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2015年7月27日月曜日

意外と難しいSaaSの料金体系。どのようにすべきなのか?

新規ビジネスにとって料金設定(プライシング)というのは最も難しい悩みの一つだと感じます。料金設定を間違えてしまえば、どれだけ優れた商品であっても失敗してしまいます。

とくにSaaS(クラウド型ソフトウェアサービス)の料金設定は、まだ各社ともに試行錯誤ともいえる状況で、参考に出来る情報なども少ないように思います。

SaaSの料金体系には、ざっと思いつくだけで以下のような方式があります。
  • 初期費用
  • 月額費用
  • IDあたり費用
  • データ量あたり費用
  • 使用回数あたり費用
  • その他の従量費用
  • 料金プラン制

このなかで、罠と言えるのが「IDあたり費用」ではないかと思います。

ユーザIDの数が、ソフトウェアの利用価値と直結しているようなソフトウェアであれば、ユーザIDで課金することには合理性があります。しかし単純な顧客管理ソフトウェアなどは、アカウントを複数人で共有しても価値があまり変わらず、ユーザ数単位で課金することは顧客にとって納得性が低いものになります。

ソフトウェア業界の慣習としてユーザ数課金が行われてきましたが、多くのユーザが様々なデバイスからソフトウェアを利用する時代に、ユーザ数課金はそぐわない場合もあるかと思います。


さて、ここで可変的な料金設定にはどのような意味があるのかを基本から考えてみましょう。

IaaSと異なりSaaSでは、多くの場合は、ユーザの利用量によってコストが大きく変わるというわけではありません。

そのため顧客の利用パターンによって料金を変えるのは、より多くのお金を払っても良いと思う顧客から、より多くのお金を取るという意味になります。いわゆる価格差別やバージョニングと言われる概念です。(詳しくは「ネットワーク経済」の法則を参照)

通常は、顧客が得られる価値によって価格を変えるのが適切と思われます。

すなわち、もしユーザアカウントを増やすことによって価値が得られないのであれば、ユーザアカウントによって課金するべきではない、ということです。


データ量による課金や、従量制課金には、問題点として、どれくらいの料金がかかるのか前もってわかりにくいとか、複雑だということがあるかと思います。

データ量による課金とは、例えば、名刺管理ソフトなら、保有できる名刺データの最大枚数とか、そういったもので課金する方式です。これだと、活用している程度によって金額が変わるので、ある程度の納得感があります。

妥当性をもった予測可能な価格設定になっていれば、利用料金が変動すること自体は問題がないのではないかと感じます。(メイシーでの経験上)


料金プランの設定には注意が必要です。最近流行のSaaSですと、よく上中下みたいな3プランを用意しているものが多く見受けられます。

しかし、多様な顧客の要望にほんとうに3パターンだけで応えられるものでしょうか?

上中下で、上が月額5万円、中が月額1万円、下が月額2千円などとなると、あまりにギャップが開きすぎていて、そのあいだを望む顧客は失望することでしょう。

私は実際にOptimizelyというサービスを昔に使っていまいたが、料金プランに納得感がなくて利用継続をやめました。

複雑な料金体系であっても、細かい価格設定によって、納得感のある支払ができるようにしたほうが顧客のニーズに応えられると思います。

なぜなら、ビジネス利用されるお客様で「多少お金を余分に払ってもいいから、簡単な料金プランで分かりやすいようにしてくれ!」なんて考えるお客様は滅多にいないからです。(というか、もしそういうお客様がいたら特別プランを作成してあげればよろしい)


初期費用ですが、これは法人向け製品であれば、なるべく設定するべきだと思います。

その理由ですが、営業宣伝費用の早期回収につながることでビジネスの成長を圧倒的に速くできることがまずひとつあります。これは極めて重要です。

もうひとつは顧客にとって新規ソフトウェア製品の導入は、そもそも支払額以上に手間がかかりコストがかかるものなので、初期費用を払うことにはさほどの追加の抵抗感がないということです。

日本のお客様は、月額費用のように継続して発生する費用には抵抗感があることが多いものです。


最後に、価格設定一般の話になりますが、商品の価格は高ければ高いほど、ビジネスは楽になる、というのが私の考えです。

コカコーラやマクドナルドのように100円の物を売って儲けるのは、きわめて難しいことであり、多くの起業家にとってそのようなビジネスを作り上げるのは困難でしょう。なぜなら広告宣伝費や販売チャネル構築などの初期投資が多くかかること、大量生産と大量販売を行うには組織の能力が大きく問われるからです。

