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2015年7月27日月曜日

意外と難しいSaaSの料金体系。どのようにすべきなのか?

新規ビジネスにとって料金設定(プライシング)というのは最も難しい悩みの一つだと感じます。料金設定を間違えてしまえば、どれだけ優れた商品であっても失敗してしまいます。

とくにSaaS(クラウド型ソフトウェアサービス)の料金設定は、まだ各社ともに試行錯誤ともいえる状況で、参考に出来る情報なども少ないように思います。

SaaSの料金体系には、ざっと思いつくだけで以下のような方式があります。
  • 初期費用
  • 月額費用
  • IDあたり費用
  • データ量あたり費用
  • 使用回数あたり費用
  • その他の従量費用
  • 料金プラン制

このなかで、罠と言えるのが「IDあたり費用」ではないかと思います。

ユーザIDの数が、ソフトウェアの利用価値と直結しているようなソフトウェアであれば、ユーザIDで課金することには合理性があります。しかし単純な顧客管理ソフトウェアなどは、アカウントを複数人で共有しても価値があまり変わらず、ユーザ数単位で課金することは顧客にとって納得性が低いものになります。

ソフトウェア業界の慣習としてユーザ数課金が行われてきましたが、多くのユーザが様々なデバイスからソフトウェアを利用する時代に、ユーザ数課金はそぐわない場合もあるかと思います。


さて、ここで可変的な料金設定にはどのような意味があるのかを基本から考えてみましょう。

IaaSと異なりSaaSでは、多くの場合は、ユーザの利用量によってコストが大きく変わるというわけではありません。

そのため顧客の利用パターンによって料金を変えるのは、より多くのお金を払っても良いと思う顧客から、より多くのお金を取るという意味になります。いわゆる価格差別やバージョニングと言われる概念です。(詳しくは「ネットワーク経済」の法則を参照)

通常は、顧客が得られる価値によって価格を変えるのが適切と思われます。

すなわち、もしユーザアカウントを増やすことによって価値が得られないのであれば、ユーザアカウントによって課金するべきではない、ということです。


データ量による課金や、従量制課金には、問題点として、どれくらいの料金がかかるのか前もってわかりにくいとか、複雑だということがあるかと思います。

データ量による課金とは、例えば、名刺管理ソフトなら、保有できる名刺データの最大枚数とか、そういったもので課金する方式です。これだと、活用している程度によって金額が変わるので、ある程度の納得感があります。

妥当性をもった予測可能な価格設定になっていれば、利用料金が変動すること自体は問題がないのではないかと感じます。(メイシーでの経験上)


料金プランの設定には注意が必要です。最近流行のSaaSですと、よく上中下みたいな3プランを用意しているものが多く見受けられます。

しかし、多様な顧客の要望にほんとうに3パターンだけで応えられるものでしょうか?

上中下で、上が月額5万円、中が月額1万円、下が月額2千円などとなると、あまりにギャップが開きすぎていて、そのあいだを望む顧客は失望することでしょう。

私は実際にOptimizelyというサービスを昔に使っていまいたが、料金プランに納得感がなくて利用継続をやめました。

複雑な料金体系であっても、細かい価格設定によって、納得感のある支払ができるようにしたほうが顧客のニーズに応えられると思います。

なぜなら、ビジネス利用されるお客様で「多少お金を余分に払ってもいいから、簡単な料金プランで分かりやすいようにしてくれ!」なんて考えるお客様は滅多にいないからです。(というか、もしそういうお客様がいたら特別プランを作成してあげればよろしい)


初期費用ですが、これは法人向け製品であれば、なるべく設定するべきだと思います。

その理由ですが、営業宣伝費用の早期回収につながることでビジネスの成長を圧倒的に速くできることがまずひとつあります。これは極めて重要です。

もうひとつは顧客にとって新規ソフトウェア製品の導入は、そもそも支払額以上に手間がかかりコストがかかるものなので、初期費用を払うことにはさほどの追加の抵抗感がないということです。

日本のお客様は、月額費用のように継続して発生する費用には抵抗感があることが多いものです。


最後に、価格設定一般の話になりますが、商品の価格は高ければ高いほど、ビジネスは楽になる、というのが私の考えです。

コカコーラやマクドナルドのように100円の物を売って儲けるのは、きわめて難しいことであり、多くの起業家にとってそのようなビジネスを作り上げるのは困難でしょう。なぜなら広告宣伝費や販売チャネル構築などの初期投資が多くかかること、大量生産と大量販売を行うには組織の能力が大きく問われるからです。

それに比べて、ソフトウェア受託開発業、人材派遣業、不動産業、コンサルティング業など、顧客単価が数百万円を超えるような商売では、超零細企業であっても生きていけますし、それどころか、ボロ儲けしてる場合すらあります。

(ただし、もちろん簡単に構築できるビジネスほど、労働集約性が高いので、商売のウマみは少なくなります。)

弊社の経験からも、通常の中小企業であれば、顧客単価は10万円を最低ラインと考えるのが良いかと思います。なぜなら顧客獲得単価は最低でも数万円はかかるからです。できれば、そのうち5万円くらいは初期費用として回収してしまえると、資金回転率が改善するでしょう。

できれば、一社から年間100万円以上の粗利を獲得できるようになれば、大幅にビジネスは楽になります。大企業のように安く沢山売ろうなどとは考えないことです。

さらに厳しいことを言うと、ソフトウェアの限界費用は0円なので、新規参入が増えれば増えるほど値段は安くなっていきます。儲けられるうちに儲けるというのは良い考えですし、価格を高くして面倒なことを引き受ければ引き受けるほど、新規参入者にやられにくくなります。

「顧客単価」を考えるだけで、ビジネスが無残にも離陸すらせずに墜落してしまうことが少しは避けられるのではないかと思います。参考になれば幸いです。


参考: ソフトウェアの価格について以前書いた記事もあわせてご参照ください。

2015年2月1日日曜日

やっぱり日本には起業家が足りない!

「日本には起業家が足りない」なんてことを安易に言う人々には、皆さんもうんざりしていることかとは思います。しかしやっぱり全然足りないですね・・・

日本には優秀なプログラマは大勢いるかと思いますが、彼らがシリコンバレー並みの待遇を得られない理由の多くは、やはりビジネスを作ってお金にできる人が足りないということに尽きるでしょう。

ソフトウェアを活用して大金を稼ぐ人がどんどん増えてくれば、プログラマの待遇も上がるでしょう。

まだまだ日本にはソフトウェアビジネスを立ち上げる多数の余地があると私は思います。私自身も色々なアイデアを持っていますが、全てを実現する時間や金はありません。


とはいえ、ビジネスを作るというのは簡単なことではありません。

受託開発のように、労力を売って稼ぐ商売であれば、優秀な人であれば、比較的簡単に立ち上げることができるでしょう。初月から一人あたり数十万円以上の売上が立ちますからね。[1]

しかし独自製品販売のように仕組み作りが必要な商売になってくると、失敗率もぐっと上がってきますし、売上が立つようになるまでには時間と費用を負担しなければなりません。そうすると、単なるプログラミング能力+営業力というレベルではやっていけなくなります。

起業家になるためには学校に行って何かを学ぶとか、特定のスキルを身につけるという話ではありません。起業して、実地で学ぶしかないのです。

どうしても多数の失敗を重ね、その経験から学び、なんとかして事業を成功させて行くしかないでしょう。はっきりいって本当に大変な仕事なので、誰にでも勧められるというものではありません。


