2011年8月29日月曜日

ベンチャー起業家が会社設立前に必ず読むべき本 - Venture Deals

米国のベンチャーキャピタリストBrad FeldとJason Mendelsonによる、つい最近出版されたばかりの書籍「Venture Deals: Be Smarter Than Your Lawyer and Venture Capitalist」は、ベンチャー起業家が必ず読むべき一冊です。

この本は、ベンチャー企業が投資を受けるとき、会社を売却するときに直面する契約条件などについて実践的な知識がふんだんに盛り込まれています。

皆さんは、米国の法律と事例に基づいた専門的なファイナンス契約に関する書籍を日本人起業家が読む必要があるのか、と疑問をお持ちになることでしょう。しかし、ここまで実践的な経験と知識に基づいて書かれた該博な本が、日本では出版されていないのですから、これを読むほかありません。

日本では「ベンチャー投資」という言葉だけが先行していて、それに関する知識もまったく流布されず、こうした実務に関する情報も殆ど皆無なのですから、現状は笑止千万としか言いようがありません。せめて一人でも多くこうした本を読んで、知識を身につけることを切に願います。この本が日本語に訳出されることを願いますが、読者層の少なさを考えると望み薄ですね。

ベンチャー起業家とは、VCから投資を受けて、IPOや会社売却を目指す起業家のことですが、もしあなたが投資を受けるつもりがなくても、誰かと会社を共同所有するのであれば、読む価値はあるかもしれません。

[以下やや逸脱]

企業や組織を他人と運営していくときに、もっとも大切なのはガバナンス(組織統治)の方法です。この本には、アメリカで実際に無数に試されてきたガバナンスの一つのベストプラクティスが載せられています。

株式会社などの設立時や投資時には、素人では、せいぜい持ち分の設定と取締役の選任をして終わりです。しかし、実際には、他にも取り決めておくべきことは沢山あります。とくに、新株発行(増資とストックオプション)についてのルールと、Vesting(創業者退任時の株式の買い取りルール)は、会社設立時や増資時に確実に書面にしておくべきでしょう。さもなくば、確実に揉め事の元になります。私もそれで何度もトラブルを経験しました。

また共同経営者にもこうした本を読ませるべきでしょう。日本ではガバナンスの知識が浸透しておらず、頭が良く優秀で誠実な経営者であっても、ひどく間違った考え方を持っている人もいます。株主の権利を軽視して、不当または不公平な増資を行うような不誠実な経営者が多くいます。そのために、まともな経営者ですらそうした行為を当たり前だと思うような始末です。

[逸脱おわり]

この本は、平易な英語によって書かれてはいますが、ベンチャー投資について事前知識がなければ読むのは難しいでしょう。あらかじめ磯崎氏の「起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと」を読んだり、TechCrunch等のブログを読んで米国ベンチャー用語について学んでおく必要があります。また、もちろん株式会社に関する常識的な知識も必要です。

私も、もっと会社運営の法的な実務と、ガバナンスの知識について学ぼう、という思いを持ちました。ちょっとしたことに気をつけるだけで、将来のトラブルを未然に防げるのですから。

以下、内容概略:

第1章: "Players". 起業家、ベンチャーキャピタリスト、エンジェル投資家、シンジケート、弁護士、メンターなどのベンチャー投資関係者についての概略。
第2章: "How to Raise Money". 投資を受けるための心構えや用意すべきプレゼン書類など。アーリーステージでは、実際に動くデモが重要であって、ビジネスプラン(とくに予測売上)は重要ではない。
第3章: "Overview of the Term Sheet". タームシート(投資条件についての合意書)の要素について。タームシートに金銭的な要素と会社支配権の要素がある。
第4章: "Economic Terms of the Term Sheet". タームシートの金銭的な要素について。価格、Liquidity Preference、Pay-to-play、Vesting、Employee Pool、Antidilution (稀薄化防止条項)。
第5章: "Control Terms of the Term Sheet". タームシートの会社支配に関する要素について。取締役の選任権、重要事項の拒否権、Drag-Along Agreement、転換権。
第6章: "Other Terms of the Term Sheet". タームシートのその他の要素について。これらの要素はそれほど交渉の余地はない。
第7章: "The Capitalization Table". Cap Table、すなわち会社価値、持ち分、株式数、株式購入金額などの表の計算方法。
第8章: "How Venture Capital Fund Work". ベンチャーキャピタルがどのような仕組みで動いているか、組織や運営原理についての説明。
第9章: "Negotiation Tactics". どのようにVCと交渉するか。
第10章: "Raising Money the Right Way". 投資を受けるときにやるべきでない6つのこと。これをやると、すごく素人くさく見えるし、場合によっては案件がぽしゃる。例: NDAを求めるな。一人ぼっちで起業するな。
第11章: "Issues at Different Financing Stages". 段階別の投資について。シードステージ、アーリーステージ、ミドル・レイターステージ。また転換社債を使った投資など。転換社債を使うと債務超過になるので、その期間の行為について取締役が法的責任を負う恐れがある。
第12章: "Letters of Intent - The Other Term Sheet". Letters of Intent (買収を受けるときの条件合意書)について。どのような条項があり、なにに気をつけるべきか。
第13章: "Legal Things Every Entrepreneur Should Know". 起業家が知っておくべき法的事柄について。知的所有権や雇用関係など。