それに比べて、ソフトウェア受託開発業、人材派遣業、不動産業、コンサルティング業など、顧客単価が数百万円を超えるような商売では、超零細企業であっても生きていけますし、それどころか、ボロ儲けしてる場合すらあります。

(ただし、もちろん簡単に構築できるビジネスほど、労働集約性が高いので、商売のウマみは少なくなります。)

弊社の経験からも、通常の中小企業であれば、顧客単価は10万円を最低ラインと考えるのが良いかと思います。なぜなら顧客獲得単価は最低でも数万円はかかるからです。できれば、そのうち5万円くらいは初期費用として回収してしまえると、資金回転率が改善するでしょう。

できれば、一社から年間100万円以上の粗利を獲得できるようになれば、大幅にビジネスは楽になります。大企業のように安く沢山売ろうなどとは考えないことです。

さらに厳しいことを言うと、ソフトウェアの限界費用は0円なので、新規参入が増えれば増えるほど値段は安くなっていきます。儲けられるうちに儲けるというのは良い考えですし、価格を高くして面倒なことを引き受ければ引き受けるほど、新規参入者にやられにくくなります。

「顧客単価」を考えるだけで、ビジネスが無残にも離陸すらせずに墜落してしまうことが少しは避けられるのではないかと思います。参考になれば幸いです。


参考: ソフトウェアの価格について以前書いた記事もあわせてご参照ください。

2013年4月5日金曜日

顧客獲得単価と顧客生涯価値

新規事業で、値段設定やマーケティング計画をしていくときに一番大事なことは、顧客獲得単価(Customer Acquisition Cost)と顧客生涯価値(Lifetime Value)を試算することです。

要するに、顧客一人を獲得するのにいくらコストがかかって、その顧客からいくら売上(粗利)があがるのか、ということです。

ビジネスモデルを考える上で、ここを一つの中心として考えると、儲かるかどうかのキモをつかみやすいのではないかと思います。

ビジネスプランでは、将来の売上高などを予測することは不要です。そんなものは分かりっこないのですから。しかし、顧客獲得単価と顧客生涯価値の差は、そこそこ早期に理解することができます。プロトタイプなどを販売すれば実際の値に近い数値が見えてくるかもしれません。

当たり前ですが、顧客あたりの粗利が顧客獲得単価よりも低ければ、まったくビジネスとして成り立ちません。逆に、広告を打てば、顧客がどんどんやってくるのであれば、かなり良いビジネスになる可能性があります。


法人向けビジネスでは、顧客獲得単価が高くなるので、価格も高く設定して、顧客あたりの売上が高くなるようにしなければなりません。法人には「安いからとりあえず買う」という発想はあまりないのです。

法人向けビジネス、とくに日本市場では、フリーミアムのモデルは基本的には役立たないのではないかと思います。法人では、意思決定や、価格そのもの以外の導入コストが高いので、無料にしたからといって、さくっと使えるというわけではないからです。

それよりは無料お試し期間を設ければ良いのではないかと思います。(必要なら柔軟に伸ばしてあげれば良い)

メイシーは月額1980円ですが、顧客獲得にかかるマーケティングコストを考えると、ぎりぎりのラインだったなー、と思います。これより低い値段を設定していたら、広告販売することができずにぽしゃっていたでしょうね。


消費者向けのビジネスですと、単価がぐぐっと下がってくるので、このラインをうまく設定するのは至難の業になってくるかと思います。ゲームのように、分析を繰り返しながら、いろいろな製品や施策を多数繰り広げて、その中から良い物を探していくという長期戦・大規模戦になってくるのではないでしょうか。


広告を掲載して儲けるビジネスになると、さらに大変です。通常では、一回のページビューあたりの広告売上単価は最大でも0.2円以下になると思います。月に1000万ページビューあっても、せいぜい200万円の売上です。これはなかなか大変です。Adsenseを貼っただけだと、下手すると0.01円/PVとかにもなりかねませんし・・・

アフィリエイトなどの成果報酬広告をうまく載せて、うまくSEOするなど、いろいろやり方はあるでしょうが、良質なウェブサイトを作って、それで広告で儲けるというのは難しそうです...。