起業には、なによりも資金力か時間が必要になってきます。

なぜなら失敗を重ねて学び、いつか成功につなげるためには、資金か時間のどちらか、または両方を注ぎ込まなければいけないからです。

では、普通の人には起業は難しいのでしょうか? そうとも限らないのが、今のIT業界の状況です。

2014年を振り返ってみると、ベンチャーキャピタル[2]がとても活発に活動しており、投資を受けやすい年であったな、と思います。

またプログラマやその他の人材なども、かなりスタートアップ企業[3]に興味を持っており、何の実績も無いような零細企業であっても、ちゃんとした人を雇える状況になってきているようです。

そうなると、アイデア、チーム、実績、やる気、スキル(主にプログラミングか営業力)のようなものがいくつかあれば、誰でも起業することは可能という状況になってきています。

とくに自分や仲間がプログラムが書けるなら、当面は自分たちの生活費だけでいけますので、小額の資金を受け取るだけでも、かなり進捗をだせるので有利です。製品が完成すれば、また次の資金を受け取ることもできるでしょう。

2014年は、本当に起業やベンチャーキャピタルなどが身近になってきた年だったかな、と思います。ぜひここで起業家がどんどん出てきてくれるといいかなと思いますね。


素晴らしい大企業に勤めてるような人にとっては起業はリスクですが、もともと自分の実力で食べているような若者にとっては起業はリスクでも何でもないでしょう。

最悪、失敗して借金[4]かぶっても、ヤクザからお金を借りたりしなければ大丈夫ですって。

ただ日本ではキャリアを捨てるということは大きなリスクだと思うので、中高年の勤め人は安易に会社を辞めたりしないほうがいいと思いますね。私は中卒ニートなので、まともな会社員の人生は良く分かりませんが、起業失敗して損した人は結構見てきました。

個人的には起業することをそんなに薦めないですけど、やってみたい人にとっては今は大きなチャンスなんじゃないですかね? 少なくとも仕事にやりがいがあることだけは保証します。

  1. 受託開発が悪いというわけではないが、価格はプログラマ全体の需給で決まってくるので、個人が飛び抜けて高給を取るのは難しいでしょうね。もちろん他の人では実現できない能力によって、顧客企業に大きな利益をもたらせれば別ですが。
  2. ベンチャーキャピタルとは、企業に対して資本金としてお金を渡す代わりに株を受け取り、その企業を上場させるか他社に売却させるかして、お金を稼ぐという投資業です。融資と違って、失敗したら返さなくて良いのがメリットですが、しれっと「失敗したら創業者本人が買い取る」とかいう条項を契約書にいれてたりするので気をつけましょう・・・
  3. スタートアップ企業という言葉が、この数年、主に東京のIT業界でちょっとしたブームになっているように感じます。スタートアップ企業とは、主にベンチャーキャピタルの投資を受けて、極めて速いスピードで成長を目指す企業のことです(たぶん)
  4. 日本では起業家に金を貸してくれる金融機関なんてない!という人もいますが、実際は国金(日本政策金融公庫)がたぶん貸してくれると思います。とりあえず相談に行きましょう。最近は、本人保証[5]無しのプランもあるという噂なので、それならベンチャーキャピタルよりずっと安い資本コストで調達できるので、もし取れれば非常においしいですね。
  5. 法人が金融機関から融資を受ける場合は、基本的に経営者本人の保証が求められます。そのため法人が倒産すると、経営者は、金融機関からの融資に関しては、個人として返済することを求められます。でも、まともな金融機関なら腎臓売れとか言わないと思いますよ。

2013年11月21日木曜日

なぜ起業チームにはプログラマーが必要なのか

IT産業は起業にもっとも向いた産業とよく言われます。

当初の資本金はあまり必要でなく、無難なビジネスモデルを構築すれば、早期にお金が入ってきますし、とてもうまく行けば人数などを増やすことなく加速度的に売上を増やしていくことができます。

しかしITビジネスを作り上げるためには、創業メンバーにプログラマーがいなければうまく行きません。

ITビジネスにおいて、ソフトウェアシステムとビジネスは密接に結びついているため、ビジネスとシステムのすりあわせをできるプログラマが創業メンバーにいなければいけないのです。

単なる外注や、一従業員のように受け身の立場でシステムを構築する人は、システムの仕様がきっちり決まっていればちゃんとした仕事をしてくれるでしょう。

しかし、システムの仕様を決めるのは、ソフトウェアの高度専門家でなければできない仕事です。

かといって通常の会社に外注して仕様を決めてもらおうとしても、ビジネスに対するオーナーシップを持っていませんから、システムの必要性からビジネス自体を変更したりすることができず、中途半端な仕事に終わってしまいます。

システムの仕様決定には、ビジネスのオーナーシップを持つ創業者レベルの人が携わるのが望ましいのです。

またシステム作成と仕様作成は一貫して同時並行して行うことが望ましいのです。なぜならシステムを作っている途中で、新たに設計上、ビジネスを変更したりする必要が明らかになるからです。

しかし外注する場合は、予め仕様を決めて発注しなければ、予算が確定しませんので、契約を結ぶのが難しくなります。

予め仕様を決めて発注してしまえば、予算は確定しますが、こんどはできあがったものが思うようにビジネスに適合するとは限らなくなります。


そういうことから、可能な限り、プログラマを創業メンバーとして迎え入れて、給料ではなく志に共感してくれて、株式をシェアすることで一緒にやってくれる人を探すことをおすすめします。(なかなかそういう人はでてこないとは思いますが)

もちろん「給料がなければ嫌だ」という人でも仲間にいれて良いと思いますが、とにかく企画レベルから参加してもらい、プロジェクトのオーナーの一人として扱うことが大切です。

単なるシステム開発会社に外注してシステムを作ってもらうというやり方では、IT起業が成功する確率は大幅に下がることでしょう。

プログラマではない人が、優秀なプログラマを探したり、優秀なプログラマを見分けることはなかなか難しいので、そこは悩みどころですね。

とはいえ、きちんと責任をもってチームメンバーとしてプログラムを書いてくれる人であれば、平凡な能力なプログラマーだとしても、外注先の優秀なプログラマーよりもマシであると僕は思います。

私自身は現在プログラミングの仕事はお受けしておりませんが、ITビジネスの企画・戦略・仕様策定のお手伝いなどのお仕事や、優秀なプログラマを抱える会社の紹介などしておりますので、 arai@mellowtone.co.jp までお気軽にお問い合わせください。

あと最近ではソニックガーデン永和システムマネジメントのように、プロジェクトのオーナーシップを持って共同開発という形でシステムを作ってくれる会社もあるようなので、プログラマがどうしても見つからなければ、そうした会社に依頼するのも一つの手かもしれません。

ではでは。

2013年10月17日木曜日

人生に必要な知恵はすべて「コンサルタントの秘密」で学んだ ― ボールディングの逆行原理を知って人生の手痛い失敗を減らす

僕の人生にもっとも影響を与えた本を挙げろと言われれば、迷うことなく「コンサルタントの秘密」を挙げます。

これを読んでいなければ、僕はもう死んでいるかもしれない。それくらい僕にとって重要な本です。

この本は、ITコンサルタントであるワインバーグが、自身のコンサルティング経験から学んだ教訓を、寓話調に述べた本です。

コンサルタントのための教訓というよりは、人生のための教訓とでも言うべき内容です。IT業界では、この本を読んでいなければモグリというほど有名ですが、ぜひ別業界の人も読むべきでしょう。

すごく癖がある文章で、まわりくどい寓話調の記述から、真意を読み解くのは簡単なことではありません。2度3度読んでみて、ようやく意味がわかったり、実際に本書に挙げられてるようなトラブルで痛い目を見てから、ようやく重要性がわかったりする、そんな本です。

