2011年5月17日火曜日

ダイレクト・マーケティングの実際

世の中にマーケティングの本は数多くありますが、私がこれまで読んだ数十冊のなかで感動した本は一冊だけです。それが本書「ダイレクト・マーケティングの実際 (日経文庫)」です。

本書は1987年に書かれた本で、内容には古びた点が数多くありますが、それでもベストの本であると自信をもって言うことができます。

なにが良いかというと、本書ではダイレクト・レスポンス・マーケティングという一分野に絞って、実際に実践できるだけの具体的な知識を数多く書いていることです。他書は概要レベルに止まるのに対して、本書はコンパクトなのにもかかわらず実用レベルと言えます。

著者のルディー和子さんは、エスティ・ローダーのマーケティングマネジャー、タイム社のダイレクトマーケティング本部長などを務めたバリバリの実践派の方です。それが本場アメリカのダイレクトマーケティングの実践知識を本書に詰め込んだのだから、非常に有意義です。日本では未だにこのレベルの実践ができている会社は少ないのではないでしょうか。

ダイレクト・マーケティングが通常のマーケティングと異なるのは、直接に反応を得ることができるということです。広告や販促の効果を計測し、データに基づいた販売ができるということです。この概念は、インターネット時代になり、重要性がさらに高まっています。

実験と統計学に基づいた科学的な経営は、これからさらに重要になってくるでしょう。本書には統計表なども載っていますので、統計学の知識がなくても経営に統計を活かすことができます。

皆さんがダイレクト・マーケティングを行っていないとしても、全ての経営者とマーケターにとって必読の一冊であると言えます。本書から科学的経営、科学的マーケティングのエッセンスを学ぶことができるでしょう。

経営書の多くは概念的な本であり、実際の経営にすぐ役立てられない本ばかりです。逆に、通俗経営本のたぐいは、断片的な知識だけであり、大局観をもった科学的な経営の役には立ちません。

本書のような素晴らしい経営書がもっと出てくることを望むばかりです。

とっくの昔に絶版ですが、amazonマーケットプレースで安く購入可能ですので、至急いますぐ購入を!

2011年5月16日月曜日

福翁自伝

福翁自伝福澤諭吉の自伝です。

たまたまジュンク堂で旅行用に携帯しやすい文庫本を探しているときに見つけました。とりたてて福澤諭吉に興味があるわけではないのですが、私は歴史が好きですし、口語体で現代かな遣いで印刷も新しく読みやすそうなので、これを買いました。

私は福澤諭吉に特段興味が無かったのですが、本書を読んですっかりファンになりました。本書は福澤諭吉が口語体で書いた唯一の長篇と言われており、非常にユーモアに富んだ語り口で、現代人にとっても極めて読みやすいものです。ユーモアと、その自由な精神が非常に魅力的です。

福澤諭吉を一言で表すとしたら「独立自尊」でしょう。

幕末から明治期という、政府について大きな仕事をしよう、会社をつくってボロ儲けしようという人々が大勢いるなかで、福澤諭吉はひたすら自分を信じて学問に励み、そして政府の誘いを断って民営の学校として慶應義塾を運営していきます。

お金にはあまり興味はないようですが、慶應義塾の分校をどんどん作り拡大していったり、既存の出版社があまり役に立たないと見るや、自分で出版社を作って自著の印刷製本を行ったり、新聞社を設立したり、事業意欲には満ちあふれています。

暗殺の恐怖におびえて隠れて過ごしたり、さっさと武士をやめてしまったり、福澤諭吉は、我々がいま想像する武士や侍のありかたとは大きく異なっています。政治闘争に奔走する志士とは全く違うやり方で大きな成功を収めた点が興味深いものです。

とにかく組織に属することを嫌い、独立と自由を愛した福澤諭吉の生き方は、いまの日本人にとって最も必要なロールモデルだと考えます。このような人々が多くいれば、日本も確実に良くなるでしょう。

次は「学問のすすめ」も読んでみようと思います。こちらは文語体なので、少し読みにくそうですが....

2011年5月14日土曜日

週四時間だけ働く

連休中は海外旅行に行っていました。そこで読んだ二冊の本が、福翁自伝と、「週4時間」だけ働くです。この二冊はたまたま意外と似通った主張を持った本であったことが面白い点です。どちらも「独立」がテーマである点で共通しているのです。

本稿では、まず「週四時間だけ働く」をご紹介します。


「週四時間だけ働く」は翻訳された当時は結構な話題となったようです。いかにして自分の働く時間を減らしていくかという本です。そのためにアウトソースを活用したり、雑用などを減らしたりしていくことが載っています。

私は、現在推進中のメイシーという事業では、小林というパートナーと一緒に仕事をしています。が、新規事業をやるにあたり、小林が既存事業の運営で手一杯のため、次は久しぶりに自分一人で推進することになりました。

一人で事業を推進するためには、とにかく雑用や人との面会などを極限まで減らす必要があります。もし雑用をしていたら、事業戦略や研究開発に十分集中できなくなって、私の強みを活かすことができません。

そのために本書を読んで、週四時間の考え方や実践法を学ぶことにしました。本書は、自己啓発本的な要素と、事業の構築法、事業の自動化方法などの実践的な要素が、半々くらいの割合で混ざっています。いかにもADHDの人が書いたような飛び飛びの本で、すこしごちゃごちゃしてるのですが、読みにくい本ではありません。

本書の主張は、以下のようなものです。

1.とにかく雑用や不要なタスクを減らせ、断れ。そして自由を勝ち取って旅行しまくれ!
2.自分の事業や副業を立ち上げて、それをITやアウトソースを活用して完全自動化しろ! そうすれば一切働かなくても金が入ってくる。

いかにも怪しい主張です。普通の人がこれを読んで真似をしてもうまくいくかどうか定かではありません。しかし事業家にとっては非常に役立つ考え方が多いと思います。しばしば雑用に埋もれてしまい、本来、社長がやるべき重要な仕事ができてない人が多いですから。

本書の著者の事業では、秘書、サポートセンター、物流(フルフィルメント)などを全てアウトソースすることで、自分はマーケティングだけに注力すれば良いという仕組みになっています。アメリカはアウトソース先進国なので、容易にここまでのことができるようですが、日本でもこうした仕事のアウトソース先は色々あるだろうと思います。

ITの世界で普及してきたelanceodeskのようなクラウドソーシングも紹介されています。

とくに面白いと思ったのは、秘書をインドにアウトソースする方法です。個人的な秘書から、ビジネス上の秘書まで、オンラインで完結する仕事はすべてインドにアウトソースできるとのことです。これは英語圏ならではの強みですね。

マーケティングについては、ダイレクトレスポンスマーケティングの初歩が説明されています。ダイレクトマーケティングについては、稿を改めて良い本を紹介したいと思います。

こうした工夫を活かすことで、著者の事業では一人も従業員を雇うことなく成功を収めています。

経営者には一読の価値のある本です。経営者でない人も、独立心を養うために読んでみても良いかもしれません。