コスト面から見て広告で顧客を獲得するのが難しいので、そうすると必然的に煽るような記事を書いて、注目を集めて、ユーザーを増やすみたいな手法に頼りがちになるわけです。


この数値を考えてビジネスモデルを考えないと「どんなに大成功しても全く儲からない事業」になってしまうので、くれぐれもご注意を。

有名なマーケターの神田昌典さんなどは、顧客あたりの売上が10万円いかない製品は厳しい、と断言しています。それは極論かもしれませんが、法人向けならそれくらいのラインを目指したほうがいいですね。

2013年3月24日日曜日

マーケティングは創業者の仕事である

経営の世界には「商品三分に売り七分」という言葉があります。製品開発よりも販売手法のほうがずっと重要だということです。

物があれば売れるという時代ではありませんので、ほぼすべてのビジネスにはマーケティングが非常に重要になります。(本稿ではマーケティングは顧客に商品を伝えるための方法すべてをさします。営業、広告、PR、SEO、ウェブサイト構築など)

企業はとにかくマーケティングを最優先に考えるべきです。

じゃあマーケティングを外注したり、担当者を雇えばいいのかというと、そうではなく、基本的には創業者がマーケティングに注力することが必要です。

当たり前ですが、どんなベンチャー企業でも、創業者よりも高いモチベーションと能力を持った人は雇うことができません。

そして中小企業の新規事業のマーケティングができる人など日本には数えるほどもいないでしょう。マーケティングの個別のスキル(PR、調査分析、従来媒体広告、ディスプレイ広告、キーワード広告)などに優れた人はいても、すべての領域にわたってすごいスピードで施策の実験を実施していける人というのは、あまりいないのではないでしょうか。

仮にそのような人が見つかったとしても、全社の経営戦略とマーケティングの整合性を確保するためには、創業者のマーケティングへの理解が不可欠となります。

商品のポジショニング、プライシング、セグメンテーション、ターゲティングや顧客開発プロセスなどは、単にマーケティング担当者のレベルでできることではなく、経営者レベルでの意思決定が欠かせません。

経営者・創業者がマーケティングを理解せずして会社を経営するというのは極めて無謀な行為であると考えます。

逆に、いかにマーケティングが大切であっても、中小企業にとって専任のマーケティング担当者を置くのはコストの面から正当化することは難しいかと思われます。少ない商品数と少ないマーケティング予算では、担当者はほとんどする仕事がなく、お手上げ状態になってしまうのではないでしょうか。顧客開発に成功し、資金調達して、大きなマーケティング予算を執行する段階になってから雇えばすむことです。

マーケティングとは企業の基本職務の一つであり、経営者は必ず基礎知識を理解しておく必要があります。ですから、創業時には、マーケティングは創業者が担当しましょう。

零細企業のやれるマーケティングなど、そんなに専門知識は必要ありませんから、ただただ超速でいろいろな打ち手を試すことが大事です。

もし自社製品を売っていくつもりなら、マーケティングに力を入れて、P&Gのようなマーケティングエクセレンスを目指しましょう。受託開発なら、まあ、マーケティングのことは忘れてもいいんじゃないですかね・・・

マーケティングなんて何一つ分からないという人はまず下の本をどうぞ。読みやすい本で、マーケティングの一分野である「ポジショニング」について概略が学べます。これを読むとマーケティングについて少し興味がわいてくるのではないかと思います。

(間違ってもコトラーを買わないように! あれは死ぬほど退屈で、まともに読めた代物ではありません)

2013年3月19日火曜日

【講演】自社サービスで成功する方法

先日の未踏カンファレンスで講演した内容のビデオとスライドをこちらにアップロードしておきます。参考になれば幸いです。

凡人が自社サービスで成功するための一つの方法について述べました。

ポイントとしては、
・顧客のニーズを探索しながら、現実を見て、事業を見直しながら発展させていく
・経営の経験値をあげながら、徐々に難しいことに挑戦していく
ということです。

twitterなどの反応を見ていると「新しい市場に挑戦してはいけないのか?」「斬新な製品や技術をベースに起業してはいけないのか?」という疑問の声がありました。答えとしては、2点あります。まず新しい市場への挑戦は難しいので、初心者(凡人)向きではないのです。また、新市場では、顧客のニーズが全く分からないので、その製品や技術をどのように顧客が必要とするか、顧客の声を真摯に聴きながら事業を進めなければいけないということです。

あと講演で触れるのを忘れたことで一つ大事なことがありました。それは「商品3分に売り7分」ということです。顧客と接して、顧客のために動く活動こそが企業にとって一番大事なことですから、創業者・社長が自ら顧客と接して営業活動をしていくことが必須です。そこを他人や他社に任せても絶対にうまくいきませんので!