この本には多数の教訓と多数の寓話が出てきて、全体を貫くテーマはあやふやです。そのため、この本を人に紹介するときは、どのように紹介すればよいのか、いつも悩みますし、いまも悩みながら書いています。

人生には、知らなければ痛い目を見る知識というのが色々あります。卑近な例でいえば、「繁華街で客引きについていってはいけない」とか「うまい儲け話は転がっているはずがない」とか、そういう教訓は山ほどあります。

有名なところでは「能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。すると有能な一般社員も無能な中間管理職になる」というピーターの法則などがあるでしょう。

この本は、そういう教訓や法則のなかでも抽象的で知的なものを集めた本と言うこともできます。


そのなかでも私が最も感銘を受けて、いつも心の片隅に置いているのは「ボールディングの逆行原理」の章です。

「ものごとがそうなっているのは、そうなったからだ」という言葉は、すなわち今のような状態になっているには、それ相応の理由があるということです。

その状態がどれだけひどい、どうしようもない状態であるとしても、それはなるべくしてそうなったということです。

ひどい状況を見たときに、あなたは「こんなものは僕ならずっとうまくやれるのに!」と思うかもしれませんが、しかし、それは自惚れであり、もしあなたが責任者になったとすれば、手痛い失敗を犯して、大恥をかくことでしょう。

ひどい状況を引き起こすには、政治的理由、人間関係、顧客、予算、納期、技術的難易度、その他のわけがわからない呪いのような理由がいくらでも考えられます。

ひどい状況を見たときに、あなたが考えるべきことは以下の通りです。

  1. ひどい状況があるということは、ひどい状況を作り出す原因が近くにあるということであり、まずは全力で退路を確保しなければならない。
  2. ひどい状況は、前任者がアホだから作り出されたのではなく、有能な前任者が全力を尽くして善意でやった結果でも、そこまでしかできなかったと考えるべきである。
  3. いまある姿(as is)は、どんなにひどく見えるとしても、少なくとも局所最適にあるからそういう形になっているということを理解せねばならない。局所最適から一歩脱すれば、さらなる地獄のような悲惨さが待ち受けているかもしれない。
  4. 何も考えずに「私ならもっと良い仕事ができる」と言って、足を踏み込めば、確実に前任者と同じ轍を踏むことを理解すること。
  5. もし、それでもひどい状況を変えようとするのならば、「なぜそうなったのか?」を慎重に見極めて、「なにをやってはいけないのか」を見定めて、うぬぼれずに慎重に一歩ずつ改善を行うこと。
このことを知ってから、僕は「いまある姿」ということに対して畏敬の念を持つようになりました。「いまある姿」というのは、だいたいの場合はそうなるべくしてなっているのであり、簡単に変えたり、改善できたりするようなものではないのです。それを忘れれば、「いまある姿」は、あなたに対して強烈な一撃を加えるでしょう。

私は、数年ほど前に、自分のうぬぼれと迂闊さのせいで、泥沼のプロジェクトに足を突っ込み、自殺まで考えるというところまで追い詰められました。

それ以来「ボールディングの逆行原理」は常に私の心とともにあります。

2013年3月30日土曜日

リーダーシップと起業

僕にとって「起業して一番よかったこと」は、リーダーシップが身についたことです。

リーダーシップとは、他人に命令したり指示を出したりすることではなく、何事にも主体性を持って、能動的に働きかける考え方を持つということです。

日本人というのは、とかく何か不満があっても行動に移さず、他人のせいにするという考え方が染みついているものです。政府が悪い、会社が悪い、上司が悪い、部下が悪い、しまいには買ってくれない顧客が悪いとまで・・・

起業家・経営者にとって、世の中は「コントロールできること」と「コントロールできないこと」の二種類です。

コントロールできることは、すべて自分の責任です。それをどのようにコントロールして成果を出すかが求められます。

コントロールできないことを見れば、どうやればコントロールできるようになるか、他に代替案がないかを考えますし、どうやってもコントロールできないことであれば黙って諦めます。

結果として、世の中に対して愚痴を言うことはなくなり、不満があれば能動的に行動して解決するという方向性になります。

「世の中なんて一個人の力では変えられるわけがないんですよ」みたいなことを言う人もいますけど、そんなもんでもないですよ。僕がはじめたWinny事件支援活動では、最高裁で無罪を勝ち取ることができました。ネット医薬品販売訴訟や、一票の格差訴訟なども世の中を動かしています。

この、困ったことがあれば自力で解決する、という姿勢は人生をハッピーにしてくれますので、起業で得たもののなかで一番良いものですね。

人間にとって最もストレスとなることの一つは、無力感にさいなまれることです。それが解消されるだけで、人生はかなりマシなものになるのではないでしょうか。

また、何事もコントロールしたり、「もし自分がコントロールできるとしたらどうするだろう?」と考えることで、考える力や、問題解決する力がどんどんついてきます。

これはとても良いことでした。

逆に、他人のせいにする癖が抜けない人は、起業すると大変悲惨なことになりますので、起業しないほうがいいでしょう。真顔で「部下が動かないから困る」とか「顧客が理解がないから買ってくれない」とかいうことを言う社長がいますので・・・


この本は実はリーダーシップについての本です。人事・教育担当者や若者におすすめ。

2013年3月24日日曜日

マーケティングは創業者の仕事である

経営の世界には「商品三分に売り七分」という言葉があります。製品開発よりも販売手法のほうがずっと重要だということです。

物があれば売れるという時代ではありませんので、ほぼすべてのビジネスにはマーケティングが非常に重要になります。(本稿ではマーケティングは顧客に商品を伝えるための方法すべてをさします。営業、広告、PR、SEO、ウェブサイト構築など)

企業はとにかくマーケティングを最優先に考えるべきです。

じゃあマーケティングを外注したり、担当者を雇えばいいのかというと、そうではなく、基本的には創業者がマーケティングに注力することが必要です。

当たり前ですが、どんなベンチャー企業でも、創業者よりも高いモチベーションと能力を持った人は雇うことができません。

そして中小企業の新規事業のマーケティングができる人など日本には数えるほどもいないでしょう。マーケティングの個別のスキル(PR、調査分析、従来媒体広告、ディスプレイ広告、キーワード広告)などに優れた人はいても、すべての領域にわたってすごいスピードで施策の実験を実施していける人というのは、あまりいないのではないでしょうか。

仮にそのような人が見つかったとしても、全社の経営戦略とマーケティングの整合性を確保するためには、創業者のマーケティングへの理解が不可欠となります。

商品のポジショニング、プライシング、セグメンテーション、ターゲティングや顧客開発プロセスなどは、単にマーケティング担当者のレベルでできることではなく、経営者レベルでの意思決定が欠かせません。

経営者・創業者がマーケティングを理解せずして会社を経営するというのは極めて無謀な行為であると考えます。

逆に、いかにマーケティングが大切であっても、中小企業にとって専任のマーケティング担当者を置くのはコストの面から正当化することは難しいかと思われます。少ない商品数と少ないマーケティング予算では、担当者はほとんどする仕事がなく、お手上げ状態になってしまうのではないでしょうか。顧客開発に成功し、資金調達して、大きなマーケティング予算を執行する段階になってから雇えばすむことです。

マーケティングとは企業の基本職務の一つであり、経営者は必ず基礎知識を理解しておく必要があります。ですから、創業時には、マーケティングは創業者が担当しましょう。

零細企業のやれるマーケティングなど、そんなに専門知識は必要ありませんから、ただただ超速でいろいろな打ち手を試すことが大事です。

もし自社製品を売っていくつもりなら、マーケティングに力を入れて、P&Gのようなマーケティングエクセレンスを目指しましょう。受託開発なら、まあ、マーケティングのことは忘れてもいいんじゃないですかね・・・