参考:

2011年7月25日月曜日

RapidSSLの超柔軟なSSL証明書

SSL証明書というと、これまでは単に高額なだけでなく、サーバごとに一ライセンスが必要であったり、一年間~二年間ごとに更新しなければならなかったり、ホスト名ごとにライセンスが必要であったりしました。

しかし弊社でこないだ新しく導入したRapidSSLのSSL証明書は、最長5年間の有効期限、サーバ数無制限、さらにサブドメイン名が自由なワイルドカード証明書、と極めて柔軟でかつ激安な証明書でした。

これからのクラウド時代では、多数のサーバを組み合わせて使うことが一般的ですから、このような条件の証明書でないと運用コストが増大してしまいます。

クラウド時代に適した証明書を提供してくれているRapidSSLさんに感謝です。

最新のIntel CPUには、AES暗号化を高速化する機能も搭載されていますし、こうした安価な証明書と組み合わせれば、全通信をSSL暗号化するのが当たり前な時代が到来するかもしれませんね。

ただし、証明書発行業者の乱立により、悪者が証明書を入手しやすくなったりすれば、元も子もありません。とくに中国のような国家であれば、国家ぐるみで不正証明書を入手しようとしたりする可能性もあります。またCIAやFBIのような米国機関であれば、不正証明書を入手するなどお茶の子さいさいでしょう。不安な時代がやってきたものです。

また私の実体験では、中国ではSSLによる接続をあえて不安定にしたり接続不能にしたりして、市民の暗号通信を防いでいるようです。なぜ、このようにインターネットすら、まともに使えない国で商業活動をしようとする外国人が多くいるのか、私には理解出来ません。タイのようにもっと自由で発展中の国が多くあるというのに。

話がそれましたが、Rapid SSLさんの証明書、おすすめです! ぜひどうぞ。


英語本家サイトはこちら: http://www.rapidssl.com/

日本語の代理店も多くあるようです。

2011年7月22日金曜日

知的生産者にとっての福岡の魅力

先日の「福岡をシリコンバレーに」の記事では、福岡を辛く評しすぎた面もあるかもしれません。本稿では、福岡の魅力はなにか、その魅力をどう伸ばすべきかを考えます。

福岡の魅力はコンパクトで充実した都市の魅力です。世界的にも住みやすい都市としてランキングされるほどの魅力があります。以下に私が感じている魅力を挙げます。





  • 都市のサイズが小さく、家賃が安いので、都心に住んで、自転車でどこでも移動できる。
  • 巨大なジュンク堂がある。世界でも有数の巨大書店であるジュンク堂福岡店があります。
  • スターバックスが多数ある。福岡は世界でも有数のスタバ集積地帯です。
  • 魅力的な飲食店が多数ある。
  • 文化的魅力もそれなりにある。
  • 公園や海などが近くにある。

このように知的生産者(知的階級)にとって、これ以上ないという魅力的な条件が整っています。

自分が資本である知的階級にとって、通勤などの移動時間は大敵です。また大きな書店が必要であることは言うまでもありません。知的階級は、スタバなどのカフェで、読書や仕事を進めることも重要です。また知的階級は、魅力的な飲食店のない文化的でない街に住みたいなどと思いも寄らないでしょう。

文化都市(クリエイティブ都市)についての第一人者であるリチャード・フロリダは、自転車にフレンドリーで、チェーン店でない素敵な飲食店が数多くある都市こそが、知的生産者を引きつけると言っています。

福岡は、こうした魅力を活用して、日本で最も知的階級の集まる街とならなければ生き延びていくことは到底叶わないでしょう。


現在の福岡にもっとも欠けているものは、知的階級の集積です。福岡にも魅力的な条件は揃っているものの、日本では知的階級はすべて東京に行ってしまうので、福岡には知的階級が少ないのです。これを打破せねばなりません。

それには前回わたしが述べたようなシリコンバレー化計画を実施するとともに、福岡をもっともっと知的階級が住みやすい街にする必要があります!