2013年2月27日水曜日

未踏カンファレンス2013で「自社サービスで成功する方法」を講演します

3月10日に品川で行われる未踏カンファレンス2013で「自社サービスで成功する方法」という演題で講演を行います。

Googleの及川さんや、東工大の首藤さんなど、錚々たる顔ぶれが講演する予定なので、ぜひ東京の方はおいでになると面白いかと思います。

私は、いまのところ以下のような概要での発表を考えています。

未踏カンファレンス講演「自社サービスで成功する方法」
凡人が自社サービスで成功するために
天才は勝手にやってくれ
自社サービスはなぜ難しいか
人材サービス業(受託開発業)が特異的に参入障壁が低い
スケールしないので、技術や営業の個人プレーで成功可能
スケールしないので、大企業が完全圧勝パターンを作れない
スケールするビジネスは顧客を作ることはすごく難しい
大企業や先行企業の圧勝パターンになる。弱者は全滅も
このあたりの事情はランチェスター戦略に詳しい。
基本的には零細企業には受託開発業などが合っている。
だが、一度きりの人生、下請けで終わっていいのか?
自己紹介
xcream - 年商○○円以上
メイシー - 通期黒字かつ成長軌道
誰とやるかは重要
営業販売を第一に考えて顧客視点で動く
顧客発見プロセス・リーンスタートアップ
プランの段階で他人に聞いて、実際に買うかどうか調べる
市場がない / 市場が飽和している = 独自性 / 独自性がない
市場がない、お金にならない、のは最悪
市場が飽和気味でも本当に進出の余地がないとは限らない
独自性は上級者向き
既存商品が満たしていない細かいニーズ。既存製品の裏をかく
最高に成功しても、全く儲からないようなビジネスって?
広告や営業はとにかく多種多様に試すしかない
ビジネスは、商品3分、売り7分。売りに注力すべし
売りの手法とは何か
法人営業、代理店営業、Adwords、テレアポ、チラシ
売りの手法や対象顧客によって値段設定なども変わる
弊社がやってきた失敗の歴史
成功例 (オフレコ)
失敗や持久戦を覚悟する
離陸まで数年かかることも良くある
失敗がふつう
pivot!
振り返り
もっと軽量にやるべきだった
開発やデザイン費用は極小にしてマーケティングに回す
もっと顧客視点でやるべきだった
「アントレプレナーの教科書」をもっと早く知っていれば!
これから先
自分が経営者や技術者として天才にほど遠いのを思い知った
弱者は弱者なりに、機敏かつ軽妙に動いていくことで生き残る

2012年7月20日金曜日

A/BテストツールのOptimizelyを使ってみた


Optimizelyは、ウェブサイトのA/Bテストを行うための洗練されたソフトウェアです。

A/Bテストとは、ダイレクトマーケティングでは昔から使われてきた手法で、顧客に対して2種類のダイレクトメールなどを行って、反応が良いものを選び出す、実験の手法です。

これによって、マーケティングのような感覚的な分野においても、データをもとに改善を積み重ねる経営を行うことができるようになります。

最近では、ウェブサイトにおいても顧客にN通りのパターンを見せて、どれが購買に結びつくかなどのA/Bテストを行うことが増えてきました。

A/Bテストツールには色々なものがあり、Google Analyticsなど無料のものもあります。

その中で、Optimizelyは有料ですが、使いやすさに特化されており、話題を集めています。

Optimizelyを使ってA/Bテストを行う場合、HTMLエディタを使ってWYSIWYGで変更内容を編集する方法と、Javascriptを自力で書く方法があります。

静的コンテンツであれば、HTMLエディタで簡単に編集することができますので、プログラマ不要でA/Bテストを行うことができます。

動的コンテンツは、自力で変更案を適用するJavascriptを書かなければなりません。それでも結果測定、集計や統計検証などは自動で行ってくれ、美しいグラフも書いてくれるので、それなりに役に立ちます。

