだいまいちかなと思います。

Amazon Cloudfrontは、コンテンツ配信システム(CDN)であり、ファイルや画像などを世界中に高速配信することができます。弊社では、一部サービスで海外からの表示を高速にするために使っています。Akamaiのような高額なCDNに比べて、無料みたいな値段で使えるので、ちょーおすすめです。


AWSを使う上で気をつけるべき点としては、EC2は他社レンタルサーバーより割高なことと、メール送信に許可が必要なので非常に面倒くさいことですね。

まずEC2から外部へメールを送るためには、基本的に許可を得ないと送れません。その時点でかなり面倒です。さらに不着率が高かったりすると許可を剥奪されます。

Amazon SES(バルクメール送信サービス)を使ってメールを送信すると30%程度の不着率で数千件メールを送っただけで、許可を剥奪されてしまい、英文で釈明するはめになりましたので、非常に使いにくいかなあという印象です。

メールサーバーは別のサーバーを利用するなり、他社のサービスを利用するなりしたほうが良いかもしれませんね。このあたり改善を期待したいところです・・・

ほかにAWSが不向きなシステムとしては、大量の計算資源を継続的に使い続けるものですね。やはりその場合は、自前で構築する方がずっと安くなります。但し、大企業や官公庁が大手システムインテグレーターに依頼して構築・運用するよりはAWSの方が安いと思いますが。

例えば、動画配信など、継続して大量のストレージや回線を使う場合があるでしょうか。またHPC(スーパーコンピューター)なども継続してずーっと使い続ける場合も同様ですね。この場合は、色々とハードウェアやデータセンターの調達を工夫することで、自社調達すれば、AWSよりもコストを下げることができると思います。

弊社でも動画のストレージは自社で運用してますが、S3よりもストレージコストは大幅に割安です。そのあたりは工夫次第かと思います。

うまくAWSを使いこなしていくことが今後のシステムでは基本となることは間違いないと思います。AWSは他社に比べると機能や技術力で圧倒的に上をいっていますので、しばらくはAWSの圧倒的優位は揺らがないでしょう。

クラウド以外ですと、市販ソフトウェアやオープンソースソフトウェアで、AWSと同じような機能を謳う物はいろいろありますが、あまり信用しないほうが良いかと思います。実際はうまく動かなかったり、操作性や運用性が著しく悪かったりと、品質問題が多発しますので。

2013年3月24日日曜日

マーケティングは創業者の仕事である

経営の世界には「商品三分に売り七分」という言葉があります。製品開発よりも販売手法のほうがずっと重要だということです。

物があれば売れるという時代ではありませんので、ほぼすべてのビジネスにはマーケティングが非常に重要になります。(本稿ではマーケティングは顧客に商品を伝えるための方法すべてをさします。営業、広告、PR、SEO、ウェブサイト構築など)

企業はとにかくマーケティングを最優先に考えるべきです。

じゃあマーケティングを外注したり、担当者を雇えばいいのかというと、そうではなく、基本的には創業者がマーケティングに注力することが必要です。

当たり前ですが、どんなベンチャー企業でも、創業者よりも高いモチベーションと能力を持った人は雇うことができません。

そして中小企業の新規事業のマーケティングができる人など日本には数えるほどもいないでしょう。マーケティングの個別のスキル(PR、調査分析、従来媒体広告、ディスプレイ広告、キーワード広告)などに優れた人はいても、すべての領域にわたってすごいスピードで施策の実験を実施していける人というのは、あまりいないのではないでしょうか。

仮にそのような人が見つかったとしても、全社の経営戦略とマーケティングの整合性を確保するためには、創業者のマーケティングへの理解が不可欠となります。

商品のポジショニング、プライシング、セグメンテーション、ターゲティングや顧客開発プロセスなどは、単にマーケティング担当者のレベルでできることではなく、経営者レベルでの意思決定が欠かせません。

経営者・創業者がマーケティングを理解せずして会社を経営するというのは極めて無謀な行為であると考えます。

逆に、いかにマーケティングが大切であっても、中小企業にとって専任のマーケティング担当者を置くのはコストの面から正当化することは難しいかと思われます。少ない商品数と少ないマーケティング予算では、担当者はほとんどする仕事がなく、お手上げ状態になってしまうのではないでしょうか。顧客開発に成功し、資金調達して、大きなマーケティング予算を執行する段階になってから雇えばすむことです。

マーケティングとは企業の基本職務の一つであり、経営者は必ず基礎知識を理解しておく必要があります。ですから、創業時には、マーケティングは創業者が担当しましょう。

零細企業のやれるマーケティングなど、そんなに専門知識は必要ありませんから、ただただ超速でいろいろな打ち手を試すことが大事です。

もし自社製品を売っていくつもりなら、マーケティングに力を入れて、P&Gのようなマーケティングエクセレンスを目指しましょう。受託開発なら、まあ、マーケティングのことは忘れてもいいんじゃないですかね・・・

マーケティングなんて何一つ分からないという人はまず下の本をどうぞ。読みやすい本で、マーケティングの一分野である「ポジショニング」について概略が学べます。これを読むとマーケティングについて少し興味がわいてくるのではないかと思います。

(間違ってもコトラーを買わないように! あれは死ぬほど退屈で、まともに読めた代物ではありません)

2013年3月19日火曜日

【講演】自社サービスで成功する方法

先日の未踏カンファレンスで講演した内容のビデオとスライドをこちらにアップロードしておきます。参考になれば幸いです。

凡人が自社サービスで成功するための一つの方法について述べました。

ポイントとしては、
・顧客のニーズを探索しながら、現実を見て、事業を見直しながら発展させていく
・経営の経験値をあげながら、徐々に難しいことに挑戦していく
ということです。

twitterなどの反応を見ていると「新しい市場に挑戦してはいけないのか?」「斬新な製品や技術をベースに起業してはいけないのか?」という疑問の声がありました。答えとしては、2点あります。まず新しい市場への挑戦は難しいので、初心者(凡人)向きではないのです。また、新市場では、顧客のニーズが全く分からないので、その製品や技術をどのように顧客が必要とするか、顧客の声を真摯に聴きながら事業を進めなければいけないということです。

あと講演で触れるのを忘れたことで一つ大事なことがありました。それは「商品3分に売り7分」ということです。顧客と接して、顧客のために動く活動こそが企業にとって一番大事なことですから、創業者・社長が自ら顧客と接して営業活動をしていくことが必須です。そこを他人や他社に任せても絶対にうまくいきませんので!