マーケティングなんて何一つ分からないという人はまず下の本をどうぞ。読みやすい本で、マーケティングの一分野である「ポジショニング」について概略が学べます。これを読むとマーケティングについて少し興味がわいてくるのではないかと思います。

(間違ってもコトラーを買わないように! あれは死ぬほど退屈で、まともに読めた代物ではありません)

2013年3月19日火曜日

【講演】自社サービスで成功する方法

先日の未踏カンファレンスで講演した内容のビデオとスライドをこちらにアップロードしておきます。参考になれば幸いです。

凡人が自社サービスで成功するための一つの方法について述べました。

ポイントとしては、
・顧客のニーズを探索しながら、現実を見て、事業を見直しながら発展させていく
・経営の経験値をあげながら、徐々に難しいことに挑戦していく
ということです。

twitterなどの反応を見ていると「新しい市場に挑戦してはいけないのか?」「斬新な製品や技術をベースに起業してはいけないのか?」という疑問の声がありました。答えとしては、2点あります。まず新しい市場への挑戦は難しいので、初心者(凡人)向きではないのです。また、新市場では、顧客のニーズが全く分からないので、その製品や技術をどのように顧客が必要とするか、顧客の声を真摯に聴きながら事業を進めなければいけないということです。

あと講演で触れるのを忘れたことで一つ大事なことがありました。それは「商品3分に売り7分」ということです。顧客と接して、顧客のために動く活動こそが企業にとって一番大事なことですから、創業者・社長が自ら顧客と接して営業活動をしていくことが必須です。そこを他人や他社に任せても絶対にうまくいきませんので!


2013年2月27日水曜日

未踏カンファレンス2013で「自社サービスで成功する方法」を講演します

3月10日に品川で行われる未踏カンファレンス2013で「自社サービスで成功する方法」という演題で講演を行います。

Googleの及川さんや、東工大の首藤さんなど、錚々たる顔ぶれが講演する予定なので、ぜひ東京の方はおいでになると面白いかと思います。

私は、いまのところ以下のような概要での発表を考えています。

未踏カンファレンス講演「自社サービスで成功する方法」
凡人が自社サービスで成功するために
天才は勝手にやってくれ
自社サービスはなぜ難しいか
人材サービス業(受託開発業)が特異的に参入障壁が低い
スケールしないので、技術や営業の個人プレーで成功可能
スケールしないので、大企業が完全圧勝パターンを作れない
スケールするビジネスは顧客を作ることはすごく難しい
大企業や先行企業の圧勝パターンになる。弱者は全滅も
このあたりの事情はランチェスター戦略に詳しい。
基本的には零細企業には受託開発業などが合っている。
だが、一度きりの人生、下請けで終わっていいのか?
自己紹介
xcream - 年商○○円以上
メイシー - 通期黒字かつ成長軌道
誰とやるかは重要
営業販売を第一に考えて顧客視点で動く
顧客発見プロセス・リーンスタートアップ
プランの段階で他人に聞いて、実際に買うかどうか調べる
市場がない / 市場が飽和している = 独自性 / 独自性がない
市場がない、お金にならない、のは最悪
市場が飽和気味でも本当に進出の余地がないとは限らない
独自性は上級者向き
既存商品が満たしていない細かいニーズ。既存製品の裏をかく
最高に成功しても、全く儲からないようなビジネスって?
広告や営業はとにかく多種多様に試すしかない
ビジネスは、商品3分、売り7分。売りに注力すべし
売りの手法とは何か
法人営業、代理店営業、Adwords、テレアポ、チラシ
売りの手法や対象顧客によって値段設定なども変わる
弊社がやってきた失敗の歴史
成功例 (オフレコ)
失敗や持久戦を覚悟する
離陸まで数年かかることも良くある
失敗がふつう
pivot!
振り返り
もっと軽量にやるべきだった
開発やデザイン費用は極小にしてマーケティングに回す
もっと顧客視点でやるべきだった
「アントレプレナーの教科書」をもっと早く知っていれば!
これから先
自分が経営者や技術者として天才にほど遠いのを思い知った
弱者は弱者なりに、機敏かつ軽妙に動いていくことで生き残る

2013年2月21日木曜日

独立・起業するときに絶対に必要なことは退路を確保すること

先日、数年間行方不明だった知人から連絡があり、どうしたのかと思ったら、なんと刑務所に収監されていたとのことで驚きました。

彼の経営している会社が資金繰りで困っていることは知っていましたが、その関係でトラブルになり、刑事責任を追及されたようです。

借金などの経済難によって行方不明になっているのかなあ、と思っていましたが、まさか刑務所に入っているとは思いもよらず、大変驚きました。まあ、生きているだけでも幸運なのかもしれませんが・・・

経営者にとって、経営責任を追及されるということは、首になるだけでは済まず、ときとして民事や刑事上の個人責任を追求される可能性があります。

経営をするということの責任はきわめて重く、単なる一会社員とは別の次元と考えたほうが良いでしょう。

もし独立・起業するときには、最悪のケースを破産・失踪・自殺・収監などと考えて、そのような事態にならないように対策を打っておくことが必要です。

失敗することを想定して経営するのか? そんなことでいいのか? と思われるかもしれませんが、経営者にとって失敗は当たり前であり、そのときの引き際の美しさによって、自分や周囲への被害程度というのは、かなり変わってくるでしょう。

周囲に迷惑をかけないためにも、引き際を常に考えた経営をしておく必要があります。失踪などすると周囲の人に著しい悪印象を与えますので、再起がかなり難しくなってしまうのではないでしょうか・・・

フリーランサーであっても、納期が守れない、ぜんぜん開発が成功しない、顧客とうまくいかない、などということは日常茶飯事ですので、そのあたりずぶとい根性で世渡りしていく必要があります。やはり失踪してしまうと印象最悪なので、腰は低くしつつも開き直るくらいの根性が必要です。

事態が悪くなってきたときに、どのように事態を収拾するかということで、その後のことが大きく変わってきます。ナニワ金融道などが参考になるかと思いますが、危機に陥って、焦ってジタバタしてしまったり、失踪してしまったりすると、確実に事態は悪化するんですよね。

最悪の場合「ごめんなさい、本当にお金がないので払えないのです」と言って、潔く撤退して、最低限の法的義務を果たす方向にシフトするのが良いのではないでしょうか。そこで他人のお金に手をつけてしまったりすると、本当に刑務所送りになってしまいますので・・・

事業のほとんどは失敗に終わりますので、失敗に終わることを考えて経営することで、被害や迷惑を最小限に抑えるだけでなく、より真剣味がある、よりよい経営ができるでしょう。もし撤退する案が恐ろしく思えるのであれば、身の丈にあわない事業をしているということです。

このあたり、やはり相談できる先輩経営者がいるのといないのとで大きく変わってくるかと思います。

独立・起業するのなら、弱みを認める、潔く撤退する、失敗を受容する、他人に迷惑をかけることを受容する、といった日本人が苦手とする考え方も持つ必要があります。もちろん他人に迷惑をかけてばかりなら成功の見込みはないでしょうけど、格好付けて見栄を張って一人で無理な勝負を続けたあげく失踪するよりも、さっさと降参する方がみんなのためになることもあるのです。

逆に言えば、失敗しても平気なレベルにとどめておくならば、チャレンジしても何も怖くないのです。失敗を受容することこそが、成功への第一歩かな、とおもいます。

2013年2月5日火曜日

アジアが熱い? 日本企業が海外進出する理由なんて本当にあるのか?