実際に弊社でもちょっとした文字の変更などを試してみたのですが、クリック率の0.7%改善という結果が得られました。しかし、もっと大幅な改善を期待する場合には、変更案を考えるのがなかなか大変だなー、と思いました。

円高の昨今ですから、月79ドルの利用料は高いものではありませんが、月間20,000ページビューを超えると1,000ページビューあたり7ドルという高額の追加料金を取られるので、それは結構問題です。

Google Analyticsなら無料で使えますから、そちらの機能で満足できる人は、あえてOptimizelyを使うまでもないでしょうね。でもたぶんGoogle Analyticsのウェブテスト機能では物足りないし、サポートも足りないので使い物にならないと思いますけど。

今の時代、A/Bテストを使ってウェブサイト反応率を改善していくのは常識になりつつあります。われわれウェブ業界人はA/Bテストツールの一つや二つは使えるようになっておく必要があるのではないでしょうか。

2011年11月19日土曜日

経営の教科書の決定版: 60分間・企業ダントツ化プロジェクト

もし、あなたが経営書を一冊だけ読むのであれば、この60分間・企業ダントツ化プロジェクトをお勧めします。経営の本質が過不足なくきっちりまとまった教科書と言って良いでしょう。

著者の神田昌典さんは、これまでに数多くのベストセラーを著してきた有名なダイレクトマーケターです。その経営ノウハウを惜しみなくつぎ込んだのが、この本だと言えます。

世の中に、読んで面白い経営書はいくらでもあります。何らかの意味で参考になる経営書もそこそこあるでしょう。しかし一冊だけ本を読んで全容を把握できるような本は、これまでに無かったのだ、と思わされました。

本書では、戦略とは何か、商品戦略、顧客戦略、競合戦略、価格戦略、営業戦略、コミュニケーション戦略などの本質を一気に学ぶことができます。

この本には、偏った考え方や、一部の企業や事業にしか適用できない点がなく、全ての事業にたいして適用できる極めて正統的な本質が書かれているので、誰にでも安心して薦めることが出来ます。

またベストセラー著者の神田昌典さんが書いているので、文章も大変読みやすく、誰でも苦労なく読み通すことができるでしょう。

初心者から上級者まで、全ての経営者にお勧めです。とくに初心者やこれから起業する人は必ず読むべきでしょう。


以下は復習用の要約です。読み終わって復習したい方はどうぞ。

第一章: 戦略は足し算ではなく、掛け算からうまれる。

- 戦略が間違っていれば忙しくて儲からない会社になる。
- 戦略のある会社は楽して儲かる。
- 戦略とは選択すること。そして優先順位をつけること。
- 60分で戦略をつくれない経営者は10年経っても戦略をつくれない
- 戦略はかけ算であるので、一つでも0点の要素があれば全体が0点になる

第二章: 商品(1) ライフサイクル分析

- いまの日本で松下幸之助がエアコンを売って億万長者になれるか?
- 商品にはライフサイクルがある。導入期、成長期、成熟期の3つ。
- 成長期にさしかかった商品が一番売れるし、儲かる。
- 導入期は冬の時期であり、売れないし、失敗の確率も高い。
- 最近は商品ライフサイクルが短いので、導入期に参入する必要もあるが難しい。
- 商品ライフサイクルの計算をして、事業の寿命を予測する。

第三章: 商品(2) さらに3つの分析法

- 黙っていても売れる「上りのエスカレーター」に乗れる商品を選ぶ。
- その商品を待っている顧客がどのぐらいいるか?
- 商品コンセプトが顧客に伝わるか?
- その商品を入り口に、その後、広がりを持つか?
- 分析1: ニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)はどれくらいか?
- 分析2: 直感的に理解できるか? 使いこなせる自信があるか?
- 分析3: 水平展開しやすい? 垂直展開しやすい?
- 「使ってみれば分かる」商品は、下りのエスカレーター
- 効果的なネーミングをする

第四章: 顧客 - 理想の顧客に出会う方

- 顧客を選ぶ会社は、顧客に選ばれる。
- 顧客を選ばない会社は、顧客にも選ばれない。
- 説得しないで買ってくれる理想の顧客は誰か?
- 理想の顧客を獲得するコストを下げるにはどうしたらいいか?
- 顧客を連れてくる、影響力のある顧客は誰か?
- 分析4: どういう顧客がどれだけのニーズとウォンツを持つか?
- 分析5: 見込み客特定の難易度は? 価格に対する営業コストは?