まず、大名や今泉、警固、薬院、春吉といった中心市街地は、早急に歩行者中心の街に転換する必要があります。一方通行化や、タクシー空車の禁止、信号や一時停止の増加、歩道の拡充、自動車の通りにくい街作りをすることによって、歩行者が安全かつ快適にショッピングや飲食を楽しめる街にする必要があります。いまは歩くと危険が多すぎます。

文化面では大幅な拡充が必要です。現在の福岡は文化的に東京から大きく遅れています。行政は、音楽や芸術にもっと支援をしなければいけません。箱物は不要です。良いアーティストがいれば良いのです。NPO Tiempo Iberoamericanoのような素晴らしいNPOにも多額の資金をいますぐ投入すべきでしょう。またダンスクラブ特区などを作って、ダンスクラブ営業を適法化するなど、若者文化を振興する施策も必要です。

リチャード・フロリダは、ゲイ・フレンドリーな街が伸びる、と言っています。住吉のようなゲイ地区を、もっとアピールしてオープンなゲイ地区として外国人を呼ぶなどと言った方策はどうでしょうか。アジアでは、ゲイがオープンに楽しめる街は少ないので、特色を作り出すことができます。

禁煙条例などを策定して、都市全体の飲食店を禁煙にすることも必要ですね。知的階級はタバコを嫌いますからね。

もちろん「屋台」という福岡唯一の観光資源を捨てるなどあり得ないことです。規制を緩和して屋台を振興させねばなりません。福岡には他に観光資源など一つもないのですから。

行政はよく「福岡はアジアのゲートウェイ」などと言っていますが、アジアでの福岡の存在感など微々たるものです。この飛行機時代に地理的な近さなど何の意味もありません。もし本当にアジアのゲートウェイになりたいのであれば、ビザ緩和、雇用支援など、大幅な外国人招聘策が必要です。


私は、世界中いろいろなところに旅をしますが、最近「福岡から来ました」というと、「あのBachata en Fukuokaの街ですね!」と良く言われます。前述のNPOが招聘した、たった一人の世界的歌手が、福岡に感動して福岡の歌を作った、それによって福岡の名前が世界的に知れ渡ったのです。

既存産業に投資をしても、たった数億円~数十億円では、なんの成果もあがらないでしょう。しかし若者文化や知的階級に直接投資をすれば、数億円~数十億円とはすさまじい威力を持ったお金になります。いまこそ生きたお金を使うために何が出来るかを考えるべきです。

福岡をシリコンバレーに?

私はここ数年間、福岡市中央区に住んでいます。

福岡は住むには良い所です。日常の移動距離が短いため時間を有効活用でき、素晴らしい飲食店などの娯楽も多くあります。NPO Tiempo Iberoamericanoなどの素晴らしい団体のおかげで、日本有数の音楽文化環境に身を置くことができます。

さて、福岡では、東京とちがって行政と市民の距離が近く、福岡県職員の方々などとお会いしたりお話ししたりする機会があります。

福岡県ではIT産業振興のために色々な施策を行っています。「福岡Rubyビジネス拠点推進会議」などの団体を設立してRubyを振興したりと、色々な施策を実施しています。

我々の会社もその恩恵にあずかっており有り難いかぎりなのですが、政策の実効性という点ではいくつか改善点があるのではないかと考えます。

政策の目的と期待する効果をよりはっきりさせ、それを実現するための道筋と戦略を規定し、一貫した強力な政策を実施すれば、より大きな効果がでるはずです。それには、IT産業振興になにをすればいいのかをまず把握する必要があります。それについての私の考えを以下に述べます。

先進国における新産業振興は、発展途上国における産業振興とは大きく異なります。資本を投入してキャッチアップをすればよい時代から、資本が余っており超高度な知的職業人が足りない時代に変わっているわけです。

先進国では、ほぼ全ての産業で供給過剰であり、新規参入者は需要をつかむために大きな困難に直面しています。それを乗り越えるためには、イノベーションにより新たな需要を作り出さなければいけません。そのためには資本ではなく、特別な才能をもった知的職業人が必要なのです。[1]

アメリカを代表するベンチャー企業育成家であるPaul Grahamは、第二のシリコンバレーを作るには、住みやすくて文化的な土地に、多くの優秀な人材を引っ張ってくれば良い、と言っています。[2]

福岡の最大の弱点は、まさにその知的人材の質と量にあります。

残念なことに、福岡では優秀で意欲ある人材が定着しないのです。定着しない理由としては、良い就職先がないこと、他に優秀な仲間がいないこと、などがあげられます。良い就職先ができない理由の多くは、良い人材がいないことなので、悪循環の状況にあると言えます。

