2011年12月9日金曜日

海と物流の物語たち

今回は、海にまつわる物流の物語を書いた本を3冊ご紹介します。


コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった」は、現在のグローバル経済の礎となっているコンテナ海運の歴史について語った本になります。

コンテナ物流は、アメリカの一人の小さなトラック運送業者によってスタートされました。

それまでの物流というと、すべてバラで小さい荷物を船などの輸送手段に積み込んでいました。そのために船が港に着くたびに、数多くの港湾労働者が船にむらがり、一つ一つ手作業で荷物を運んでは積み替えていました。そのためにかかるコストと時間は膨大なもので、それが輸送を非効率的にしていました。また、そのさいに盗難や紛失、破損なども無数に発生していました。

コンテナが登場したことで、船の荷物の搭載や引き下ろしは巨大なクレーン(ガントリークレーン)によって一瞬で終わる時代になりました。コンテナは施錠されており、荷物が盗まれる危険性も減っています。港に着いた船は数日で出航してしまうので、船乗りも港で浮き名を流す暇すらない、というわけです。

いまやほとんどの荷物は、コンテナによって工場から目的地まで一気に輸送されます。超大型の船により、多数のコンテナを大型港から大型港へと安価に輸送できるようになりました。そのために物流のコストは大きく下がり、グローバル経済の時代をもたらしました。

コンテナという「単なる箱」の発明が世界を変えたのです。

この「単なる箱」が世界の物流を一変させるまでには、無数の抵抗勢力の抵抗にあいます。また発明者のビジネスも、自らがもたらした海運業界の熾烈な競争と価格低下の渦に巻き込まれてしまいます。

この本は、ちょっと中だるみする箇所もありますが、全般として分かりやすく良く書かれており、一流の経済史の本ということができます。とても読みやすく、グローバル物流の成り立ちについて知ることができますので、起業家やビジネスマンにはお勧めの一冊です。


築地」はアメリカ人の人類学者が築地市場でフィールドワークを行って書いた人類学の書籍です。

若い頃、日本に留学していた彼が、近所の鮨屋のなじみになり、築地市場での仕入れに同行させてもらう、引き込まれるような魅力的な導入部から話がスタートします。

この本では、市場の歴史や人物模様や情景などが、躍動感たっぷりに、これでもか、と言わんばかりに細かく描写されています。

はっきりいって分厚くて、読みにくい箇所も多々あるので、読書マニア以外にはお勧めできませんが、読書マニアにとっては秋の夜長にぴったりの一冊です(もう冬だけど)。築地市場の運営がどのように行われているかなど、知らなくても人生に全く影響ないようなどうでもいい雑学に詳しくなることができます。

とりあえず書店で手に取ってみて、導入部だけでも読んでみると、ついつい全部読みたくなってしまうかもしれませんよ。


スシエコノミー」はアメリカ人のジャーナリストが、寿司がいかに世界に普及して、魚介類の生産・物流・消費のスタイルを如何に変えてきたかを描いた本です。

日本での握り鮨の歴史から、テキサス州オースティンで鮨屋を経営する白人男性の板前の話、初めてカナダからマグロを日本へ空輸したビジネスマンの話まで、魅了されるような物語が詰まっています。

テキサス州でちゃんとした鮨屋を経営するためには、良い魚は全て築地から空輸で仕入れなければならないのだそうです。航空便で品物が届いてみるまでどんな質かわからない、そんなリスクを抱えながらも、良い鮨を出そうと奮闘しています。

この本は前二冊とは打って変わってジャーナリストが書いたポップな本ですので、ちょっと気分転換にでも気軽に読むことができる一冊です。なかなか良い本です。

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