第五章: 競合 - 愚者は俺ならできると考える。賢者は愚者でもできることをやる。

- 最強の競合戦略とは、戦わないことである。
- のんびりしながら儲かってる市場を探す。電話帳の厚いところを見る。
- 分析6: 市場の成熟度、商品スイッチの難易度
- 分析7: 顧客から見て競合より魅力的な商品か? 優位性を簡潔に伝えられるか?
- 優位性を簡潔に表わす表現(USP)を作る。
- 分析8: 顧客から見て、価格の明朗性は? 価格の妥当性は?
- 分析9: 参入障壁は高いか? 撤退コストは高いか?
- 事業を始めるときには、撤退するときのことを考える。

第六章: 収益シミュレーション

- 顧客獲得コストとは、日本の1億3000万人の中から見込み客を探して買わせるコストである。
- 顧客獲得コストはいくらなのか、顧客の生涯価値はいくらなのか。
- 顧客から短期間に得られるキャッシュと、顧客獲得コストを比べてみる。
- 頻繁なリピート購買が期待できる商品なら、粗利率は7~8割以上なければならない。
- 頻繁なリピート購買が期待されない商品なら、初回購入の粗利額は10万円以上なければならない。
- 分析10: 購買リピート性と粗利率・粗利額は?
- セールスに使いやすい媒体と特徴 (本書 pp.231-235)
- ライフサイクル季節別にメッセージ伝達方法を変える

第七章: タイミング - 害虫になるか、それとも天使になるか?

- 営業マンは声をかけるタイミングによって害虫扱いされたりも天使扱いされたりする。
- 顧客獲得コストが下がるタイミングというのがある。そのときに一挙獲得する。
- 分析11: 購買タイミングは把握しやすいか? 購買頻度は高いか?
- 理想の世界と現状を埋めることが戦略発想の根源。理想の世界を想像してみる
- 分析12: 顧客はその商品のことを日常的に考えているか? 差し迫った必要性はあるか?

第八章: メッセージ - 購買欲求をシステマチックに高める方法

- 顧客の購買欲求と必要性をシステマチックに引き上げる。
- 顧客が怒り・悩み・不安を感じる場面を、五感をを使って描写する。
- 分析13: 問題を視覚化しているか? 問題を焦点化しているか?
- 分析14: 行動に対する障害・不安は大きいか? 自己正当化は容易か?
- 行動するメリットだけではなく、行動しないデメリットを感じさせる
- 現状の危険性を認識させること。
- この方法を適用すると、インチキ商品ですら売れるので危険もある。

最終章: 統合 - ヒラメキは、集中した思考の後に降ってくる

2011年5月17日火曜日

ダイレクト・マーケティングの実際

世の中にマーケティングの本は数多くありますが、私がこれまで読んだ数十冊のなかで感動した本は一冊だけです。それが本書「ダイレクト・マーケティングの実際 (日経文庫)」です。

本書は1987年に書かれた本で、内容には古びた点が数多くありますが、それでもベストの本であると自信をもって言うことができます。

なにが良いかというと、本書ではダイレクト・レスポンス・マーケティングという一分野に絞って、実際に実践できるだけの具体的な知識を数多く書いていることです。他書は概要レベルに止まるのに対して、本書はコンパクトなのにもかかわらず実用レベルと言えます。

著者のルディー和子さんは、エスティ・ローダーのマーケティングマネジャー、タイム社のダイレクトマーケティング本部長などを務めたバリバリの実践派の方です。それが本場アメリカのダイレクトマーケティングの実践知識を本書に詰め込んだのだから、非常に有意義です。日本では未だにこのレベルの実践ができている会社は少ないのではないでしょうか。

ダイレクト・マーケティングが通常のマーケティングと異なるのは、直接に反応を得ることができるということです。広告や販促の効果を計測し、データに基づいた販売ができるということです。この概念は、インターネット時代になり、重要性がさらに高まっています。

実験と統計学に基づいた科学的な経営は、これからさらに重要になってくるでしょう。本書には統計表なども載っていますので、統計学の知識がなくても経営に統計を活かすことができます。

皆さんがダイレクト・マーケティングを行っていないとしても、全ての経営者とマーケターにとって必読の一冊であると言えます。本書から科学的経営、科学的マーケティングのエッセンスを学ぶことができるでしょう。

経営書の多くは概念的な本であり、実際の経営にすぐ役立てられない本ばかりです。逆に、通俗経営本のたぐいは、断片的な知識だけであり、大局観をもった科学的な経営の役には立ちません。

本書のような素晴らしい経営書がもっと出てくることを望むばかりです。

とっくの昔に絶版ですが、amazonマーケットプレースで安く購入可能ですので、至急いますぐ購入を!