良い就職先を増やすためには、良い人材が必須ですが、良い人材は、予算さえあれば直ちに増やすことができます。それこそが行政が行うべき施策なのです。

たとえば英語がきちんとできて、高い技術力やビジネス能力をもった人材が多くいるのであれば、企業はすぐにでも進出してくるでしょう。いまの福岡では、東京にごろごろいるような「英語がきちんとできて、なにか技術やビジネスで一流のスキルを持った人材」が全くいないのが現実です。

それどころかプログラマーのレベルを見ても、東京で活躍しているような高度なスキルを持った人は殆ど居ないのが現状です。

残念ながら、そうした人材を教育で増やそうとしてもうまくいきません。福岡の技術者やビジネスパーソンは、そもそもモチベーションが低く、目標をきわめて低く設定しているからです。また私のこれまでの経験では、素晴らしい人材が発掘されたとしても、すぐに東京などに引き抜かれてしまうのが実情です。

この悪循環に終止符を打つには、無理矢理にでも世界中から優秀な人材を集めてきて、囲い込みを行うしかありません。

ITなど、何か一つの領域に的を絞って、世界中から優秀なベンチャー起業家を集めてくるのです。一流の成功した人間や一流企業を集めてくるのは大変ですが、これから成功を狙っている起業家であれば、すぐに集めることができます。

先述のPaul Grahamが運営しているY Combinatorにならって、自分自身の起業経験が豊富なベンチャー育成家によって、日本中、いや世界中から集めた優秀な人たちに投資をして、その人々に必ず福岡に住んでもらうのです。いっそのことPaul Grahamに福岡に来てもらうのもいいでしょう。

そのかわり、条件として、週に一度くらい外部の人を交えた交流会を行うか、そうした会に参加してもらうこととします。それによって福岡人の目を覚まします。また、面白い人が集まっているという風評によって、福岡に呼び寄せられてくる人もいるでしょう。

福岡には九州大学のような国立大学もありますから、優秀な起業家の活躍によって皆が目覚めれば、優秀な人材が輩出され、福岡に定着することになるでしょう。

ベンチャー起業家を集めるには、一人当たり年間数百万円の投資で十分です。優秀な人々を福岡に呼んで、そのうえ彼らが成功すれば、お金は帰ってくるのですから、これほどお得な投資はありません。

いまどきのITベンチャーは、事業の費用が極めて低いのです。そのため大勢の優秀な人を、生活費レベルで呼び寄せることができます。これがバイオベンチャーとなると、一社が最低限スタートするだけでも数億円ですから、話は大きく違ってきます。

一人年間600万円で100人に投資をして、たった6億円。運用費とプロジェクトマネージャ数人への報酬を払っても10億円以下です。福岡県さん、福岡市さん、どうでしょうか? やりませんか?

参考文献:
  1. クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭、リチャード・フロリダ
  2. How to be Silicon Valley, Paul Graham

2011年7月11日月曜日

マクロ経済学 - ポール・クルーグマン

私は、なにかの学習をするときは、基本的にアメリカ人の書いた大きな教科書を使って学ぶことにしています。アメリカの学者は、教科書を書くことに大変な重きを置いていて、とにかく詳細で分かりやすい教科書を苦心して書こうとするので、日本の教科書とは比べものになりません。

本書は、ノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンが書いたマクロ経済学の教科書です。ポール・クルーグマンは、ニューヨークタイムズのコラムニストとしても有名で、文筆の才能にも恵まれています。そのため、この教科書も極めて分かりやすく、経済学の素人が読んでも理解することができるでしょう。

マクロ経済学という学問は、普通の人が生きていく生活上ではあまり関係のない学問です。なぜなら、この学問は、国の経済など、大きな規模の経済の動きについて学ぶものだからです。ミクロ経済学は、経営者やビジネスマンにも関係があることを学びますが、マクロ経済学はそのような意味で役に立つことはないでしょう。

では、私はなぜマクロ経済学を学んだのでしょうか?