またバンコクに一ヶ月滞在している新井です。バンコクにいらっしゃる方はお気軽に声をかけてください。ご飯でもご一緒しましょう。

こちらにいると「タイでビジネスをするつもりがあるのですか?」と良く聞かれますが、私はタイで本格的に事業を行うつもりは一切ありません。

個人が海外進出(放浪、留学、就職)するのに理由など要りません。面白そうだから、武者修行したいから、日本にいても行き詰まったから、そんな理由だけあれば十分です。しかし企業が海外に進出するには、利益があがると考えられる確かな理由が要ります。

大企業には海外進出するための様々な理由があります。市場だったり、税制だったり、労働力だったり、資源だったり、いくらでも理由はありますよね。

しかし中小・零細企業にとって海外進出というのは、かなり難しいものです。

一つには無数の壁が立ちはだかっていること、もう一つにはそもそも進出すべき理由が少ないことです。

進出の壁というのは、すなわちビザ取得の壁、法制度の壁、人脈がない壁、市場に入れない壁、壁を乗り越えるための資金がない壁などです。壁を乗り越えるには資金がかかり、中小企業にはなかなか厳しいものがあるかと思います。

進出すべき理由がないということは、案外皆さん気づいていない方が多くて驚きをおぼえます。

中小企業の資金力で、海外で大々的に市場参入などできっこないのですから、基本的にはビジネスの方向性は3つに絞られます。

1つは日本との間で貿易を行う貿易商。2つめは日本企業の進出にくっついて細かいサービスや工場などを提供するコバンザメ商法。3つめは現地の労働力や資源を活かして、製品やサービスを生産して日本や欧米にうっぱらうオフショア商法です。

中小企業が現地人向け市場に参入しようなどとは基本的に愚の骨頂です。そうした市場では現地人のほうが強いに決っていますし、大手資本でもなければ、市場に参入するだけの営業・販売・マーケティング・物流などの力を投入できないでしょう。

日本向けにITオフショア企業などをやっている会社もありますが、言葉の壁を考えると非常に大変そうだなあと思います。そんな人を使ってる暇があったら自分でコーディングしたほうが速いと思っちゃいますからね・・・

やはり手堅いのは、1.日本企業向けに不動産紹介(駐在員サポート)や人材紹介・育成などのサービスを提供すること 2.日本企業向けに部品の製造や貿易などの下請け仕事やオフショア製造(軽工業)をやる、の2種類ではないでしょうか。

いまだったらミャンマーに進出する日本企業にコバンザメのようにくっついて、サポートの仕事をするといったところが手堅いと考えられているようです。

それって私にとってはあまり魅力的ではないなー、と思いますね。日本企業の下請けをやると、思いっきりこき使われますからね。

「アジアがすごい成長している!」とか「アジアのマーケットをつかめ!」などという議論をしている人たちがいますが、そのマーケットをつかめるのは一部の大企業のみです。成長している国に住むことは楽しいですが、実際に事業として中小企業がアクセス可能なマーケットがどれくらいあるのか考えたほうがいいですね。

日本を代表するような大企業の人たちには、ばんばんアジアやアフリカや中南米に進出してどかんどかん勝負してほしいですが、中小零細企業にとっては海外進出は良い賭けとはいいにくいです。世界進出に賭ける熱い思いがあるなら是非やるべきですが、そうじゃないならやめときましょう。日本でやったほうが成功の確率は高いです。

日本にいながらだって世界と取引できる時代です。べつに中小企業が大上段に構えて海外進出しなくても、ニーズがあればお客さんが向こうからやってくるんじゃないですかね? うちのXCREAMもけっこうな割合の海外売り上げがありますからね。

2012年10月18日木曜日

レンタルCTOはじめます

注: 写真はイメージです。
こんにちは、新井です。

個人の取り組みとして、新たにレンタルCTOという活動を始めてみようかと思います。すなわち非常勤の技術コンサルタントとしてベンチャー企業などにアドバイスを行う試みです。

昨今の経営環境では、IT技術の活用が必要不可欠となっていますが、一般企業が優れた技術者を見つけることは容易ではありません。しかし、経営陣にIT専門家がいなければ、ITを高度に活用してビジネスを行うのは難しいのが現実です。

そうした企業の技術参謀役として、ビデオミーティングなどによりアドバイスを行う「レンタルCTO」業をはじめます。


私は、日本を代表する著名技術者ではありませんし、最優秀の経営者でもないでしょう。しかし技術と経営の両方を分かっていて実践している人材という点では、日本では極めて稀少な部類かと思います。いわゆるコンサルタントなどと違い、いまもプログラミングや経営を自分で行っていますので、実用的な知見を提供できます。

これまで、有料動画配信モール、名刺管理ITサービスなどの企画・開発・運用までに携わってきました。動画配信モールは、現在では100TB以上のストレージ容量を運用する巨大なサービスとなっています。

この動画配信モールは、私に開発依頼があったときには、P2P技術を使って安価に動画を配信するという企画でした。しかし私がP2P技術のメリット・デメリットをお話しして、P2Pは今回の案件には適切ではないことをご理解頂き、最終的には通常のサーバーから配信する形式で開発することになりました。

日本でP2P技術で動画配信を行う事業は一つもうまく行かなかったことを考えると、この選択によってビジネスを失敗から救うことができました。

このように、適切な判断のできる高度な技術者を経営判断に活用することは、テクノロジービジネスにおいては必須であると考えます。「プログラムが書けます」というレベルの技術者と、経営判断をゆだねる技術者に求められる知識は全く別のレベルです。


私にとっても、レンタルCTO役をやることで、これから新規事業を手がけるにあたり、様々なビジネスから知見を得たり、新しく優秀な経営者の方々とお知り合いになれるのではないかと期待しています。

私自身の新規事業開発の時間もあり、コンサルティングに使える時間は限られていますので、先着3社までの限定でお受けさせて頂きます。

お互い相性が大切かと思いますので、まずは気軽にお問い合わせ頂き、チャットなどでお話しできればと思います。

お問い合わせは arai [at] mellowtone.co.jp まで。

レンタルCTO基本プラン
* 毎月10万円 (年商1億円以下の企業や個人事業主は毎月5万円に割引します)
* 4時間のビデオミーティングを2回/月
* メールとチャットは無制限 (回答までの時間は無保証)

お手伝いすること:
* IT活用ビジネスに関する企画のアドバイス
* 技術者の採用および、ITアウトソーシングに関するアドバイス
* 基本的な開発プロセスマネジメントに関するアドバイス
* 基本的なITセキュリティに関するアドバイス
* 技術基盤(アーキテクチュア)に関するアドバイス
* システム設計、開発、運用に関するアドバイス

得意な領域:
* ビジネスと技術にまたがる領域 (テクノロジービジネスの企画等)
* ウェブビジネス
* ITベンチャー企業 (受託開発業を除く)
* システム設計
* データベースアプリケーション
* システムの高速化

得意でない領域:
* 大規模エンタープライズシステム
* 大規模プロジェクト
* 市販業務パッケージの活用ノウハウ
* ゲーム開発
* ソフトウェア受託開発業
* 先進的な開発プロセスマネジメント (アジャイル、テスト駆動開発、継続的インテグレーション等)

2012年9月2日日曜日

「アントレプレナーの教科書」から学ぶ「顧客開発モデル」の方法論

弊社がバイブルとしている書物の一つに「アントレプレナーの教科書」という本があります。この本では、連続起業家であるスティーブ・ブランクが新規事業立ち上げの方法論を明確なプロセスとして表現しています。

