2011年7月22日金曜日

福岡をシリコンバレーに?

私はここ数年間、福岡市中央区に住んでいます。

福岡は住むには良い所です。日常の移動距離が短いため時間を有効活用でき、素晴らしい飲食店などの娯楽も多くあります。NPO Tiempo Iberoamericanoなどの素晴らしい団体のおかげで、日本有数の音楽文化環境に身を置くことができます。

さて、福岡では、東京とちがって行政と市民の距離が近く、福岡県職員の方々などとお会いしたりお話ししたりする機会があります。

福岡県ではIT産業振興のために色々な施策を行っています。「福岡Rubyビジネス拠点推進会議」などの団体を設立してRubyを振興したりと、色々な施策を実施しています。

我々の会社もその恩恵にあずかっており有り難いかぎりなのですが、政策の実効性という点ではいくつか改善点があるのではないかと考えます。

政策の目的と期待する効果をよりはっきりさせ、それを実現するための道筋と戦略を規定し、一貫した強力な政策を実施すれば、より大きな効果がでるはずです。それには、IT産業振興になにをすればいいのかをまず把握する必要があります。それについての私の考えを以下に述べます。

先進国における新産業振興は、発展途上国における産業振興とは大きく異なります。資本を投入してキャッチアップをすればよい時代から、資本が余っており超高度な知的職業人が足りない時代に変わっているわけです。

先進国では、ほぼ全ての産業で供給過剰であり、新規参入者は需要をつかむために大きな困難に直面しています。それを乗り越えるためには、イノベーションにより新たな需要を作り出さなければいけません。そのためには資本ではなく、特別な才能をもった知的職業人が必要なのです。[1]

アメリカを代表するベンチャー企業育成家であるPaul Grahamは、第二のシリコンバレーを作るには、住みやすくて文化的な土地に、多くの優秀な人材を引っ張ってくれば良い、と言っています。[2]

福岡の最大の弱点は、まさにその知的人材の質と量にあります。

残念なことに、福岡では優秀で意欲ある人材が定着しないのです。定着しない理由としては、良い就職先がないこと、他に優秀な仲間がいないこと、などがあげられます。良い就職先ができない理由の多くは、良い人材がいないことなので、悪循環の状況にあると言えます。

良い就職先を増やすためには、良い人材が必須ですが、良い人材は、予算さえあれば直ちに増やすことができます。それこそが行政が行うべき施策なのです。

たとえば英語がきちんとできて、高い技術力やビジネス能力をもった人材が多くいるのであれば、企業はすぐにでも進出してくるでしょう。いまの福岡では、東京にごろごろいるような「英語がきちんとできて、なにか技術やビジネスで一流のスキルを持った人材」が全くいないのが現実です。

それどころかプログラマーのレベルを見ても、東京で活躍しているような高度なスキルを持った人は殆ど居ないのが現状です。

残念ながら、そうした人材を教育で増やそうとしてもうまくいきません。福岡の技術者やビジネスパーソンは、そもそもモチベーションが低く、目標をきわめて低く設定しているからです。また私のこれまでの経験では、素晴らしい人材が発掘されたとしても、すぐに東京などに引き抜かれてしまうのが実情です。

この悪循環に終止符を打つには、無理矢理にでも世界中から優秀な人材を集めてきて、囲い込みを行うしかありません。

ITなど、何か一つの領域に的を絞って、世界中から優秀なベンチャー起業家を集めてくるのです。一流の成功した人間や一流企業を集めてくるのは大変ですが、これから成功を狙っている起業家であれば、すぐに集めることができます。

先述のPaul Grahamが運営しているY Combinatorにならって、自分自身の起業経験が豊富なベンチャー育成家によって、日本中、いや世界中から集めた優秀な人たちに投資をして、その人々に必ず福岡に住んでもらうのです。いっそのことPaul Grahamに福岡に来てもらうのもいいでしょう。

そのかわり、条件として、週に一度くらい外部の人を交えた交流会を行うか、そうした会に参加してもらうこととします。それによって福岡人の目を覚まします。また、面白い人が集まっているという風評によって、福岡に呼び寄せられてくる人もいるでしょう。

福岡には九州大学のような国立大学もありますから、優秀な起業家の活躍によって皆が目覚めれば、優秀な人材が輩出され、福岡に定着することになるでしょう。

ベンチャー起業家を集めるには、一人当たり年間数百万円の投資で十分です。優秀な人々を福岡に呼んで、そのうえ彼らが成功すれば、お金は帰ってくるのですから、これほどお得な投資はありません。

いまどきのITベンチャーは、事業の費用が極めて低いのです。そのため大勢の優秀な人を、生活費レベルで呼び寄せることができます。これがバイオベンチャーとなると、一社が最低限スタートするだけでも数億円ですから、話は大きく違ってきます。

一人年間600万円で100人に投資をして、たった6億円。運用費とプロジェクトマネージャ数人への報酬を払っても10億円以下です。福岡県さん、福岡市さん、どうでしょうか? やりませんか?

参考文献:
  1. クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭、リチャード・フロリダ
  2. How to be Silicon Valley, Paul Graham

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