それは、一人の有権者として、国政に票を投じ、国政を論ずるためには、最低限のマクロ経済学の知識がなくてはならないからです。

世の中には、わかったような顔をして、国政についてああでもないこうでもないと論じる人々が多くいます。しかし、その多くは、経済学を少しでも学んだ人間からすれば笑止千万の幼稚園レベルの議論なのです。そうした轍を踏まないために、本書を読みました。もちろん本書のような学部レベルの知識だけで、国政を論じるには足りませんが、少なくとも大きな誤りには気づくことができます。

私は、マクロ経済学というと、IS-LMモデルなど複雑怪奇な抽象論や数式が多数でてくる印象を持っていました。しかし、本書には数式は殆ど出てきませんし、IS-LMモデルのような複雑な話も少しも登場しません。あくまで一般常識、一般教養レベルで、簡単に読みこなせる内容です。

もし国政について少しでも興味があるのなら、ぜひマクロ経済学を学んでみませんか? なるべく毎日読めば1~2ヶ月もあれば読み終えることができると思います。



ミクロ経済学もあわせてどうぞ。

2011年5月17日火曜日

ダイレクト・マーケティングの実際

世の中にマーケティングの本は数多くありますが、私がこれまで読んだ数十冊のなかで感動した本は一冊だけです。それが本書「ダイレクト・マーケティングの実際 (日経文庫)」です。

本書は1987年に書かれた本で、内容には古びた点が数多くありますが、それでもベストの本であると自信をもって言うことができます。

なにが良いかというと、本書ではダイレクト・レスポンス・マーケティングという一分野に絞って、実際に実践できるだけの具体的な知識を数多く書いていることです。他書は概要レベルに止まるのに対して、本書はコンパクトなのにもかかわらず実用レベルと言えます。

著者のルディー和子さんは、エスティ・ローダーのマーケティングマネジャー、タイム社のダイレクトマーケティング本部長などを務めたバリバリの実践派の方です。それが本場アメリカのダイレクトマーケティングの実践知識を本書に詰め込んだのだから、非常に有意義です。日本では未だにこのレベルの実践ができている会社は少ないのではないでしょうか。

ダイレクト・マーケティングが通常のマーケティングと異なるのは、直接に反応を得ることができるということです。広告や販促の効果を計測し、データに基づいた販売ができるということです。この概念は、インターネット時代になり、重要性がさらに高まっています。

実験と統計学に基づいた科学的な経営は、これからさらに重要になってくるでしょう。本書には統計表なども載っていますので、統計学の知識がなくても経営に統計を活かすことができます。

皆さんがダイレクト・マーケティングを行っていないとしても、全ての経営者とマーケターにとって必読の一冊であると言えます。本書から科学的経営、科学的マーケティングのエッセンスを学ぶことができるでしょう。

経営書の多くは概念的な本であり、実際の経営にすぐ役立てられない本ばかりです。逆に、通俗経営本のたぐいは、断片的な知識だけであり、大局観をもった科学的な経営の役には立ちません。

本書のような素晴らしい経営書がもっと出てくることを望むばかりです。

とっくの昔に絶版ですが、amazonマーケットプレースで安く購入可能ですので、至急いますぐ購入を!

2011年5月16日月曜日

福翁自伝

福翁自伝福澤諭吉の自伝です。

たまたまジュンク堂で旅行用に携帯しやすい文庫本を探しているときに見つけました。とりたてて福澤諭吉に興味があるわけではないのですが、私は歴史が好きですし、口語体で現代かな遣いで印刷も新しく読みやすそうなので、これを買いました。

私は福澤諭吉に特段興味が無かったのですが、本書を読んですっかりファンになりました。本書は福澤諭吉が口語体で書いた唯一の長篇と言われており、非常にユーモアに富んだ語り口で、現代人にとっても極めて読みやすいものです。ユーモアと、その自由な精神が非常に魅力的です。

福澤諭吉を一言で表すとしたら「独立自尊」でしょう。

幕末から明治期という、政府について大きな仕事をしよう、会社をつくってボロ儲けしようという人々が大勢いるなかで、福澤諭吉はひたすら自分を信じて学問に励み、そして政府の誘いを断って民営の学校として慶應義塾を運営していきます。

お金にはあまり興味はないようですが、慶應義塾の分校をどんどん作り拡大していったり、既存の出版社があまり役に立たないと見るや、自分で出版社を作って自著の印刷製本を行ったり、新聞社を設立したり、事業意欲には満ちあふれています。

暗殺の恐怖におびえて隠れて過ごしたり、さっさと武士をやめてしまったり、福澤諭吉は、我々がいま想像する武士や侍のありかたとは大きく異なっています。政治闘争に奔走する志士とは全く違うやり方で大きな成功を収めた点が興味深いものです。

とにかく組織に属することを嫌い、独立と自由を愛した福澤諭吉の生き方は、いまの日本人にとって最も必要なロールモデルだと考えます。このような人々が多くいれば、日本も確実に良くなるでしょう。

次は「学問のすすめ」も読んでみようと思います。こちらは文語体なので、少し読みにくそうですが....