顧客開発モデルでは、顧客を見つけるために仮説設定と検証を繰り返していくプロセスを明示しています。顧客の困っていること=ニーズは何か、という仮説を立て、それを早い段階からインタビューして検証します。プロトタイプを作成する前にも、質問などによってニーズがあるかどうかを検証していくことを推奨しています。

顧客のところにでかけていっても、すぐに自分の製品について説明したり、「どんな機能が欲しいか」聞いたりするのではなく、まずは顧客がどのように仕事を進めているか、どのような課題を抱えているか、その課題を自社の製品がどう解決できるか、そういうことを調べていきます。

世の中には起業本が山ほどあふれていますが、これほど「実用的」かつ「実践的」な起業本は少ないでしょう。

製品立ち上げのプロセスを4つの大きなステップ、「顧客発見」「顧客実証」「顧客開拓」「組織構築」に分けて、それぞれを数十の小さなステップに細分して説明しています。それによって細かい実践の方法がカバーされています。

起業本の革命児とも言える書籍であり、アメリカでは本書を元にして「リーン・スタートアップ」などの新しい理論や書籍が次々に誕生しました。

この本は素晴らしい本なのですが、ちょっとした弱点があります。

分かりやすく読みやすい本ではあるのですが、分厚く細かく書かれているので、再読したり、事業の最中にちょっと参考にするには重い感じがするということです。

もう一つには、ステップが細かく書かれているのは良いのですが、具体的に書かれすぎていて、実際の事業に当てはめるときにかえってわかりにくいという点です。

そこをカバーするフォロー本として「顧客開発モデルのトリセツ」という電子書籍が出版されました。この本は、アントレプレナーの教科書を読んだ二人の読者が、その本をフォローする解説本として自費出版した本です。

100ページほどの簡潔な電子書籍となっており、いつでもどこでも何度でも読み返しながら顧客開発モデルについての理解を深めることができるようになっています。

私も「アントレプレナーの教科書」を毎回読み返すのは荷が重いと思ってましたので、この電子書籍が出版されたことは福音だと思っています。

顧客開発プロセスを別の角度から見直すことで、顧客開発モデルについてより詳しく、深く理解することができますからね!

2012年6月18日月曜日

起業という幻想 - アメリカンドリームの現実

この本は、平均的な起業家は、いかに華やかなものとはかけ離れており、泥臭い敗残者達であるかを描き出した本です。

起業家の多くは、転職を繰り返し、そのあげくに失業し、小さな会社を立ち上げて自営業とはなるものの、その会社も永遠に成長することがなく、ほとんどが自分一人だけの事業のまま終わる。という起業の現実を描き出しています。

本書では、起業というものは基本的に、仕事の無い人が、なんとか仕事を作り出そうとする試みであり、仕事が無いところ(田舎や発展途上国)でこそ起こるということを示しています。そうした人々はサービス業や建設業など自分の働いていた業界において、少ない資本で起業します。そして、その結果はあまり芳しくなく、大企業で働くよりも少ない成果しかもたらしません。


本書の問題点は、全編が「既存の○○という考え方は間違っている」という形で記述されており、むやみに既存の「幻想」なるものを攻撃するばかりの書き方である点です。少なくとも日本においては、起業なるものにそんな素晴らしい幻想を抱いている人は滅多にいないと思うので、著者の攻撃的な姿勢には鼻白むばかりです。

また著者はしばしば統計的事実をむやみに一般化して全てのケースに適用しようとしています。

さらに最も大きな問題は、意図的に「ベンチャー起業家」と「自営業者」を混同し、ベンチャー起業家への期待を自営業者の低パフォーマンスという証拠で否定するというミスリーディングな論調です。この本で述べていることは「自営業者」に関することばかりであり、ベンチャー論はほとんどありません。


それでも、本書はいくつかの重大な示唆を与えてくれます。

まず一つは、転職を繰り返したりしたあげく、あてもないのに起業するのは極めて危険だということです。無能な人が無能であるがゆえに起業するというのは、(当たり前ですが)危険です。自分の貯金を投じて、低い収入に甘んじたあげく、倒産して最後に残るのは借金だけという結果に終わります。若いうちならともかく、年を取ってそういうことをするのは、まさに致命的かもしれません。

日本における常識人の認識としては、起業家とは無職の一類型であるというものですが、まあ、それは当たらずとも遠からずなのでしょう。

もう一つは、もし起業するなら「起業に適した産業を選ぶ」「チームで起業する」「株式会社を作る」「ビジネスプランを策定する」「資本を多く調達する」「頑張って事業を長く存続させる」「大学院を出てから起業する」などをすることで成功の確率を高めることができるということです。スタンフォード大学院を出て、シリコンバレーでベンチャーキャピタルから投資を受けてITスタートアップを立ち上げるほうが、どっかの田舎町で美容院や建設業を立ち上げるよりも良いということです。

また、この本を読むことを通じて、自営業者とベンチャー企業の違いを感じとることが出来ます。


私のように無能な起業家の一員としては、こうした本を読むのは本当に不愉快極まりない体験なのですが、これから起業しようとする人は読んでおいても良い一冊です。

たいして優れた本では無いので、起業と関係の無い人はわざわざ読む必要はないでしょう。


ところで、本書の著者は、零細起業家はろくでもない無職もどきなので補助金などを投じるべきではないと言っています。

その意見について、私は半分賛成でもあり、半分反対でもあります。

既に職がある人に補助金を与えて起業させる試みは危険であると思います。起業とは失敗することが大半なのですから、わざわざ有職者を道に迷わせる必要はありません。

しかし世の中には私を含め、既存の社会や会社には適応できず、自営業として何とか生き延びている零細・弱者が大勢居ます。そうした人の存在を無視するべきではないとも思います。

たとえばコンサルタントの栢野克己氏などは「弱者」「零細」「社長」「人生逆転」に特化したコンサルティング・講演などを専門にされています。

現実の多くの起業は泥臭いものなのですから、TechCrunchのような華やかなストーリーよりも、栢野克己、竹田陽一神田昌典などのような弱者向けの本こそが多くの人の役に立つのだと思います。

ま、補助金がそうした弱者救済の役に立つかどうかはさておき、社会には華やかな成功者だけでなく、底辺で泥水をすすって生きている大勢の人がいるのだ、ということを忘れないでもらいたいものです。

「起業という幻想」の著者が、そのような弱者たちの苦闘を小馬鹿にする姿勢でなければ、もっとずっと良い本が書けたと思うのですが・・・

2012年5月31日木曜日

ビジネスアイデア100連発 (1)

ビジネスで大事なのは人でありアイデアじゃない、という人は大勢います。アイデアよりも、それをどう実現するかが大事だ、という人もいます。

確かに起業においてアイデアとは最も大事なものではないかもしれません。しかしダメなアイデアで起業したら、どうにも成功しようがないのも事実だと思います。

かといってアイデアを後生大事に抱え込むのも馬鹿馬鹿しい気がします。どうせアイデアなんてただの思いつきですからね。

そこでビジネスのアイデアというのはどんどん表に出していって、みんなでアイデアを交換し合って良い物に発展させたら、より良いものが生まれるのではないでしょうか。また、それを見て興味を持ってくれる人がいるかもしれません。

ビジネスのアイデアというのは、「これから起業しよう! で、なにをすればいいんだろう?」というときにポッと良いものが思いつくものでもないのです。アイデアとは普段からつねづね考えている人のところにやってくるものだとおもいます。

これから起業する人々や、起業家の皆様の発想を少しでも刺激することを期待して、私のアイデア集の中からアイデアを紹介していこうと思います。最終的には100個のアイデアが紹介できればよいのですが、そこまで発想が続くかどうか・・・

このアイデアで、もし本当に事業をしたい人がいればご自由にどうぞ。但し著者は一切の保証も責任も負いません。私も将来このアイデアを使って起業することもある、かもしれません。

これらが素晴らしいアイデアだなんて思っていないので、色々とご高評頂ければと思います。「こうすれば面白い」「ここが良い」「ここはこうだからダメじゃないか」などなど。

では、最初の5つのアイデアを紹介します!