2011年4月26日火曜日

フォーム作成ツール Wufoo


アメリカのフォーム作成ツール Wufoo が、3500万ドルで買収されたというニュースがTechCrunchに掲載されました。見てみたところ面白そうなツールなので、こちらのブログでも紹介することにした次第です。

この手のフォーム作成ツールは日本にも数多くあるようですが、このWufooは機能と利便性の点で非常に優れています。主な機能だけでも以下のようになっています。
  1. 使いやすい画面操作でフォームを作成することができる。
  2. フォームからのファイルアップロード可能 (有料)
  3. フォームに条件ルールを設定して、それによって動作を変えることができる。すなわち、入力した内容によって、フォームの一部分を動的に開閉したり、完了時の動作を変更したりすることができる。これは画期的。
  4. 充実した支払い機能付き。PaypalやGoogle Paymentなど複数の支払い方法に対応しており、さまざまな支払いオプションを実現することができる。
  5. アクセスレポートやコンバージョンを見ることができる。これはマーケティング用途には必須。素晴らしい機能。
  6. グラフなどを駆使したレポート画面を作ることができる。フォームに入力されたデータから自動的にグラフや表などを駆使した報告書画面を作ることができる。すごい!

いくつかの項目は完全なアメリカ仕様になっていますが、自分で作る項目は日本語もちゃんと通りますし、日付の項目などは「年月日」の部分を日本語で表示してくれたりもします。


試しに一つフォームを作ってみたので、お試しください。またサイトで登録すれば無料版で思う存分に試用もできます。

殆どのウェブサイトは静的なページと少しのフォームさえあれば十分であり、こうした多機能なフォーム作成ツールを使うことでお客様とのやりとりを全て済ませることができます。それを考えると、値段もかなりお手頃だと思います。

本ブログでは、これからもビジネスに役立ちそうなSaaSツール等をご紹介していきたいと思います。

2011年2月28日月曜日

Yahoo! Japanの検索エンジンがなぜGoogleになったか

先日、Yahoo! Japanの検索エンジンがGoogleに切り替えられました。このことは「検索エンジンがGoogleの独占になる」などといった話題にはなりましたので、ご記憶の方も多いかと思います。[1]

そもそも、なぜYahoo!は検索エンジンを切り替えようと考えたのでしょうか?

元々Yahoo!もGoogleと似たような検索エンジンを自社で作成して運用していましたし、わざわざ自社製品を捨ててライバルの検索エンジンを採用する必要性があったのでしょうか。そこまでせねばいけない動機は何だったのでしょうか。

弊社の運用しているあるショッピングサイトのデータを見ていたところ、面白い事実が判明しました。

Yahoo!の検索エンジン切替の前後で、きわめて興味深いデータがでていたのです。

検索エンジンがGoogleに切り替えられたことで、弊社サイトへのYahoo!経由でのページビューは半分以上減少しました。しかし、それにもかかわらずYahoo!経由での購入者数と売上は変わっていないのです。

すなわちYahoo!経由でのコンバージョンが大幅に改善されたことになります。

これは、Googleの検索エンジンが、ユーザに、よりよい検索結果を提示しているということを意味します。本当に興味のある人にだけ弊社のサイトを案内していることになります。ムダな、興味のないサイトへのアクセスが半分に減ったのですから、ユーザに取ってみれば大きな改善を意味します。

Yahoo! Japanとしては検索エンジンを他社製に乗り換えてでも、結果を改善しなければ、ユーザに離れられてしまうと考えたのではないでしょうか。

なかなか分かりにくい検索エンジンの質の差ですが、サイトの運用者から見ると、このように明白に大差がついていることがわかるものですね。面白い結果だと思いましたので、皆さんにお伝えする次第です。それでは、また。

参考文献:
  1. Yahoo! JAPAN、Googleの検索エンジンと検索連動型広告の採用を発表 - Internet Watch 2010/7/27