IPv4アドレス枯渇対策として喧伝されているものに、IPv6があります。
私はIPv6が普及して使われるようになる可能性はこの期に及んでもまだ半々くらいと考えています。なぜならIPv6というプロトコルへの移行はきわめて難しく非経済的だからです。
IPv6は既存のネットワークと全く互換性がなく、移行のためにはハードウェアを買い換えたりソフトウェアをアップデートするだけでは足りず、新たなネットワーク設定を作成して運用するという膨大なコストが必要になるからです。
IPv4アドレスが大いに不足したとしても、依然としてIPv6を導入するインセンティブは働きません。なぜならIPv6を導入しても、IPv6だけではIPv4サイトに接続することはできず、接続のためには必ず一つのIPv4アドレスを必要とするからです。もしIPv4アドレスが一つでも入手できるのであれば、IPv6を導入する意味はありません。[1]
ユーザがIPv4にとどまりつづけるならば、サーバ側もわざわざコストをかけてIPv6へ移行することはしないでしょう。先日はIPv6デーというイベントが開催され、Googleなどの大手サイトが当日だけIPv6で接続可能にするという実験が行われました。ことここに至っても、たった一日だけしかIPv6を有効に出来ないことからも、IPv6のニーズのなさとコストの高さを印象づけるイベントとなりました。
そのような状態では、IPv4アドレスが入手できないインターネット事業者が、苦肉の策でIPv6でビジネスをしたとしても、ユーザが集まらずビジネスはうまく行かないでしょう。
このような全く互換性のないプロトコルを推進するのではなく、IPv4のオプションの形で拡張アドレスを定義して、末端のルータによってアドレス変換を行うような形で実装するべきでした。そうすれば少ない非互換性でアドレス枯渇問題に対応することができたのに!
IPv6の極めて高い非互換性を考えると、単純に「非互換」と言っても、非互換性の程度には大きな幅があるのだな、と考えさせられます。
IPv6の普及が遅々として進まず、批判が上がっていることを無視しても、強引にIPv6を推進しようとしているインターネット団体の人々はIPv4枯渇の戦犯と言ってもいいでしょう。
なぜIETF等の聡明な人々が「全てのインターネットのネットワークがIPv6に置き換えられる」という非現実的な期待を抱いたのか、私には理解できません。インターネットの構成員にたいして命令を強制することのできる人は、世界のどこにもいないのですから。
参考文献:
World IPv6 Dayは、2011年6月8日に開催予定で、まだ開催されていないはずですが...
返信削除http://isoc.org/wp/worldipv6day/