(1) NPO法人 スギを切り倒せ

さて一発目から非営利事業で恐縮ですが、NPO法人の企画です。花粉症に苦しむ人から資金を募って、杉林を切り倒して、別の木を植林するという社会事業です。スギ花粉症をこの世から根絶するというアイデアにお金を出したい人もいるかと思います。オペレーションコストがかかりそうなので、それなりの募金が集まらないとまわらないのがきついですね。

(2) 複数人のビデオチャットによるお見合いサービス

出会い系サイトやらお見合いサービスやら色々なものがありますが、コストが高かったり、信頼性がなかったりするのが問題点です。知らない人といきなりやりとりしてくれ、と言われても困ってしまいますしね。

海外ではオンラインビデオデートのサイトなども出てきているようですが、知らない人といきなり一対一でビデオチャットというのも、かなりきついものがあるかと思われます。

そこで、モデレータ(社員)と一緒に複数人でビデオ会議をしたら良いのではないでしょうか。雰囲気をずっと真面目に安心感のあるものにすることができ、ニーズが高まるかと思います。コスト的にも、お見合いパーティと出会い系サイトの中間くらいで提供できるのではないでしょうか?

(3) 複数の女性をいちどにデリバリして選べるデリヘル

日本には性的サービスを提供するお店が山のようにありますが、そうした店が顧客満足をどれくらい提供できているか疑問があります。そうした店では、女性を写真で選ばなければならず、実際に来るまで、どのような人が来るのかあまりよく分からないという問題があります。

そこで、女性が複数人でお客さんのところに行って、その中から選べるようにすれば、顧客満足度は大いに高まるのではないでしょうか?

もしお客さんがある女性を気に入る率が40%しかなかったとしても、確率的独立性を仮定すれば、n人連れて行った場合の満足率は1-(1-0.4)^nとなり、3人連れて行けば78.4%の満足率を得ることができるわけです。これは圧倒的な優位性となります。なぜ採用されていないのか不思議なくらいです。

(4) タイ式かき氷のチェーン店

旅行ブログ「ひよことらべる」でも書きましたが、タイ式のかき氷は最高にうまいです。荒削りのかき氷にゼリーなどのトッピングを乗せ、そこにシロップとココナッツミルクをかけるというものですが、ほんと最高です。

米国西海岸では韓国発祥のフローズンヨーグルトのチェーン店(RedMangoなど)がすごく増えているそうです。バンコクや東南アジア各国でもよく見かけました。日本にもGoldenSpoonといった店がありますね。

私が昔やっていたブログでは、だいぶ昔に「RedMangoを日本でやれば流行る!」と書いたのですが、残念ながら日本にはいまだに上陸していないですね。日本ではデザートのチェーン店は難しいのでしょうか?

次に狙えるのはタイ式かき氷ではないかと思います。飲食ビジネスのネタを探している方は是非! アメリカでタイ式かき氷を展開するのはどうでしょうか?

(5) お話マッチング

これもNPO的なネタです。

世の中に高齢者など孤独でしょうがないという人は山ほどいると思います。その一方で、仕事に困っている若者も大勢います。そこで、両者をマッチングさせて、時給制で若者などに高齢者とお話してもらうようにしたらどうでしょうか?

いや、こういうサービスはすでにありそうだな・・・ 検索してないですけどね。

2012年4月11日水曜日

起業をする人が知っておくべき、起業の現実とは

起業とは何でしょうか。この数年のウェブ世界では起業論がブームになっているようにも思います。やってみるまでわからないことも沢山あるでしょうが、やってみなくてもわかることもいくつかあると思いますので、私の経験も交えて起業論を話してみます。

・心構え

独立や起業することは良いことなので、「やってみれば」と言いたいところですが、起業することはやはり責任が重く、ピンチも沢山やってくるので、気軽に薦めるわけにも行きませんね。

起業する前には、とにかく大ピンチを想定してやったほうがよいでしょう。

仕事は全くこない、もしくは仕事を納期までに終わらせられず顧客に大損害を与える、迂闊にも仕事を安請負して大変なことになる、破産して多大な借金を背負う、病気になる、従業員は出社拒否になる、共同創業者とも喧嘩して残ったのは自分一人、新規事業は数年間売上がほぼ0のまま、平日も土日も朝から夜までずっと仕事でそのうえ雑用ばかり。

こんなことは多くの社長が経験していることです。

起業家にとっては「失敗が当然」なのです。

社長には、何事にも自分で責任を持つ責任感が必要な一方で、「失敗して、自分や家族や顧客や従業員や金融機関に多大な迷惑をかけても、自分は大丈夫、なんとか生きていける」という考えがないと危険です。利益と現金以外のことには無頓着な気持ちでないとやっていけません。「失敗しても命まで取られることはない」と、覚悟を決めてやるしかないのです。これだけの責任を負うというのは大変なことです。

「借金をしない」「事務所を借りない」「従業員を雇わない」「請負契約には強い免責条項を入れる」というルールを厳守すれば、こうした責任の大半から逃れることができますので、まずは責任を負わずに独立自営したい人は考えてみると良いでしょう。

さて、起業するにあたりいくつかの分類があるので、以下で見ていきたいと思います。

・フリーランスと起業

一言に独立するといっても、単に会社を離れて一人でフリーランスとして独立する場合もあれば、従業員を雇うなどの投資をして新しく企業を興す場合もあります。

フリーランスは単に契約形態が違うだけで、仕事自体は自分が一人でこなしているので、起業というほどのものではないでしょう。フリーランスは、とても能力があり、営業活動もしっかりできる人であれば、暮らしていくことは難しくないでしょう。コツは、営業活動(講演、執筆、業界活動等)に十分な時間を割くことと、必要な給与の2倍以上の時間単価を課金することです。

フリーランスは、起業の練習段階として捉えることもできますし、プロフェッショナルの究極の働き方として捉えることもできます。どちらにしても大事なことは、一社の専属にならないことです。もし一社専属であれば、フリーランスではなくて単なる契約社員ですから・・・

フリーランスは、請負契約の責任にさえ気をつければ、ほぼリスク0で独立できますので、やってみる価値もあるでしょう。ただし中年以上のサラリーマンの場合は、独立しても仕事が取れなかったときに、再就職できる見込みがあるかどうか要注意です。ちなみに独立前に見込み顧客がいない場合は、独立しても絶望的ですのでやるだけ無駄でしょう。副業からスタートするのが無難かもしれませんね。

それに対して、人を雇う、設備や製品に投資をする、などをすれば起業であると私は考えます。起業については以下に述べていきます。

・製品企業と人材企業

起業して会社を作る場合であっても、製品を作る企業になるのか、人的サービスを売る企業になるのかということは、大きな違いであるとよく言われます。後者は、いわゆるソフトウェア企業での受託企業ですね。

人的サービスを売る企業は、投資の必要性が少なく、社長の能力や営業力を活かしたり、下請けの仕事や小さい仕事を取ってくることができますので、参入しやすく、小さく始めることが容易であると言えます。

