2013年10月15日火曜日

いまごろになって原発問題をまとめるよ

わたしは現在のところ、原発反対派でも賛成派でもないですし、議論が過熱している間は、議論に参加する気もありませんでした。

そろそろ議論も収まってきたようですが、単に皆が飽きてしまっただけで、議論の質が高まらないまま関心が薄れたなぁ、と危惧しています。こないだCourseraでA Look at Nuclear Science and Technologyという授業を受講したりしたこともあり、ちょっと論点を整理してみようかと思いました。

まず原発の議論のうち、主要な論点は以下のようなものになると思います。

  1. 原発は地球温暖化対策としては現在、最も有力である。
  2. 福島原発事故は、日本社会や地域社会に対して、深刻な経済的・精神的な打撃を与えたし、同じようなことが二度と起こってはならないのは間違いない。
  3. 既存の原発は、多かれ少なかれ福島第一と同じようなリスクを持っているであろうし、それがどれくらい対処可能なのかどうかよくわからない。
  4. 既存の原発は、多額の建設費をかけて作られたものであり、それを廃炉にすれば、日本社会は何らかの形でその膨大な費用(償却損・それを一時的に代替する低効率の火力の燃料費・廃炉費用・温暖化対策費用など)を負担することになる。
  5. 使用済み燃料の最終処分や、廃炉費用がどれくらいになるのか、いまいちよくわかっていない。
一つ目の点ですが、原発は温暖化対策として現時点では最も有力であることは間違いないと思います。どこにでも建設することができ、膨大なエネルギーを生み出すことができます。太陽光発電、風力発電、地熱発電などは、まだそれだけの発電能力を持っていないと思います。

将来的には太陽光発電や地熱発電はかなり有望だと思われますが、まだいつごろ物になるのかよくわかっていません。今から新エネルギーの実証実験や研究開発への力強い投資を行っていくことは望ましいと思いますが、それを実用の発電手段とするのは時期尚早のように思います。

またそうした新エネルギーが物にならなかったときのリスクを考えれば、原発技術の研究開発や実証実験が止まることがあってはなりません。地球温暖化による災禍は、科学者たちの発言が正しいのならば、原発事故よりも大きなものになることでしょうから。

二つ目の点ですが、福島原発事故では幸いにして放射線障害により多数の人が死ぬようなことはありませんでしたが、避難による間接的な健康被害や、経済的被害、精神的被害などを考えれば、損失は膨大であり、決して二度とこのようなことが起こってはならないのは明白です。今になって、あの日の衝撃を忘れて、事故を矮小化するような態度は決して正当化されるものではないでしょう。

3点目ですが、既存の原発は多かれ少なかれ、福島第一事故のようなリスクを持っていることは確実でしょう。それがどれくらい対策が可能なのか、十分なリスク低減が行えるのか、私には良く分かりません。電源喪失はある程度の対応が可能としても、冷却剤喪失など他にもリスクはあるように思います。

これに関しては、多方面の科学者などが様々な立場から検証に当たるべきであろうと思います。とくに旧式の炉に関しては、厳しく安全性が検証されるべきでしょう。

これから新設する原発であれば、安全基準を高めて、リスクを数桁減らすようなことは可能と思いますが、そのような原発が経済的に見合うものなのかどうかの疑問があります。

4点目ですが、既存の原子炉を停止したり、廃炉したりすれば、その原子炉の持っている生産能力は無駄になることになり、膨大なコストが生じます。そのコストを一次的に誰が負担するとしても、最終的には国民全員にツケが回ります。

そのツケが回る額がどれくらいになるのか、それを踏まえた上でなければ、原発再開または廃止に向けた議論は空論となるのではないでしょうか。

最後に5点目ですが、原発のコストを新エネルギーなどと比較する上で、原発の放射性廃棄物や廃炉の最終コストがどれくらいになるのか良く分かってないのは、大きな問題であると思います。

早期に最終処分場を完成させ、試しに旧式炉を一つ二つ廃炉にしてみるべきでしょう。そのデータがなければ、議論が成立しませんから。


原子力科学の授業を受けて思いましたが、原発は非常に複雑なシステムですし、社会的にみてもその安全性や経済性の議論もなかなか複雑であるように思います。

しかし基本的な論点はこの5つに絞られるのではないでしょうか。こうした論点を踏まえた上で、建設的な議論ができれば良いですね。

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