第一章では、価格が利益に与える重要性、価格の経営での重要性について述べている。
第二章の、価格と競争戦略の関係性についての論文はとりわけ気づきに満ちている。各社の製品は、価値と便益をプロットしたとき、価値均衡線(VEL)という直線上に位置している。すなわち各製品の価値と便益のバランスは均衡しており、どれも同じバリューを持っているということになる。
もし一社が製品を改良したのに価格をあげなかったり、一社が値下げを行ったりすると、VELのバランスが崩れ、他社も対抗値下げに走ろうとする。
企業側が認知する価値と便益は、必ずしも顧客が認識するものとは一致せず、その認識が誤っているとバリューが多すぎたり少なすぎたりする製品を提供してしまい失敗する。
中間のいくつかの章では、商品の定価から、値引きやサービスなどを含んだ実際に販売される金額(ポケットプライス)がいかに異なるか、それをマネジメントすることの重要性を説いている。
企業は、大口顧客に高い値引率を提示しているつもりでいるが、しばしば値引率と購買数量には相関が無く、取引コストや利益率からみて不適切な値引きが行われている。
またポケットプライスの幅であるプライスバンドを適切に管理している企業は少ない。ポケットプライスに幅をもたせることで、本当に売上や利益が向上しているのか、なにが意味のある値引きや販促であるのか、再考する必要がある。
第七章では、新製品の値付けをするさいのTipsが書かれている。新製品の価格は設定できる下限価格ではなく、上限価格から考えるべきであり、新製品の便益を顧客が理解した上でいくらまで払えるかを綿密に調査すべし、と説いている。私の経験では、多くの企業は新製品を安くしすぎて失敗すると考えており、この章の気づきは重要である。しかし本章は非常に短いので物足りない印象を受けた。
本書は、マッキンゼー執筆だけあって全体的にレベルが高い気づきに満ちている。対象的にはスタートアップ向けというよりは、すでにビジネスが回っている企業、とくに製造業などに向いている内容であると思う。
一本ずつの記事はレベルが高いが、論文集であり、他の仕事を放ってまで読む必要があるほどの本ではない。ハーバードビジネスレビューを読むような感覚で、時間のあるときに気軽に読んでみれば良いのではないだろうか。
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