問題としては、参入が容易なため競争が激しく薄利で低成長になりやすいことと、景況の波に対応しにくいことの2つがあります。市場自体が低成長の場合には、差別化と営業努力が要求されます。

それに対して、製品を作る企業の場合には、投資も必要ですし、うまく製品が売れるかどうか分かりませんので、新規参入は圧倒的に難しくなります。売れたとしても数年間くらい時間がかかることも普通です。いきなり新米社長が製品を作るのは非常に難しいものです。

かといって人材企業を作ってから製品企業に転換するというのも、とても難しいのです。一つの会社の中に、淡々と他社の仕事をこなしてお金を稼ぐ部門と、金になるかわからない新しい製品を作る部門を並立させるということは、どれだけ困難か想像してみてください。人材企業として成功して利益がでていれば、そうした贅沢もできるかもしれませんが、薄利でやっている人材企業にとっては、そんなことは不可能なのです。既存の従業員が、かえって足枷になってしまうのです。

最悪なのは、「何か新しいビジネスをやるぞ」「製品を作るぞ」と言ってスタートして、なし崩し的に受託企業・下請け企業になってしまい、「本当は製品が作りたい。受託なんてしたくない」と言っているケースです。

まあ、人生にはそういう時期もあるかもしれません。が、それを長く続けたら人生最悪ですし、そういう会社の従業員になることも最悪なので絶対に避けるべきです。受託をやるならやるで、本気でやらなければ生き残っていくことなど出来ないのですから。

・新規市場と既存市場

他にも企業には色々な分類の仕方があるかと思いますが、「目新しさ」ということは一つの大きな要素です。

これまでなかったような全く新しい市場を作り出すのか、現在も競争相手がいて普通に商売をしているところに、ちょっとだけ違うものを投入してお金を儲けるのか。

全く新しい市場で、既存のお客さんや競争相手のいないところに乗り出すのは、基本的には自殺行為です。大成功する場合もあるでしょうが、99.99%は大失敗するでしょう。それで大きく成功している例が目立つだけで、その陰には無数の死者がいるのです。

インターネット業界では、今も昔も「それでどうやって金が儲かるのか?」というビジネスで起業する人が後を絶ちません。残念ながら「便利で面白いソフトウェアを作りました」では商売にはならないのです。基本的には、確実にお客さんが金を払ってくれるものを作らなければいけないのです。もしくは、とてつもない数のユーザを獲得できるようなものを作ってうまく普及させる必要があります。

新規市場に乗り出すからには、「どんなことをしてでも自力で新しい市場を開拓する!」という覚悟と、それだけの能力が必要不可欠です。その根性がないのなら、既存市場にしておいた方が無難でしょう。

もちろん、コカコーラに対抗して新しいコーラを発売するとかいうことも自殺行為ですが、それでも本当に違いが分かるほど美味しいコーラならマニア層が多少なり買ってくれる可能性はありますので、いくらかマシと言えます。

でもWindowsに対抗して新しいOSを作るとか、弥生会計に対抗して新しい会計ソフトを作るというのは、ほぼ無理でしょうね。ネットワーク効果や、顧客にロックインが発生する分野では、すでにシェアの大きい企業に対抗しての新規参入は困難ですから。

起業がかっこよいからやってみる!というのも悪くないとは思いますが、成功の見込みのないソフトをうだうだ開発し続けて、そのあげく失敗して非正規労働者に転落では悲しすぎます。自分の「起業」が単なるモラトリアムではないか、それを確認するために「これで本当にお金が稼げるのか?!」と問い続けるべきでしょう。

・大きく賭けるか、小さく賭けるか

起業にはもう一つ重要な分類があります。急成長を狙うベンチャーをやるか、それとも自分にとってちょうどよいペースでやるか、です。

急成長を狙う場合は、基本的には投資家からの投資を受けて、うまくお金や人材を活用することによって、急成長を狙うということになります。これにはビジネスモデルも大事ですし、経営者や創業者にはかなりの能力が要求されることになります。また、失敗を前提として、投資によって資金調達することで個人のリスクを軽減します。ストレスや困難は大きいでしょうが、これはこれで個人的なリスクの少ない方法です。

自分にとってちょうどよいペースでやる場合は、基本的には投資を受けず、徐々に自己資金での成長を目指していくことになります。場合によっては政府金融機関から融資を受けたりすることもあるでしょうし、従業員も徐々に雇うかもしれません。大事なことは何事も無理をせず徐々に進めることです。会社を清算したときに多大な借金が残らないように、つねにキャッシュフローに気をつける必要があります。

副業として開始をして、本業の給料などをつぎ込みながら行う、バイトしながら行う、というのも一つの方法です。副業なんかでうまく行くのか? と言う人もいるかもしれませんが、副業でうまくやれるくらい高いモチベーションの無い人は、本業にしても失敗するに決まってますよ。

粗利が年間数千万円の会社など、吹けば飛ぶような零細企業ですが、もし一人だけでやっているビジネスなら素晴らしい事業です。売上が何億円あっても、多くの従業員と、負債の個人保証を抱えていれば、個人的には全く裕福とは言えません。

起業家にとっては失敗が標準なのですから、失敗してもダメージが少なくて済むように常に心がけるべきです。

・起業家のエコシステムとは何か

起業家のエコシステムということが良く話題になります。起業がもっと盛んになるにはどうしたら良いか、という議論が盛んです。投資が受けられれば良いとか、メンターやアドバイザーがいれば良いとか、そういうことが言われますが、私は以下のように考えます。

まず、お金に関して言えば、投資というのはあくまで利益が生まれてこその投資ですので、ベンチャー企業が売上や利益をあげられることが前提です。現状の日本では、ソフトウェア企業にお金を投じたからといって、それが利益につながる関係がまだ見いだせていないように思います。米国のように市場が巨大で、企業買収が盛んな場所では違うのかもしれませんが・・・

メンターやアドバイザーも良いかもしれませんが、そもそも成功した起業家が表に出てこない日本では、メンターたり得る人がほとんどいません。自分で起業したことない評論家やコンサルタントの人は、たまに意見をもらうアドバイザーやコンサルタントには良くても、メンターとは言えないでしょう。また、一緒に仕事をして責任を取ってくれる人こそが、本当の指導者です。Googleにおけるエリック・シュミットのような人がいれば起業家は大きく成長できるでしょうね。

とにかく主役たり得るのは起業家だけではないでしょうか。

起業家が魅力的な商品を作れば、消費者や企業などの顧客も食いついてきますし、新しい市場も立ち上がります。起業家が魅力的な会社を作れば投資家も食いついてきます。成功した起業家がどんどん生まれればメンターも投資家も買収も増えてくるでしょう。

まずは独立してフリーランスになるもよし、一人でしこしこ製品を作るもよし、人材サービス企業を作るもよし、一人一人がやれることをやるしかありません。

一つだけ大事なことは「くさらないこと」だと思います。これまで起業する人を数多く見て来ましたが、ほとんどの人は売上があがらなかったり、思うようにいかなかったりして「くさって」意欲を失ってしまいます。意欲を失った、死んだような会社を続けて、そんなところが従業員を雇っているのは最悪なことだと思います。

そんなに簡単に起業がうまく行くようなら世界は億万長者だらけですよね。

私も独立してからもう10年くらいにもなりますが、まだまだ商売では初心者中の初心者です。本当に思うように行かず失敗ばかりですが、とにかく失敗を糧にして、成功した人たちから学び、なんとかくさらないでやっていきたいものです。

追記: ちなみに起業を止めようと思ってこの記事を書いたわけではありません。私のようなダメな起業家がなんとか10年間も喰って来れたんですから、あなたもきっとやれますよ! 起業は楽しいですよ。